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龍が飛翔した世界  作者: 寺小柚琉
第一章:少年の名
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新世界

まるで──

「……草原?」

目に飛び込んできたのは緑に輝く草原。

身を包むのは、麻の服。

見覚えにない景色。

……夢か?

そう思っていた矢先。


ズゥゥゥウウウン……


なにか大きなものが倒れる音。

「な、なんだ? 建物の倒壊?」

少年はグルっと周りを見渡す。

しかし、建物など無い。

その代わりに目に映ったのは──

「火の魔法が効かない!」

「ばか! あっちいんだよ!」

「二人とも、狩りに集中して!」

白と黒の鎧を着た二人の男と、いかにも魔法少女チックな女。

と、


グギャアアアアアアアア!!


キメラ。

「……は?」

夢だと信じたい。

しかし、そんに儚い願いは、彼らには届かないだろう。

全長五メートルはあろう巨大な怪物は、三人に襲いかかろうと体勢を低くする。

攻撃がくるのを悟ったか、

「チッ! これでもくらいやがれ!」

黒い鎧の男が地面を蹴って大きな跳躍。

キメラの顔の前で、両手に持った大剣を思い切り降りおろす。

ザシュッ! と、気味の悪い音がして、キメラの顔に大きな傷が生まれる。

ギャアアアアアアアアアア! と、人の悲鳴にも似た叫び声が響く。

「前だけじゃなくて、後ろも注意だよっ!」

と、いつの間にかキメラの背後に回っていた白い鎧の男が、手にした双剣でキメラの後ろ足を斬る。

たまらずキメラが倒れ込み、そこへ魔法少女(?)が、

「コール=ヘルブリザード!」

と、叫ぶ。

瞬間、辺りの温度が急激に下がり、氷が地面を覆う。

まるで、魔法のように。

キメラは、その氷に抵抗し、立ち上がろうとする。

しかし、地面に張り付く氷が、それを許さない。

「終わりにしようぜ」

黒い鎧の男が、体の半分を凍り付かせたキメラの頭を、

ザクッ!

斬り落とした。

キメラは断末魔を残すことなく、散った。

「な、なん、なんだ」

少年は驚きのあまり、腰を抜かす。

サクッ……と、草の音。

その音に、黒い鎧の男が反応する。

「誰だ!」

(まずい!見つかった!)

別に見つかったところでどうということは無い。

しかし彼は逃走を計った。

「どうしたんだい? ディー」

「草が潰れる音がした。人間だ」

少年は立ち上がろうとするが、体が言うことを聞かない。

「モンスターの音、ってわけじゃないのね?」

「ああ。モンスターならこんなミスは犯さない」

無理に足を動かそうとして、少年は前に倒れ込んでしまった。

「もしかして……『道化(ピエロ)』かも?」

「有り得るな。おい、ミリー」

「ん?」

「張れ」

少年はとにかく少しでも離れようと、地面の上でもがく。

しかし、全く前には進まない。

(は、早く逃げなくちゃ!)

「はいはいまかせて」

ミリーと呼ばれた女が、手にした木の杖を体の前に掲げ、

「コール=スパイダーフィールド」

と唱えた。

フッ、と、彼女を中心に青い光の輪が現れた。

光は少しずつ広がっていき、少年に迫っていく。

そして、光が、少年の足を捕らえた。

「見つけた! 草むらのとこに倒れてるわ!」

しまった、と思い、少年は声をあげる。

「待っ……」

「こんにちは、少年」

しかしその声は、白い鎧の男の笑顔によって、掻き消された。

「君、誰?」

白い鎧の男が、少年に訪ねてくる。

「あ、あの、僕は」

「あー、慌てないでいいよ。たぶん味方だからさ」

彼の優しそうな笑顔に、少年は安心を覚えた。

「なーに勝手に決めつけてんのよ! 敵だったらどうするの!」

と、割り込んできたのはミリーと呼ばれていた女だ。

「そんなこと言わないで、ほら、彼、おびえちゃうよ」

二人の間で話が進む。

仲がよさそうだ。

「おい、さっさと済ませるぞ」

と、もう一人の男。

ディーと呼ばれた黒い鎧の男だ。

「おい、そこのガキ」

自分のことか?と少年はおそるおそる返事を返す。

「は、はい」

「俺はのろまな奴と子供が大嫌いだ。だから、一度しか問わん」

男は、一拍間をあけ、

「お前、『道化(ピエロ)』か?」

「ピエ……ロ?」

少年は聞き覚えのない単語に困惑する。

「知らないの? それともとぼけてるの?」

前者だ。

しかし、声が出ない。

「……まぁいい、ギルドでとことん調べてやるさ」

男の顔に、残酷な笑みが浮かぶ。

「ごめんねー、ちょっとだけ眠ってもらうわ」

と言って、ミリー(?)が魔法を唱える。

「コール=ソムヌス」

「あ……」

そして、強烈な睡魔が、少年を襲った。

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