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波動 3

「よし、次はユカの番だ。ユキチ、歌詞はどうなってる?」と実が進行状況を確かめた。すると、

「タイトルは決まったよ。『ドント・ラブ・ミー』で、揺れる女心を狙っている。はじめはユカの意見を参考にして大人社会に対する反抗にしようかと考えたんだが、大介と話し合って反抗ばかりがロックじゃないって結論に達したんだ」


それに対しユカは、

「確かにそうだね。反抗ばかりだとケツが青いって感じあるよね」

「それもすごい言葉。あたいたちがそういうこと言っちゃうんだ」とユキチ。実も、いろいろディスカッションすることが大切だ。ケツが青い大いに結構、ピンクだったら男が喜ぶぜ」


「そうか、遥か昔に桃尻娘って流行ったらしいぜ」と口にした大介。そこに謙二が、

「大介、本当にいろんなこと知ってるよな。同じ歳とは思えねえぜ。うちのお父っつあんと話が合うんじゃねえか。例えば山口百恵とか松田聖子とか」

「おいおい、確かにYouTubeでは見てるよ。『ひと夏の経験」とか『秋桜コスモスとか『青い珊瑚礁』とか『赤いスイートピー』。みんないい曲だぜ」


「ほらな、俺たちが目指しているのと次元が違うよな。ユキチじゃなくて俺のお袋と付き合ったほうがいいんじゃないか」

「謙二、それだけは勘弁してくれ」

ユカも、

「きっとユキチがイカれた原因はそこにあるんじゃないの」


外部の声にユキチがひと言。

「お前らバカじゃねえの。人間性だ」と突っぱねる。

あまりに脱線する会話に業を煮やした実が、

「お前らユカの曲を聴きたくねえのか」と怒鳴った。

するとみんな声を合わせ、

「聴きたいです」と一呼吸おいて答える。


そして実は、

「間奏のアレンジに結構時間をかけた。ユカの原曲は少しハードだったが、俺はメロディアスを狙ってみた。みんなの意見を是非聞かせてくれ」と説明してから曲をスタートさせた。


ユカの曲は、最初コーラスから入り、ドラムがリズムを刻み始めると徐々にハードな進行になる。そしてシンセのメロディーラインが始まると、一気にロックのムードが高まるアレンジになっていた。


曲が終わるとすぐにユカは、

「実、ありがとう。イカす曲になってる」

「礼には及ばねえよ、当然のことをしたまでだ。もともと原曲が良かったのさ」

そこで首を少しひねっていたユキチが、

「う〜ん、あたいの書いた詞とイメージが微妙に違うな。もっときわどい内容でもいいかもな。最初のコーラスでもう少しインパクトが必要かな」


実が、

「どんなフレーズだったんだ」のアンサーにユキチは、

「〜アイム・ア・デインジャー・ウーマン、ドント・キス・ミー、ドント・ラブ・ミー・ベイビィ〜だ」

その感想を実は、

「一応ハマって入るな。これからやり直しは一苦労だろう」

「時間はねえけど、違うやつを作れといえば作るぜ」


「無理するなユキチ、俺たちの目標は今できることをやるまでさ。最初のインスピレーションは大事にしたほうがいい。2、3日寝かせると他人の感覚になるから試すといい」

「なるほど、実サンキュー。いいアドバイスだ。大介、お前は意見がないのか」


「うん、オリジナル曲を作るのは本当に大変なんだな。シンガーソングライターなら一人で作るから迷いがないけど、2人、3人と手が加わるたびに、いろんな要素が加わってチャンポンみたいになるんだな。これが悪いことだとは思わないが、どうだろう、ここはひとつガッチリ太いテーマを決めて、カラーを統一しないか。


「なんかハードでメロディアスで揺れ動くってのは、聴き手にとって空中ブランコみたいにハラハラするけど、バラバラでまとまりがないと思われないだろうか。うまく口では説明できないけど、この曲はこうなんだ、っていうのが欠けてないか」

それを受けて実が、

「大介、お前が同じバンドのメンバーで良かったよ。だけど、その意見を取り入れたら、出来上がるまでに夏休みが終わっているよ。それじゃ、ひとつここは俺に任せてもらってもいいか」

ユキチが、

「実、お前に文句を言う奴はいねえよ」

「ありがとう、みんな」


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