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重圧 1

予定がなくなったので、今日原稿をアップしました。

あれからまっすぐ自宅に帰った大介は、母の紀子が用意した夕食の特製カレーを2皿平らげて、姉の久美子にやっと彼氏ができたというので、そのノロケ話にさんざんつきあったあと、普段通り自室にこもった。


そして1人になると、大介は実が命名した曲のタイトルのことを考えていた。『デッド・エンド』か、確かに悪くはないがあまりしっくりきていなかった。行き止まりではなく夢を大切にしよう、そんな意味合いを込めてうたいたかったからだ。


これまでの歌詞をどのように修正すれば、行き止まりを含んで夢に到達できるか。その算段がなかなか見つからなかった。3日後には否が応でも詞を完成させなければならない。路上ライブも間近に迫り、もうあとには引けない状況なのだ。


だが、もう1つ大介にはクリアーにしなければならない問題がある。洋子とユキチのことだ。この後に及んでも大介はどちらを選ぶべきか、決めかねていた。というのも、彼は女の子の気持ちを何よりも尊重していたから、自分の意思なんてどうでもよかったのだ。俺みたいな男と真剣に向き合ってくれる2人には、いつも感謝していたし、何よりもかけがえのないものだった。


だから大介は2人を公平にしたかったのだ。そのためには洋子をデッド・ピープルのスタッフとして迎え、マネージメントや広報をしてもらうか。彼女が望むならコーラスや何か楽器を練習してバンドのメンバーに加わってもらい、みんなと交流を深めた上で、自然とつきあえる方を選ぼうと考えたのである。


また、何かの拍子でユキチや洋子が別の男とつきあうことになっても、大介は後悔しないと決めたのだ。悪いのは全て自分なのだから、と。そうとなったら大介は早かった。iPhoneを取り出してさっそく洋子に電話をかける。

「もしもし、洋子か?久しぶり」

「何よ、夏休みに入って電話くれるの初めてじゃない。ずーっと待ってたんだから」


「ごめんごめん、曲を作ることに集中してたからさ」

「いい訳はなんとでもいえるわ」

「本当だってば、洋子が俺のことを疑るなんて、今までなかったじゃないか」

「だって、ユキチさんとイチャイチャしてたんでしょう。そのくらいバカでもわかるわ」


「やっぱりそんなことだと思ったよ。提案があるんだけど聞いてくれるかい」

「何よ、提案って」

「前にバンド活動の手伝いをしないかって話したことがあったじゃないか。今でもその気持ちに変わりはないかい」


「もちろんよ、だって大介と会えるもん」

「じゃあ、何か楽器やってみないかい」

「もう、大介は私のこと全然理解してないじゃない。楽器なんて私にそんな才能あるわけないし」

「はは、そんなに難しく考える必要はないんだ。マラカスを振ってハモるだけでも立派なミュージシャンなんだから」


「だけど私音楽なんて全くわからないもん、自信ないわよ」

「確かに楽器を1からマスターするにはある程度年月が必要さ。でも、いつも仲間と一緒ならハードルなんて以外と低いものさ。実にキーボードを習ったらいいじゃないか。あいつは天才だから洋子も早く身につくと思うぜ。ダブルキーボードなんて珍しいから目玉になるかもよ」


「もう、本当に大介は単純なんだから。私焼き餅焼きそうで、ユキチさんとうまくやっていく自信がないわ」

「洋子、ユキチのことを知ればきっと考え方が変わるはずさ。楽器がダメならマネージメントとか、みんなの世話をしてくれるだけでいいんだ」


「説子と一緒でも構わない?」

「何をいってるんだ、もちろんいいよ」

「わかった。彼女と相談してみるわ。いつまでに返事をすればいいの」

「そうだな、今度の日曜にレコーディングがあるから土曜までに返事をくれないか」

「うん、今から説子に電話してみる」

「俺たちがどんな活動しているか、口で説明するより、見てもらった方が1番いいから」


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