表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
龍が飛翔した世界  作者: 寺小柚琉
第一章:少年の名
7/177

ベルーシ湖の巨大魚

モアに認められた少年は、モアの背中に乗り、フロウの後をついて行っていた。

行き先はまだ、聞いていない。

乗ったまま聞こうともしたが、フロウに、

「舌、気を付けてね」

と言われ、黙っているしかなかった。

しばらく走ったところで、フロウがモアを止めて、降りた。

「着いたよ」

目の前には、大きな湖。

「この湖は……?」

「ベルーシ湖だよ。いろんな魚が住んでるんだ」

魚、とは魚型モンスターのことだろう。

まさか、魚型モンスターを狩るのだろうか。

と、突如、フロウが笛らしき物を取り出し、吹いた。

笛から、不思議な音がする。

吹き終えたフロウが、少年を見て、

「虫笛だよ。ちょっと特殊だけどね。出てきてほしいモンスターを呼び出せるんだ」

「呼び出す……って」

瞬間、湖の水が大きく膨れ上がった。

「系統、フィッシュ」

それは、さきほどのキメラより一回り大い。

「レベル8、獣級モンスター」

魚の体に、四本の足。

「ドエル・フィッシュ」


キシャアアアアアアアアア!!


「……え?」

でかい。とにかくでかい。

「コイツと戦うんですか!?」

「うん、そうだけど?」

涼しい顔で返される。

「初心者がサシでやるにはぴったりの相手だよ」

初心者、と言われても、少年はこの世界に来て、一日も経っていない。

これは無茶すぎるだろう。

「む、無理ですよ! 死んじゃいます!」

「大丈夫。最初からやれなんて言わないよ。コイツは僕が手本を見せるために呼んだんだ」

と言ってフロウは、腰に吊った二本の剣に手をかけ、一気に抜きさった。

「よく見ててね」

そう言い残して、フロウがドエル・フィッシュに向かった駆けだした。

フロウは右手に持った剣で、フィッシュの前足を薙ぐ。

ザシュッ、と音がして、フィッシュがよろめいた。

しかし、フィッシュはそれでは倒れない。

すかさずフロウがフィッシュの右側で跳躍。

左右の剣で、右側面の体を斬り刻む。

跳躍は長く続かず、フロウの体が地面に落ちていく。

それを目の端で捉えていただろうフィッシュが、足でフロウを蹴ろうとする。

フロウはその足の動きに合わせて、空中で体をひねり、無事、地面に着地する。

攻撃がはずれたフィッシュはバランスを崩し、左に倒れそうになる。

ところが、いつの間にかフィッシュの体の下をくぐり抜けていたフロウが、フィッシュに左手の剣を突き刺し、動きを止めた。

ギシャアアアアアアアア!

フィッシュが叫ぶ。

どうやら、今の一撃がかなり効いたようだ。

しかしフロウは攻撃の手を緩めない。

再び大きな跳躍。

今度は突き刺した剣を踏み台にした跳躍だ。

フロウの体が、フィッシュの背中に落ちる。

フィッシュはそれに気付かず、あわててフロウを探す。

「ヘイ、ミスター! こっちこっち!」

フロウが背中で挑発する。

フィッシュが大きな顔をぐいっと後ろに向けようとするが、しかし横を向くしかできずに止まる。

「後ろだ……よッ!」

フロウがフィッシュの目に残った剣を突く。

ギャアアアアアアアア!

と、人の悲鳴にもにた叫び声。

フロウは剣を抜いて、振りかぶる。

「観念しなよ」

そして、フィッシュの頭に突き刺した。

ブシュッ、と音がして、フィッシュが倒れた。

ギ、ギ、ギ……

フィッシュの口から漏れるのは、悲鳴にすらならない音。

瞬間、フィッシュの体がぶれる。

そして、

パシィィン!

崩れた。

倒した……のだろうか?

「ふぃ~、やっと終わった」

フロウが額の汗を拭くような仕草をとる。

「は、早い」

その間、なんと二十秒。

あの巨体を、そんな短時間で倒してしまったのだ。

「いやー、疲れた疲れた」

フロウが少年の元へ近づいてくる。

「久々にあんなデカイのとやって、疲れちゃったよ」

と、フロウが地面に腰を下ろす。

「今のが戦闘……」

「そ。もしかして、早くて見えなかったりした?」

「いえ、全部見てました。すごかったです!」

「ありがと。じゃあ次は君の番だね」

と、にこやかにフロウが告げる。

やっぱり自分の番もあるのか、と少年がうなだれていると、

「ほら、自分の名前、知りたいでしょ?」

と、フロウが急かしてきた。

確かに、知りたい。

「やります」

「よし、じゃあ呼ぶよ」

フロウが虫笛を持つ。

「準備はいい?」

「万全です」

正直、とても怖かった。

しかし、覚悟は、ある。

「いくよ……」

フロウが、虫笛を吹いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ