波動 1
来週の29日(土)は予定があり、30日(日)午前中に入稿しますのでよろしくお願いします。
それから3日経った午後、実はデッド・ピープルのメンバー全員を自宅に呼んだ。実の部屋で話題となったのは、あかりが大介のことをすごく気に入っているらしいことだ。
ユキチなんて、
「とんでもねえライバルの出現だぜ」と驚き、そこで実が、
「あいつは一途だから一度好きになったら知らねえぞ」とけん制する。
そこへ、何も知らない大介が到着した。そのあまりにもとぼけた顔を見てユキチが、
「この女たらし」と叫ぶと大介は、
「なんだよ」と意味が理解できずにいると、追い打ちをかけるように、
「あかりがお前のこと大好きだってよ」とユキチがクギを刺す。
「本当かよ、子供だとばかり思っていたけど…。そうなんだ」
「なんだよ、まんざらじゃない顔をしやがって」
「いや、初々しいというか。小5でも恋心を持つんだ。考え方を変えなきゃいけないな。やっぱお兄さんなりにいろんなことを教えてあげたいじゃねえか」
「お前何を教えるつもりだよ」
「ユキチ、考えすぎだよ。俺は彼女の夢を壊したくないだけさ」
「どういうことだよ」
「今のあかりちゃんはただ憧れているだけさ。おたふく風邪みたいな一時的なものだからすぐに冷めるから心配いらないよ」
「よしわかった、お前はただの優しいお兄さんでいいんだ」
「それ以上、どうしろと言うんだ」
「だってよ、あの頃が女として一番難しいんだ。これから生理だって始まるし」
「おいおい冗談じゃないぜ、ユキチ」
「女はデリケートな生き物だってこと絶対に忘れるなよ」
「ユキチ、俺を信じられないのか。それともただの嫉妬かよ」
「お前の言うことなんかこんりんざい信じてやるもんか」
「じゃあ、後でキスしよう」
「えっ」
それを見ていた実が、
「お前らそこまで進んでいるんだ」というとユキチが、
「ただ1回キスしただけさ」と聞いていてあまり感情を出さないユカまで、
「大介、お前二股かけているのか」と声を震わせる。
「洋子は気の合う女友達だよ」と大介が釈明しても誰も信用しようとしない。
「チームの輪は大事だからな、お前らなら下手なことはしないと思うが、ユキチは俺たちのバンドの花だから人前でイチャイチャするなよ。ユキチ目当ての男が腐るほどいるんだから」と実。すると大介が、
「大丈夫さ、それは俺とユキチで十分に話し合っているから。ただ、今日はユキチがやたらと絡んでくるから悪いんだ。俺の気持ちは知っているはずなのに」
「あたいはちっとも悪くないもん。実があかりは大介がべた惚れだなんていうから悪いんだ」
「だってよ俺、女らしいユキチなんて知らねえから」と途方にくれる実に対してユキチは、
「悪かったな、女らしくなくて」と凄む。
事態の収拾に行き詰まっていた実が今日すべきことをやっと思い出していた。
「見んな聞いてくれ。今日集まってもらったのは、この前みんなに発表してもらった楽曲のデモ音源が出来上がったからなんだ。この夏はライブ演奏の数をこなして実力をつけようじゃないか」と我に返った。
それを受けてユキチが、
「今聴かせてくれるのか」と問いかけると実は、
「シンセサイザーで各楽器の音源を録音してあるから各自楽譜と照らし合わせてパートごとに練習してくれ。ドラムはソフトの音源を使っているので謙二のやりたいように変えても構わない。歌詞との関連もあるから細部はこれから詰める必要があるが、今できる最高のものを作ったつもりだ。これを土台にしてレコーディングに立ち向かおう。このデモ音源をライブ演奏の模範としてくれたらとても嬉しい」と説明した。
そしてさらに、
「大介の曲からいこう。まずタイトルは俺が決めた。『デッド・エンド』だ」
「どういう意味だい」との大介の問いに実は、
「いきどまりさ。大介の苦労がよくわかったからこのタイトルにした。今、大介が自分の曲に詞をつけているけど、内容はタイトル通りの必要はない。ただ、もがいていることだけ綴ってくれればそれでいいさ」
「ありがとう」大介は嬉しそうに応えた。




