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TSURITOーー繋げた未来  作者: カバの牢獄
第一章 ゼロから、否、マイナスから
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第一章 05 問題の根幹

 五歳で理想と現実の大きなギャップを身を持って知ったサニーはその後、十年間、誰にも触れていない。

 一定距離内近づくと無意識の内にシックスセンスを使ってしまうから。

 だから、独りの時間を長い間過ごすことでサニーは感情を薄めた。無に近づけるように。何も感じなかったら、きっと人の温かさを思い出すことができると信じて。

 でも、できなかった。やはり、感情を無にすることなんてできない。だから、フラッシュバックしてシックスセンスが暴走してしまうのだ。

 だから、多くの大きいことを失ったアシュラ君がその失ったものを取り戻すことができるのに取り戻しに行かないことは共感して憧れた姿から掛け離れていて、許せなかった。手を伸ばせば触れたい人に触れて欲しい人に手が届くのに手を伸ばさないのは長く孤独だったサニーにとって冒涜だ。

 だから、ーーーーーーーーーーーーーーー

「意志を貫き通すと言うのなら、サニーがアシュラ君を正常に戻す」

「正常に戻す、か。正常に戻らなかったら?」

「その時は、理想のアシュラ君に近い今の内にアシュラ君を終わらせる」

「動くなよ」

 サニーニョがサニーを止めようと動こうとしていたために、アシュラ君が止めた。正直、シックスセンスを勝手に使いそうだったため助かった。

 これだけ、観察能力が高くて初対面のサニーのことも思えるのだ。それなのに、アシュラ君はアシュラ君を大事に思っている人たちを蔑ろにしてる。

「もう、止めて。アシュラ君らしくない。理想のままでいて」

「一体、サニーが俺の何を知っているって言うんだ?俺を追体験したわけじゃないだろう?」

「もういい」

「場所を変えるか」

 アシュラ君はそう言うと、瞬間移動をした。どうやら、無人島のようだ。人の気配が無かった。だから、増々ーーーー

「どうして!」

「さあ、俺を終わらせるなら思い切りやりなよ。勝てるなら」

 サニーはサニーを抑えることができなくなった。気付いたら黒と白の、灰色のオーラを纏っていた。

「アシュラ君の記憶を見てサニーにはもう一つ才能があったことを知ったよ」

「そうか。やっぱり。ちょっと、本腰入れないと危ないかも。ツリトにはその才能はなかったみたいだからね」

「『レアオーラ』。こんな才能があるとは思わなかったよ」

「本腰を入れないとキツイな」

 サニーはアシュラ君を超引力で引き寄せた。でも、

「やっぱり」

 サニーは憧れの人にも当然、触れることができない。涙が溢れて零れて来た。

「泣くなよ」

 アシュラ君はタコの脚を間に入れて斬撃を纏って離れた。顔に零れている涙を指で拭おうとしながら。だから、増々、アシュラ君が分からなくなって暴走してしまう。




 『レアオーラ』。自由に変質することができるオーラのことだ。

 オーラは細分化をするといろんな型がある。自己完結型やら、他者完結型やら、領域型やら、身体能力強化型やら、治癒型やら、などなどだ。

 『レアオーラ』はいろんな型の集合体を一つだけの型の集合体に自由に変えることができるオーラのことだ。

 つまり、スコップを使って土を掘っていたのを、ドリルを使って速く、そして、深く土を掘るようなものなのだ。

 ふう。

 俺の勝利条件はおそらく、サニーに触れて抱きしめること。だが、マズイことになったな。

 まだ、ツリトのオーラを纏ってから二日程度。オーラの型もある程度は理解しているが、(おそらく、自己完結型が三十パーセント程度、他者完結型が四十パーセント程度、領域型が三十パーセント程度、残りはその他)まだ、全然使っていないために、完全にオーラの型を理解していない、つまり、消費効率が悪い。だが、サニーには『連動』がある。無意識の内に消費効率が高いのだ。

「もし、『悟り』を開いたら、俺のシックスセンスを使わないとな」

 『悟り』。オーラを完全消費した時、威力が爆発的に跳ね上がる。

「それまでは、ツリトのオーラの認識度を爆発的に上げる!」




「ホントに心持ちを変えてくれないんだね。もう、いいや。アシュラ君がこのままなんだったら、きっと、サニーは耐えられない。だから、アシュラ君を殺してサニーも死ぬ」

 サニーはアシュラ君の重心を思い切りずらした。頭から仰向けに倒れるはずだった。でも、アシュラ君はタコの脚を使って無理やり耐えた。その隙に超弾力でアシュラ君を引き寄せた。

「引き寄せるだけか?」

「うんうん。終わらせるの」

 アシュラ君の両腕に鋭い斬撃を飛ばしてサルシアのシックスセンスで縛りを付けた。

「治癒できないよ」

 アシュラ君は笑った。絶望的な状況なのにだ。

「フロンティアに帰ってくれるなら、治してあげる」

「は?俺に勝ったって思ってるの?何を言っているか、全く以って分からないね」

「まさか!?」

 急いでアシュラ君を引き寄せた。手に炎を纏いアシュラ君を焼き尽くそうとした。だが、アシュラ君は両腕を生やして背中の後ろに手の甲を合わせていた。

 やられた。

 アシュラ君は河童の拍手でオーラを飛ばし、サニーの纏っているオーラを弾いた。そして、その勢いのまま、サニーを抱きしめた。

「俺は、サニーに触れれる。俺がいる。変わるべきなのはサニー。お前だ!」

「そんなの、そんなの、分かってる!でも、十年間、無理だったから。アシュラ君は簡単にできるのに、しないからっ!」

「十年間無理だったら二十年間で試したら良いじゃないか。それに、もう、俺がいる!」

「無理だよ。・・・無理なんだよ。久しぶりの人肌、サニー以外の温かさだったのに。こんな、こんな久しぶり、望んでなんかなかった!!!!!!」

 サニーは超弾力、超引力を反転させてアシュラ君を弾いた。その勢いは凄まじくて無人島のあらゆる木に次ぎ次に穴を開けるようにして飛んで行った。

「アンチシックスセンス。こんな力も、サニーは望んでなんかなかった」

 サニーは自分の才能に増々、悲しくなり、涙が溢れて零れる一方だった。

「ホントに、アシュラ君を殺して、サニーも死のう」




 アンチシックスセンス。シックスセンスを反転させたものだ。だが、それは、いくら、強い者でも、フロンティアに住む者でも極一部の人しかできないものだ。

 何故、使用できる人が少ないのか?

 それは、イメージの仕方の問題なのだ。例えば、俺がサニーを凄く抱きしめたいと思っていて、目の前にいるサニーを抱きしめる。これが、普通のシックスセンス。だが、アンチシックスセンスと言うものは全く、違って来る。どれだけ強く思っていても、実際には抱き着かない。だが、抱き着いている。

 このように論理の飛躍。有り得ないことを完璧にイメージする必要があるのだ。それを、

「俺が一度やったのを見てすぐに真似できる。引きこもりだったんだろうけど、恐ろしいな」

 俺は全身に衝撃を浴びながらサニーの才能に驚嘆していた。全く以って恐ろしい。

「この才能を見つけただけでも俺がツリトでいた意味があったな」

 俺は血らだけの全身を治癒すると、海を走り、一直線に跳んだ。顔がグチャグチャで目も腫れているサニーが超引力で俺を引き寄せようと両掌を広げていた。

「どんなに、頑張ってもどうにもできないものって、何か、分かるか?」

「そんなの、どうでもいいっ!」

 サニーは俺の問い掛けを無視して超引力の引力を引き上げた。と、同時に鋭い斬撃で両手両足を斬ろうとした。

 俺は斬撃を斬撃で相打ちにするとサニーは超引力を曲げて操った。サニーは右手を開けると超弾力のオーラの球の塊を作り俺の背中に飛ばした。サンドウィッチだ。押し潰される。だから、俺は超引力されているオーラを斬って斬撃を体に纏うと体を反転させて超弾力のオーラを斬った。

「運命さ。運命は必ず変わらない。未来は変えることはできるけどな。つまり、何が言いたいかって言うと、サニーがそんな態度だと、サニーの理想は現実にならない。だから、無数にある運命を適切に選ぶことが理想を現実に変える、未来を変えるために重要ってこと」

「意志と行動がチグハグなんだよ。だから、運命なんて、どれを選んだったっておんなじだよ!」

「サニーの深層心理は凄い才能を求めていたってだけさ。ただ、何かが原因で才能なんてないって思っていただけで、諦めていただけで、ホントは誰よりも凄い力を求めていたんじゃないのかっ!だから、サニーの才能はサニーに応えた。ただ、それだけだよ」

「違う、違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!」

「サニーがそんな風に思った理由は簡単さ。認めて欲しい人に認められたいって、愛して欲しい人に愛して欲しいって思っていたから、無意識の内に選んでいたのさ。最強になるための運命を!おそらく、その人が望んでいたから!」




 サニーの頭に父さんの顔が浮かんだ。

「そんな、父さんが望んでいた運命は諦めた。父さんはサルシアにその運命を求めていたんだからっ!!!!!!!!!!!」

 サニーは二つの球を作った。手のひらサイズの球だ。だが、今までよりも、遥かに出力を上げたものだ。黒色の超引力の球、白色の超弾力の球だ。

「あらま、まだ、認識度が完璧じゃないのに、そんな戦い方されると、困るね」

 サニーは距離を取って逃げようとするアシュラ君に距離を詰めながら、二つの球を自由に動かした。超引力の黒色の球で辺りの木や落ち葉を無作為に引き寄せて球の体積を大きくしながらアシュラ君を追い、超弾力の白色の球をアシュラ君の目の前に、球と球で挟めるように動かした。途中、木や落ち葉などを弾きながら。だから、アシュラ君は逃げることに集中しながら、自身に降り掛かって来るものは斬撃で斬っていた。

 遊ばれてる・・・!?

「だったら、二段階目。スピードを上げる。ゼログラビティー」

 サニーは超引力によって引き寄せられているものの重力を失くした。これにより、超引力の黒色の球はスピードを上げた。アシュラ君をギリギリ引き寄せることができるぐらいまで速く動かせれるようになった。

 だから、アシュラ君は超引力の黒色の球と超弾力の白色の球に挟まれた。アシュラ君は振り返ってサニーを見ると笑った。

 瞬間移動をするつもりなのだろうか?

 一瞬、サニーの頭の中に浮かんだ。でも、二つの球がぶつかると超パワーが生まれて無人島ごと、爆発するほどのエネルギーがあることは理解してるはず。どうする気?




 まだ、オーラの認識度は七十パーセントほど。それに、他者完結型は四十パーセントだから、更に無理。

 俺は思わず笑った。今日、釣ったばかりのタコの九つのシックスセンスに感謝して、そして、何より、

「俺は幸運だな」

 九つのシックスセンスの内の一つ、力の蓄積。

「早速、役に立ちやがった」

 俺は、蓄積していたオーラを一気に消費して、二つの球、超弾力の白色の球から、超引力の黒色の球を鋭い斬撃を曲げながら斬った。

 大爆発が起こった。だから、爆風を上空に空気砲のような斬撃で飛ばした。

「さてさてさて、その、連動を生かすためにも近距離戦をしたら、どうだ、サニー?」

 サニーは明らかに動揺した。

 自分の才能を自覚し、受け入れないと、サニーは変われない。

 俺は心持ちを変えることは簡単にできる。でも、そんなことは根本的な解決にはならないし、あんまり、好ましいことではない。だから、サニーがサニー自身で変わって欲しい。

「サニー。俺はお前が好きだぜ」

「ふ、ふざけないで!」

「だって、今、必死に変わろうとしてるじゃないか!」

「何を!?」

「こんな、サニーを受け入れて!ってしか、ずっと言ってないじゃん」

「ーーーー」

「サニー。その、運命は間違っていない。今、変わってる途中だしね」

「サニーは、サニーは、ずっと訴えた!訴えてたんだよっ!でも、でもでもでも、誰も何もできないから、諦めてたんだよっ!」

 悲しみ、涙を流し、悲観して、全てを諦めた表情。俺は、そんなサニーの表情を見てその表情はインドラの姿に重なって、自分が情けなくなって、心の奥底から怒りが込み上げて来て、でも、やっぱり、自分が情けなくなって、どうしようもない焦燥に駆られて、無いものねだりをして、自分の弱さに打ちひしがれて、結局、この言葉が一番強く心を支配する。

「どうして、どうして、信じてやれないんだよっ!もっと、もっともっと、頼ってくれよ!俺は!!!!きっと、あいつらも、助けて!!!!、って言って欲しかったはずだ。勝手に諦めんなよっ!!!!」

 サニーは涙を更に流し、瞳を大きく揺らがせた。でも、俺を睨み付けた。

「信じたかったのに、頼りなかったんだよっ!!!!アシュラ君は、きっと、インドラちゃんとの関係を修復できる。なのに、サニーたちとは事情が違うのに、ここで、足踏みしているのは許せないっ!こんなの、こんなことを許したら、サニーが凄く可哀想な子になっちゃう。インドラちゃんにはアシュラ君が近くにいないのに、希望があって、サニーは父さんとサルシアがいるのに、一向に希望を持てない状況は、アシュラ君たちの事情を知ったら、知ってしまったら・・・・・・。だから、アシュラ君がフロンティアに戻らないって言うなら、サニーはアシュラ君と一緒に死ぬっ!」

 ああ。そっか。フロンティアとこっちの世界は百八十度違うんだ。それでも、俺は抱えているものの根幹はおんなじに思える。

「勝手に諦めんなよっ!!!!」

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