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心想 4

ユキチのコールに松本実はすぐに反応した。

「おー、ユキチ何か用か」

「突然悪い、今どこにいる?」

「ああ、音楽室でピアノを弾いているところだ」

「中村謙二も一緒なのか」

「そうだよ、何かあったのか」

「そいつは都合がいい、話があるんだ」

「バンドのことか?」

「ああ、今から大介を連れてそっちに向かう」

「わかった、ユカも一緒か」

「いけね忘れてた、今から連絡する」

「じゃあ、待ってるよ」とユキチは実の声を確かめると、今度はユカの番号を呼び出して画面をタップした。

しかし、ユカはなかなか呼び出しに応えず留守番案内に接続された。するとユキチは、

「ちっきしょう、ユカは何をしてるんだ」と表情を曇らす、と同時にユカからの返信コールがきた。

「どうしたんだよ、ユキチ」

「今どこだよ」

「なんだよ、電車に乗ってたんだ。仕方がないから降りたところさ」

「ユカ、話があるから学校に戻ってくれねえか。音楽室にいるから」

「なんだよ、これから小学校の同級生と会わなきゃいけないんだ」

「そこをなんとかしてくれねえか」

「重要なことなのか」

「ああ、バンドのことだ。全員集まらないと意味がない」

「わかったよ、今から電車に乗るから20分ちょっとかかるわよ。友達は親に頼んで私の部屋で待ってもらうから」

「この埋め合わせはするからさ」

「いいって、じゃあ、20分後」とユカは電話を切ると、母親に連絡を取ってから反対側の電車に飛び乗った。


期末テストが終わったことで校内は生徒の数もまばらでひっそりとしていた。ユカが音楽室の扉を開けたとき、他のメンバーたちは揃って談笑していた。


「みんなが集まったところで、この夏休みの間にやってみたいことがあるんだ」とユキチが切り出した。

それを受けて実が、

「ヘェ〜何をやるんだ」とチャチャを入れる。

「夏休みになるしそろそろオリジナル曲を作ってみたいんだ」

「それはまだ時期尚早だろう。誰が曲を作るんだ」と実。

「それはみんなさ」とユキチ。

「無理に決まっているだろ」とさらに実のゲキが飛ぶ。

「じつは4曲ぐらいのCDアルバムを作って路上ライブをして売り歩きたいんだ」

「なんだよ路上ライブって。道端でハードロックを演奏するのか?」

「問題はそこさ、みんなの意見を聞きたいんだ」

「おいおい、電源はどうすんだよ」

「そこで相談なんだけど、CD売上の収益でこれからのバンド活動で必要な機材を揃えたいと思っているんだ。例えば電池駆動のアンプとかさ」

「面白いじゃねえか、パソコンでCDを焼き付けるのか。面白いなユキチ」

「そうだ、あたいの兄貴のものを拝借する」

するとユカが、

「路上ライブでCDをどれだけ売りたいの」

「目標としては一枚500円で1000枚ぐらいさ」

「ふーん、楽器の編成はどうすんのさ」

「まあ、その辺もみんなの意見を聞かせてくれ」

そしてここまで沈黙を続けていた謙二が、

「路上ライブでアコギを使うならパーカッションとしてカホンとかボンゴなんてオススメだよ」

「そうよね、私ベースが弾けなかったらボンゴを叩いて参加したい」とユカ。

「ボンゴなら家にあるんだ。それにカホンだって5000円も出せば手に入るし」と謙二が続く。だが、実はみんなを戒めるように、

「口でいうほど売れるオリジナル曲を作るのはやさしくないぜ」

「確かにロックのアコースティックバージョンは難しいかもしれない。だけどそんなことを言ったっら何も始まらないぜ」と大介。

「わかったよ、とにかく路上でどんな音楽がやりたいのかを鮮明にしなければならない。最初は苦労するけど1人で解決しようなんて考えないことだ。みんなで連絡を取り合っていこうぜ。1週間で2曲作ることがノルマだ。出来なければサビとか2小節、4小節のメロディーのモチーフだけでも構わない。アレンジと歌詞は後で考えることにして、とにかく作ってみることだ」と実がみんなの顔を見た。

「ありがとう。みんなの力が結集すれば必ず道は開けるさ」とユキチが瞳を輝かせた。


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