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居場所  作者: 火木に糸
3/3

Incident 事件発生のきっかけ

「・・・長期休暇まで1週間をきりましたし、課題のほうも計画的に進めていくように。では、寄り道せず帰るように。さようなら。」


担任が教室から出ると、外の蝉時雨に負けじと皆が騒ぎ出す。

主に夏休みの遊びの計画だろう。

友達と、プールに花火にお祭り・・・いいご身分である。


しかしまぁ、自分にも計画はある。

計画を遂行すべく一番に教室を出た僕は、1時間前に走ったばかりの道をまた急ぐ。



額にじんわりと汗が浮かんできた頃、目的の場所に到着する。

クーラーがさっきより涼しく感じられる図書室で、新刊一覧にひと通り目を通しながら呼吸を整える。


これから夏季休暇中の本を借りるのである。

長期休暇の貸し出し上限は、10冊までだ。

普段1度に3冊まで借りれるところからすると、些か少ないような気がしなくもないが、まぁしかたがない。

少しでも長く楽しもうと思えば分厚い本を選べばいいだろう。しかしその本が興味のないものだったら全くもって意味が無い。

かと言って好きな本を選んでも、すぐに読み終わるようなものではわざわざ夏休みに借りるべきではない。

そこのバランスが重要である・・・。


そこで!僕は、今日この日のために、授業中の寝る間を惜しんで、何を借りるか考え続けていた・・・。



「まずはっ・・・!」


図書室の入り口から数えて2番目の棚から、ある1冊の本を手に取る。


「記念すべき1冊目!「遠い海から帰宅」これは文学賞を受賞した作品で、長い漂流生活を送った主人公が帰宅するまでの長く、果てしのない道のり、そして道中出会った盟友ともとの熱い絆を綴った感動の実話である!!そして2冊めは・・・」




(中略)




「お次はこれ、「国士カン殺人事件」だ!国士の場合に限り暗槓でも槍槓できるかどうか、ルールを最初に確認してなかったせいで起こったイザコザから起こった殺人事件。日本の三大奇書と呼ばれていて、対局中の細かな描写が魅力の超大作推理小説だ!」


ちょうど8冊目の本を重荷に耐える左腕の上に積み上げた所である。

ここで少し落ち着いて、気づく。


「あっ、これ机におけばいいのか」



図書室の南に位置する机に移動し、本を積み重ねる。

(あとは・・・「星占い殺人事件」と「ヨガで治す切れ痔!」だったな。たしかこっちに・・・)

カルチャーの棚に移動しようとしたとき、視界の隅に何かを捉えた。


「・・・んっ!?」


自分が何に反応したのか、視線の動きを戻して確かめると・・・。


「・・・これか?」


図書室入り口にある本棚の、手のひら大の小さなポップ広告に目が留まる。

大して特徴のない、よくあるアニメの絵。記事を読むとどうやらアニメ化が決定した作品のようだ。


「ふーん、子供戦争ねぇ・・・」


自分はアニメ原作などの作品は極力読まないようにしている。

アニメ見てから買ったとか、流行に流されてるとか、そういう風に見られるのが嫌だからだ。

しかし何故だろう。この作品に何か魅力を感じた。

表紙が派手なわけでもない。内容をそのまま付けたとしか思えないタイトル。でも・・・なんでだろう、読んでみたい!



そして・・・!


いつのまにかと手に取っていた。

(まぁせっかく気になったんだ、これも何かの縁。これを借りる事にしよう。)


机に戻り本を置く。


(これで9冊だから・・・「星占い」か「切れ痔」どっちか我慢しないといかんな・・・。推理小説はもう選んだし、「星占い」はまた今度にするべきかな?でも「切れ痔」のタイトルセンスも光る・・・)


しばらく悩んだ結果、「星占い殺人事件」を選択した。

(よく考えればヨガで切れ痔が治るはずがないよな・・・むしろ悪化するわ!!)

それにギャグとして持っていたとしても誰に見せるわけでもないし・・・。



受付に本を運び、いつの間にか来ていた図書係の生徒に厳選した10冊を渡す。

彼も作業も手慣れたものだ。

学校一借りる機会が多い僕の貸し出し番号を既に暗記しており、ものの30秒で貸し出しは完了した。




バッグに本を詰め、出口へと向かう。


これから起こる一連の事件のことなど知るはずもなく、重いバッグを担ぐ僕の足取りは軽かった。


ポップ広告の女の子を振り返って目を合わせるが、その目に不吉な影を感じた気・・・も、しなかった。

まぁなんとなく形にはなってきたんではないでしょうか。

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