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「ユキチ、お前は何でボーカリストを目指したんだ」

「大介、時と場所を考えろよな。何でこんな忙しい時にそんな話をしなきゃいけないんだ」

「だってよ、全然構ってくれねえし。俺少し余裕あるし」


「大介、あたいが今どんな顔してる」

「うん、いつも通りかわいい顔だ」

「バカやろ、目から火花を散らばせていないか」


「いいや、いつもの澄んだ目だぜ」

「そう映るんじゃあ、お前、そうとう唐変木だな」

「いや、周りからはよく気の利く方だ、といわれる」


「そいつらの目がよっぽど節穴だったってことさ」

「わかった、飯を食う時に聞くことにする」

「ああああ、だからいわんこっちゃねえ。全然まとまらねえだろ。いいスピードで進んでたのに」


「止めちゃったみたいだな、怒るのはよくわかる。俺も5分前だったらきっと同じことを怒鳴っていたろうな」

「だったらなぜ止める」

「聞きたかったからです」


「この大事なときにあたいが歌手を目指した動機が知りたいだと」

「ああ、素直に。実の作品につなげたいんだ」

「そんなのどこの高校生もみんな一緒だろ」


「そんなはずはない、俺にはじめて話しかけてきたときの情熱は半端じゃなかった」

「本当に憎たらしいやつだな。だけど、ここで休むわけにはいかないんだ」

「ユキチ、ユカのテーマは何に変えた。2人でいるんだから生かさないと」


「『ドント・ラブ・ミー』の頭のフレーズがしっくりこないんだ」

「〜アイム・ア・デインジャー・ウーマン〜だっけ」

「あたいの知り合いが唐突すぎるって抜かしやがった」


「それに腹を立てて作り直しているのか、ユキチらしいな」

「だってよ、毎回危険な女、危険な女じゃ、女が廃るって」

「歌と本人はべつものなのにか」


「それがわからねえんだ、だからトーシローは困るぜ。それに危険危険ってバカみたいだってよ。こんなこといわれて黙ってられるか」

「確かにユキチのプライドが許さないわけだ」

「当たり前だろ、いいものを作ってやるさ。あいつの驚く顔だけを想像して作っているんだ」


「その一念でここまで来てるんだ。女のプライドも物凄いんだな」

「あったぼうよ、作った後なら気にもしないが、作る前に聞いちまったらどうにも我慢がならねえ」

「ユキチは羨ましい女だな」


「何だよ、歯の浮くようなセリフをいいやがって」

「物事に一途になれるやつなんて一握りの人間さ」

「あたいは我慢できねえものわ、我慢できねえんだ。これを曲げちまったらあたいじゃない」


「力を貸すぜ」

「悪い、あたいの好きなようにさせてくれ」

「わかった、じゃあここで昼飯にしよう。ビッグ・マックのセットでいいか?飲み物は何にする」


「コーラ」

「あいよ!」

「本当にあいつ時間に敏感だな、もう1時を過ぎてるのか」


大介の心遣いにユキチは自分を取り戻しつつあった。

「さあ、今日は今日、明日は明日だ」

ユキチにとって一番驚かせたかった相手は誰よりも大介だったのだ。







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