夫婦円満の秘訣
短編です
最近気に入って通っている店がある。
レンタルDVD屋だ。ソレも普通のレンタルDVDじゃなくて、思い出や記憶を保存したDVDを貸し出している。
「ぃらっしゃ~い」
比較的若く見えるが、年齢不詳の髭で長髪の店員が疲れた様子でレジから挨拶をした。俺も軽く会釈で返す。
店の中は女性、男性、ペットなど大枠に分かれていて、その中身は名前であいうえお順に振り分けられている。
DVDの中身は別にエッチな奴じゃない。たまにそう言うのも入っているけど、他人の人生の一部を切り取った、記録映画のようなものばかりだ。
「なんか増えた?」
「あー、そうっすね」
愛想がないけどそれがまた良い。俺は新しく増えたDVDの背表紙を追った。ふと、妻の名前と同じ名前のコーナーが増えていることに気が付いた。
名前は個人情報の観点か、漢字ではなくカタカナで書いてあるから、知り合いの記憶を覗いてしまう可能性が大いにあり得る。だから、知り合いの名前のDVDは基本的に見ないことにしてるんだけど、もう他の名前は、ほとんど見尽くしたと言っても過言じゃないくらい観ている。
仕方ない、今日は妻の名前と同じ女性たちを観ていくか。
数枚取って奥の部屋に向かう。家に帰るより、ココで見て帰る方が楽なんだ。長居しても基本客は俺だけだし。いつも数時間は居座ってしまう。
古びたレコーダーに入れて、動画を見る。一枚目は、知らない大学生くらいの女の子が鏡に映っていた。その子はおもむろに顔を弄って全然別人に変化した。なるほど、メイク動画か。女の子の変身はすごい。妻も付き合いたての頃、メイクを落とした顔を見てしまって驚かされたものだ。
片っ端からDVDを観進めていると、見覚えのある服装の女性の映像が入っているDVDに行き当たった。
小走りで走るワンピースの女性。途中ではっとしたように左手の薬指から指輪を外し、別の指に豪華な装飾の指輪を嵌めた。
「あれ、これってやっぱり・・・」
案の定、妻の記憶だった。いわゆる浮気の現場を切り取ったもので、最寄り駅で落ち合った二人は、仲良く都会へデートに向かい、そのままホテルへ入って行った。それから先は見られなかった。
まったく気づかなかった。妻自身にそんな素振りが一切なかったから。会ったその日に、不貞の時間分、ここに記憶を売ってたんだから、妻自身にその記憶がないのは当たり前か。
残っていたDVDをすべてチェックすると、何人もの見知らぬ男たちと密会を重ねる妻の記憶が何枚もあった。
どんよりした気持ちでDVDを返却した。
「買取、すぐに対応できますよ」
髭の店員が俺の目を見てそう言った。俺は、人の記憶を観るのはいいけど、ここに陳列されるのはちょっと不安だ。今回の妻みたいなことが起きないとも限らない。でも、この記憶を抱えたまま、何事もないように過ごすのは、俺には無理だ。どうしよう、俺はどうすれば・・・。
——家に帰ったら財布が少し潤っていた——
まいどあり。




