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10.牢屋にて

漆紀は不意に意識が覚醒し目を覚ます。起き上がって周囲を見渡すと、周りは薄暗い場所であった。よく注視すると、牢屋のようだった。部屋の出口には鉄格子があり、絵に描いたよな牢屋である。

そして漆紀の隣には彩那が居た。

「おい、彩那! 起きろ。起きろって!」

「ん、んん……どこですかここ? 確か、注射を打たれて……ああ、辰上家め! やってくれましたね。やっぱり罠だったじゃないですか!」

「でも眠る前に、夜巳さんは〝信じて〟と言ってた……なんかあるぜきっと」

「でもここはなんもない牢屋ですよ。手枷も足枷もされてないですけど、出られないのは変わりないのでは」

「でも、俺のムラサメは取られてないみたいだ。夜巳さん、なんか考えがあると見たぜ」

漆紀は鉄塊の首飾りを強調してそう言うと、彩那は「んー」と唸って考え込む。

「そうなると、なんでしょうね……一体何が……」

彩那は悩み続けるが、漆紀はあれこれ考えずに現状を整理する。

「とりあえず、誰かに拉致られたのは確かだろ。誰かが問題だが、まあ、十中八九竜理教だろうな。まさか竜理教の手が辰上家にまで回ってたとは驚きだけどさ」

そうこう話していると、牢屋の向こう側から足音が近付いて来る。

「なんだ?」

漆紀が牢屋の出入口の方へと向かうと、出入口の窓には夜巳の姿が見えた。

「夜巳さん?」

「なっ、このぉー! よくも拉致なんてしましたね!」

彩那が怒りを露わにするが、夜巳は呆れ顔で「どの口が言うのよ」とツッコむ。

「あなただって漆紀を誘拐したじゃない。何を言ってるのよ……それより、状況の説明よ」

「その口ぶりだと、夜巳さんは敵じゃないって事で良いのか?」

「ええ。ワケがあって貴方達を敢えて竜理教の元まで拉致したのよ」

「……ワケって?」

「妹が、天音が人質に取られているの。助けて欲しい」

夜巳がそう願いを言うと、彩那は納得できない様子で首を横に振る。

「なんですかそれ、私達を拉致しておきながら助けて欲しいって言うんですか」

「待て彩那。夜巳さん、天音は誰に捕まってるんだ? 俺達の拉致も、誰が指示した?」

漆紀はなんとなく察しがついて来たのだ。夜巳が漆紀達を拉致したのは本意ではなく、天音を人質に取られて仕方なくやっていた事だと予想したのだ。

「醍醐という竜理教の福井県担当の司祭よ。全国の司祭の中でも、かなり力のある人物よ」

「醍醐……ソイツが天音を人質に取ってるんだな? 場所はわかるか?」

「ちょっと竜王様、まさか助けるって言うんですか!?」

彩那は夜巳の願いに抵抗を示すが、漆紀は助ける意思を見せる。

「ああ、助ける。天音は俺の従妹だ、そりゃ助けなきゃな」

「……竜王様がそう言うならば仕方ありませんけど。私はまだあなたのこと信用できませんよ夜巳さん。注射まで打って眠らせて来たんですから」

「それで良いわ。私が天音の元まで案内するから付いて来て。天音を助けたら、すぐにここから脱出するわ。外に六香を待機させてるから、それで一気に逃げるつもりよ」

「わかった。今すぐ行動に移ろう、今この時間も夜巳さんは醍醐ってヤツにバレるリスクがあるんだろ? なら動こう」

漆紀が言い切ると、夜巳は軽く頭を下げてから牢屋の扉を開けた。

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