Prologue ものがたりのはじまり
完全な初心者です。
拙い文章ではありますが少しでも楽しんでいただけると幸いです。
「昨日のバンブーマンZ見たー?」
「あぁやっぱりソーズが黒幕だったな。予想通りだわ!」ゲラゲラ
(・・・うるさい)
「・・・と田島君付き合ってるらしいよー?」コソコソ
「えーそれマジー?」コソコソ
(・・・うるさい)
「来週楽しみだなっ!」
「久々だよねみんな集まれるの!楽しみー!」キャッキャッ
(ぁぁあああもう!うるさあいい!)
対面で喋っている女子2人を軽く睨むが華麗にスルーされる。
自分の中ではキマっていたのだが・・・まぁ仕方ない。
今日も、K田町立K田中学校の図書室は盛り上がっていた。・・・いつものことだ。
昨日のアニメの話をする男子、他人の噂をする女子、遊びの計画を楽しそうに語る男女数名のグループ、etc。
・・・はぁ。
読んでいた「助教授山田の事件簿」(講堂社出版)を閉じる。
(こんな雰囲気じゃ盛り上がらないな・・・トイレで読むか。)・・・これもいつものことだ。
座っていた椅子を丁寧にしまい、立ち上がる。
去り際に、バンブーマンの話をしていた男子二人をチラッと見る。
(ソーズには事情があったんだよ!原作読んで出なおしてきな!!)
もちろん声には出さない。
そのうちの一人と目が合い、慌てて目を背ける。
(なんでこんなに人がいるんだよ・・・)
もちろん理由はわかっていた。
今年から図書室にクーラーが設置されたのである。
夏休みまで残り1週間に迫った今日。
こんな暑い日に人が押し寄せないわけがない。
1ヶ月ほど前までは、図書室には人がほとんどおらず、静かでとても快適な空間であった。
毎日休憩時間の読書を目当てに学校に行っていたようなものだ。
クーラーが設置されると聞いて、
「さらに快適に読書できるなんて・・・神は我を見捨てなかった!!」と喜んだ。
実際は読書ができるような空間ではなくなり、先客であった僕はトイレに追いやられたわけだが・・・。
そのせいで最近司書さんと話してない。
司書さんは白髪のおばあちゃんで、他にやることがないのかよく話しかけられた。
おすすめの本を教えてもらったり、貸出制限以上の量の本を
「ちょっとおまけね」
と貸してくれたりした。
お陰で去年の年間の図書貸出件数は、2位に130冊の大差をつけ圧倒的1位であった!
だからかどうか分からないが、クラスでは「友達のいない変な奴」というイメージがついてしまった。
しかし、それは違う!
本当は「友達の少ない変な奴」である。
そんなことを考えているうちにトイレに着く。
この3階の東トイレは、全校舎の中で一番風通しがよい。
教室や図書室があるのは校舎西側の1,2階であるから人もまずこない。
読書してください!!と言わんばかりの絶好の場所である。
とはいえもう夏休み目前、流石に暑い。
頬を伝う汗を拭きながら静かなトイレで読書。
これもまた、いとをかし。・・・なんてね!
少し笑みを浮かべながら「助教授山田の事件簿」179ページを開くと、既に山田の推理が始まっていた。