『デルマックス・カタストリア』
(熱い……体が焼けそうだ)
体のいたる箇所に激痛。
溶けてしまいそうな熱。
しかし、それよりも、体内から溢れ出てくる力を、彼は感じていた。
『汝を我が義弟とし、この力を授けよう』
と、フロウが言葉を止め、目を開いた。
「デルマックス……龍の刺青か……」
フロウが呟き、顎に指を当てる。
「あの……フロウさん」
「……ん? ああ、なに?」
どうやら真剣に考え事をしていたらしい。
「属性とか、刺青って、なんのことです?」
それは、フロウの祝詞の中で聞こえた単語。
属性、なら何となくわかるが、刺青の意味がまだわからない。
「属性は、自分の武器に特定の力を付与できるんだ。僕の場合は水」
フロウが地面に刺さった剣を一本抜きとり、構える。
すると、刀身が水に包まれた。
剣先から柄へ流れている。
「属性は四種類。火、水、風、土があるんだ。でも、君の業火は……火、なのかな?」
フロウが苦い顔になる。
フロウも聞いたことがない属性なのだろう。
「次に、刺青。これは、個々に備わった、能力」
フロウが一拍おく。
『右手に宿りし虎の刺青よ。
今、我にその力を分け与え給え!』
フロウが言い終わると同時に、彼に異変があった。
「フロウさん……手が……!」
手が、虎のそれに変化していた。
しかし、当の本人は涼しい顔で、
「これが、刺青の力だよ」
と言った。
「体を変化させるもの、相手の能力を探るもの。中には地に潜れるってのもあるんだ」
「僕のは……?」
「デルマックス君……長いから略すね。マックス君のは多分……」
フロウが再び考え込む。
たっぷり時間を置いて、彼が出した結論は、
「わかんない! 使ってみよ!」
だった。
もちろん、少年……マックスは、使い方など知るはずもない。
「えっ!? どうやってですか?」
案の定、とても困っていた。
「だーいじょーぶ! 使い方ならその刺青が教えてくれるさ!」
「そんな適当な……!」
しかし、マックスはその否定を止めた。
なぜなら、頭の中に、一つのフレーズが流れてきたからだ。
マックスはその言葉を、静かに反復する。
『背に宿りし、龍の刺青よ。
今、我に空を統べる、絶対的な力を』
背中が、熱くなる。
しかし……。
「あれ?」
変化は、無い。
「な、なんで……!」
マックスが慌てる。
「うーん……なんだろうね。ちょっと走ってみて」
フロウの言うがまま、マックスは軽く走ってみる。
が、いつもと同じだ。
「なんでなんだ?」
マックスはその場で止まって、少し跳ねてみた。
連続でジャンプするつもりだったので、マックスは足に力を……
「!!??」
しかし、なぜか地面に足がつかない。
変わりにあるのは、フワッとした浮遊感。
「飛ん……でる?」
「これが……『龍の刺青』……?」