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龍が飛翔した世界  作者: 寺小柚琉
第一章:少年の名
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覚醒

笛の音は、遙か遠くまで響きわたる。

同時に、静かに、しかしズシンと重い音。

「僕が呼んだのは、系統、ドラゴン」

音が徐々に大きくなる。

「レベル15、獣級モンスター」

空が暗くなって、空気が重くなる。

「ネームド・ドラゴン」

それは、緑色の龍。

「安直な名前だけど、強いよ」

「強いって……え!?」

しかし、驚いている暇など無い。

ドラゴンが、目の前に現れ、いきなり口を大きく広げた。

あまりの出来事に、少年の足が固まる。

「避けて! 炎ブレスだよ!」

フロウが叫ぶ。

しかし、少年は動かない。

変わりに彼が取った行動は……。

「火……かぁ」

ただ、右手を前に突き出す限った。

「少年!」

フロウの叫び声。

そして、ドラゴンが火を吐いた。

轟音とともに、緑色の火が、少年を包み込んだ。

フロウは、少年を助けようと……。

「え……」

しかしどうしたことか、少年の悲鳴は聞こえない。

「龍に、火とは、なかなか面白いですね」

変わりに聞こえたのは、嘲笑を含んだ声。

ドラゴンの口から、火が途絶える。

そこに立っていた少年は、傷一つついていない。

「あ……ああ……」

フロウの目の色が変わる。

それは、なにか強大なものを見る目つき。

「これは……!」

ドラゴンが少し、おびえたように後ずさりする。

少年の顔は、

「ちょっと、狩らせてもらいますよ?」

笑っていた。




数分あって。

「すごかったねぇ~」

フロウの顔に幸せそうな笑顔。

しかし、

「すいません……よく覚えてないんですけど……」

少年には、戦闘の記憶がなかった。

「んー、なんだろっかなぇ?」

フロウが不思議そうな顔をする。笑顔のまま。

「ま、いいよ。無事にネームド・ドラゴンも倒したし、レベル、上がったでしょ?」

そう言えば、戦闘終了後、ファンファーレのようなものが聞こえた気もする。

少年は、目の前に現れていたテロップを必死で思い出そうとする。

「レベル……10かな?」

「うん、なら大丈夫」

フロウが少年の目の前の地面に、双剣を突き刺した。

「なにを、するんですか?」

「名前ー。ネームド・ドラゴンを倒し、かつレベル10になっていれば、儀式ができるんだ」

「儀式、ですか」

ちょっと唐突すぎる話に、少年は戸惑っていた。

「いくよ。片膝で座って」

少年は、言われるがまま、片膝を立てて座った。

ほとんど同時に、周りの景色が一変し、真っ暗な世界になる。

『創造主よ……』

フロウが胸の前で合掌する。

『我、双剣使い、フロウ・トリッパー。

 今、この者に、命を与えたまえ……』

フロウは静かに瞳を閉じた。

『この者……属性、業火。』

少年の体が、熱くなる。

『刺青、龍。』

「ツッ……!」

少年の背中に、痛みが走る。

『名を……』


『デルマックス・カタストリア』


少年の中で、なにかが弾けた。

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