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TSURITOーー繋げた未来  作者: カバの牢獄
第一章 ゼロから、否、マイナスから
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第一章 03 孤独と憧れ

「黒が現れた?」

「ああ、らしい。このタイミングだ。間違いなくアシュだろう」

「アシュ!」

 スマイルはヒマワリの頭を撫でて夫のラフを見た。ラフも聞いた話のようで確信はしていないが、限りなくその可能性が高いだろうとは思っていた。

「だから、明日、一目見て来る。フロンティアからのこっちに来た人か、それともアシュか。アシュだった場合、ツリトって名乗ってるだろう。その場合、あんまり、子供たちには見せないでくれ」

 「KAPPA」はフロンティアからこちらの世界に来た人たちの支援をしていた。黒のオーラと言うのは尊敬の証である一方、恐怖の証でもある。圧倒的な力は恐れられるのだ。だから、コミュニーケーション、ファーストコンタクトは結構難しいのだ。それは、年齢が行っていれば、行っているほど。

 だから、アシュラ、ツリトの、おっさんとの最初の出会いは最悪だったと言えるだろう。だが、最悪だったために、コミュニケーションができた、と言うのは大きなギャップ萌えだった。つまり、運が良かったのだ。

 とにかく、そんな事情で「KAPPA」はフロンティアからの難民のために、孤児施設や、子育て支援などの社会貢献をしているのだ。

「特に、十歳以上の子供だね」

「ああ。ツリトのことを知っている子には気を付けてくれ」

「ねえねえ、ツリトってアシュのおじいさんのこと?」

「うん。そうよ」

「じゃあ、何で、ツリトって名乗ってるの?」

「「それは・・・」」

 スマイルとラフは同時に声を詰まらせた。ヒマワリに正直に答えると、ヒマワリのシックスセンスで危険なことが起こる可能性があるからだ。

「それは?」

「うーん。ゼウスとカシャがアシュにとって良いことだって判断したからだ」

「へえ」

 ヒマワリとラフは同時にため息を吐いた。ヒマワリのシックスセンスのために言葉を慎重に選ばないと行けないのは大変だった。




「僕は、ゼロ以外の友達も作りたかったんだがな」

「ノア。俺たちは力が抜きんでてるんだら仕方ないさ」

「と言ってもな。僕のシックスセンスはゼロって名前を付けてるんだぜ。酷いじゃないか」

「酷いってもな。勝手にお前が付けたんだから。まあ、お互い独りだ。俺が生きている限りはお前に付き合ってやるよ」

「クッ。ゼロ。僕はゼロみたいに独りで良いとは思えないんだよ」

「だが、俺は友達を作るのは難しいと思うぞ。フロンティア以外の人で」

「何で?」

「こっちは、コンテンツが多すぎる。人が多くてフロンティアより交友関係を広げられそうに一見思えるが、無理だ。人口は多いが、所詮は小さな社会の集合体。それも、方向性がバラバラの。フロンティアもそれなりにあるが、ほとんど、方向性が揃っている」

「なるほど。それが、俺が空回りした理由か」

「まあ、お前が学校で積極的に話していたのもあるが、やはり、脳のスペックもある」

「脳のスペック?」

「コンテンツが多すぎるって言ったよな?コンテンツが多いってことは深く学ぶことはないんだ。それに、学問ってのは理論を追求するが、その理論なんてものを俺たちは超えた存在だ。だから、フロンティアの外の人間は浅いことでしか興味を持って話すことができない」

「なるほど。確かに、すぐに話が終わったんだよな、皆。うーん。しかし、だとしたら、僕はどうすれば良いんだろう?」

「だから、コンテンツに触れずとも共通してることで話すんだ。好きなご飯は?とかな」

「飯の話かあ。しかし、僕たちはフロンティアのものを食べているしな。・・・詰んでね?」

「ああ。詰んでる。だから、こっちで生きていくなら、俺は独りで良いって言ったんだ。なあ、ゼロ。フロンティアに行かないか?」

「嫌だ。僕は思い出しちゃうから」

「そうか。だが、向こうの方がエルフも多いし、エルフ歴が長い人が多いぞ?」

「嫌だ。母さんと父さんを思い出してしまう。ゼロの方こそ平気なのかよ?」

「俺は、もう、乗り越えた。それに、血は流れてるんだ。傍にいる」

「・・・そうか。僕もゼロみたいに割り切れたら良いんだが」

「仕方ないさ。失う怖さは俺も知ってる」

「すまん。ありがとう」




 俺がこんな会話をしてしまったのも一つの要因だったかもしれない。今日もノアは友達を作れずに俺と一緒に孤児施設に帰った。そこまでは良かった。原因はテレビに映っている少年だった。

「「ツリト」」

 俺とノアは同時に声を揃えた。俺たちが最後に見たのは二歳だ。曖昧な記憶だが、間違いなかった。身長が縮んでいるのは、何かのシックスセンスの影響だろうと考えていた。

「アシュー!」

 八歳の、五歳下のヒマワリがテレビの真正面を陣取って見ていた。

「アシュ、アシュラか」

 ゼロが見間違いだったと胸を撫で下ろした。だが、

『さあさあ、イキシチ王国に現れた謎の少年、黒色のツリト君です。彼は昨日、突如現れました。おそらく、フロンティアから来たと考えられます。我々は彼に色々聞いて見たのですが、どうやら、記憶を失くしているようで、何も覚えておりません。ですが、黒の実力は確かなようです。御覧ください!』

 これが、トリガーになってしまったのだ。

「記憶がない!?僕よりもアシュラは失っている・・・。なのに、なのになのになのにっ!アシュラはたくさんの人を魅了して、もう、仲間を作っている。独りじゃない。僕は、三つも下の僕よりも酷い状態の子に負けている。僕は、僕は」

「おい、落ち着け。落ち着くんだ、ノア。必ずしもアシュラがノアよりも酷い状況だとは限らない。思考を止めるな。可能性を考えろ」

「五月蠅いっ!」

「待て、ノア!」

 ノアは走って外に逃げてしまった。俺は急いで後を追おうとした時に、スマイルさんが俺を呼んだ。

「ゼロ。あの子が、もし、悪い方向に考えちゃったら、遠慮なくシックスセンスを使いなさい!人前でも構わないわ」

「うんっ!」

 俺は人前で黒のオーラを纏う許可を得てノアを追った。




 サルシアの挑戦を受けた俺は瞬間移動で砂漠に移動をしていた。誰一人いない岩石地帯だ。

「すまない。ツリト少年。君の方が実力が遥かに上なのは分かっている。付き合ってくれ」

 サルシアの父、サニーニョは俺にだけ聞こえるように言った。

「サニーニョ。オーラは金色らしいけど、相当だね」

「私か?まあ、才能を完全には受け継いでいないが、一つの力は完璧に受け継いでいるからな」

「それって?」

「サルシア。サキューバスの受け継がれた力のことを話しても良いか?」

 サルシアは黙って頷いた。灰色のオーラを纏って集中力を研ぎ澄まして上げていた。

「まず、一つはアレだ。白色のオーラ。代々受け継がれるシックスセンスは白色になんだ。そのシックスセンスはコピーだ。そして、もう一つ。これは、私が説明する。言うより、見た方が早い。ツリト少年、軽くオーラを纏ってくれ」

 俺は言われるがままにオーラを纏った。すると、サニーニョは俺の手のひらに腰の入ったストレートを放った。その動きは洗練されていて、無駄が無かった。

「なるほどね」

「この動きも受け継がれた力で『連動』と呼ばれている」

「もういい?」

 サルシアは待ちかねて話掛けて来た。

「君のシックスセンスは斬撃だね。僕のシックスセンスを教えないのは不公平だから、教える。僕のシックスセンスは縛りだ」

 サルシアは落ちている石を拾うと真上に投げた。それを剣を引き抜いて空中で斬った。すると、石は空中で止まった。

「僕は、斬った対象に縛りを付けることができる」

「なるほどね。コピーもあるし、俺とサルシア、相性が良いね」

「みたいだね。もう、始めて良い?」

「構わんよ」

 ギリギリだな。心がすり減っている。どうにかして、力を身に着けようって躍起になってる。それに、恐怖の念もだんだんと強くなって来ている。サニーニョも同様だけど。

「では、始めるぞ。いざ、尋常に」

「「勝負」」

 サルシアは灰色のオーラを纏って強く足を踏み込んだ。オーラを纏っていて動きはとても速い。だが、

「『連動』は受け継いでいないのか」

 俺は何となく、身内に劣等感がある、と踏んでいたが、その劣等感の正体も予想が付いた。と余計なことを考えているとサルシアは剣を振った。その軌道は炎を纏って加速していた。

 俺は斬撃を纏って真上に跳んだ。

「バカか!」

 空振りしたサルシアは勝利を確信したのか浮遊して近づいて来た。

 ああ。戦意を無くすことは簡単だけど、それじゃあ、根本的なことは何一つ解決しないし、簡単に勝っても、多分、良くない。適当なタイミングで勝つか。

 俺は斬撃を纏って空中移動をした。河童の力は敢えて使わなかった。移動しながら、空気砲のような斬撃でサルシアを適当に攻撃した。サルシアは避けながら、単発、鋭い斬撃を放った。それは、当たれば即死するような鋭さだ。俺はその斬撃を軽く斬撃で斬ると空気砲のような斬撃を飛ばした。

「さっき、手に入れたばかりのシックスセンスを早速使うなんて、戦い方が下手だな。だから、こうなる」

 俺はわざと、サルシアの体を逸らすように斬撃を飛ばした。サルシアは好機と見てスピードを上げて炎を纏った剣を振り被ろうとした、だが、その力を入れた剣の柄に強い衝撃が加わり破裂したことにより、手から剣が離れた。その瞬間に俺はサルシアの顎を殴った。

「クハッ」

 サルシアはそのまま地面に強く叩き落とされた。

「サルシア、俺に玉砕されに行くぐらいなら、その心のモヤモヤの原因に直接玉砕されに行ったら良いだろう。随分と心の奥深くに刻まれている辺り、結構時間が経ってるだろうよ」

「君に、何が分かると言うんだ!記憶を無くして何も、何も覚えていないんだろう。大事な人のことも!」

 俺が地上に降りて話を聞こうとした時、サルシアの前に一人の少女が現れた。その少女はサルシアをチラリと見ると体の向きを変えて俺を見た。サルシアは怯えて体を震わした。サニーニョは腰に刺した剣の柄を握っていた。だが、その姿はぎこちなかった。二人は名前を呼ぶことしかできなかった。

「「サニー」」

「ねえ、ツリト君、いや、アシュラ君。サニーはアシュラ君に勇気を貰えた。だから、フロンティアに帰って。全てを分かって尚、サニーはアシュラ君の行動に賛同できない」

「なるほどね。ラストピースは見ていないんだ。まあ、厳重に外に漏れないようにしてあるから仕方ないんだけどさ。サニー。俺をどうしたいの?」

「そのラストピースが何であれ、ツリト君になってからの行動はサニーが勇気をもらったアシュラ君の姿から、掛け離れてる。だから、サニーはアシュラ君にフロンティアに帰って欲しい。サニーが憧れて勇気を貰ったアシュラ君の姿のために」

「えーっと。何て言うんだったけ。メンヘラ?うーん。多分、俺に好意があるっぽいし、ヤンデレ?まあ、いいや、そんなことは。悪いけど、無理だね。どうしてもって言うなら力づくで来なよ。軽く相手をしてあげる」




「ふむ。サキューバスの問題がようやく動いたか。俺も気になる最高傑作。どんな動きをするか」

 サキューバスの歴史で戦闘狂と書かれた死んだはずの男、サンドラサキューバスは異空間からその様子を静かに眺めていた。

「だが、ウィーチの野郎も追わないとダメだし。どうするか・・・。ホントにヤバくなったら、駆けつけるか」




 俺が、走ってどこかに行ったノアを見つけた時、ノアは着物を着た優男と話していた。その優男は顔に作り笑いを浮かべ鋭い瞳の奥に闇を抱えているようだった。そんな男と話していたノアが突如、黒色のオーラを禍々しく纏った。

「信じろ。その破壊願望が赴くまま行動することは正しいと」

 その言葉と同時にノアはオーラを纏っていた。だから、ゼロは躊躇わずオーラを纏いシックスセンスを使った。対象人物を俺とノアと男の三人に絞り、時を止めた。ここでの三人の物的、オーラ的事象は何もできなくなる。だから、俺以外オーラを纏ってはいない。

「ノア。惑わされるな!」

「あの子に惑わさされてはいけませんよ。ツリトさんを殺しに行きましょう」

「黙れ!お前がノアに指図するな!ノアは俺の親友だっ!俺がいるだろう!」

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