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TSURITOーー繋げた未来  作者: カバの牢獄
第一章 ゼロから、否、マイナスから
1/7

邂逅

 目が覚めた時、何も覚えていなかった。

 ただ、心の中に激情が渦巻いていた。

 焦燥、悲しみ、寂しさ、色々な負の感情が溢れる中、一番強烈に色濃く残っていたのは怒りだった。

 だから、目を開けて星空を眺めた時、涙が溢れていたことに後から気付いた。

「俺は・・・」

 横を向くと砂に文字が書かれていた。そこには、ただ一言、

「ツリト」

 名前だけが書かれていた。




 八年後。

「さてと、今日はツリトの最後の握手会。向こうから俺を殺しに来るか?先に仕掛ける?だが、戦うなら、俺の全てをぶつけなければ・・・。それに・・・」

 デストロイは頭に、忌々しい青髪蒼目の男、サンドラサキューバスを思い浮かべ顔を顰めた。

「宣戦布告、か?そうだな、牽制しておくか。切り札のために少しでも時間を稼がなければ・・・」




「持ってるなあ、ツリト」

「まあね。まさか、最終日に黒の魚を捕まえることができるんだから」

「全くだ。逆にツリトがいなくなってから、現れたら暫く漁に出れなかったよ」

 ツリトは星空、よりも明るく輝く大型船に乗って船首に立っていた。魚をおびき寄せる効果があるが、少々眩しすぎる。その影響からか、いつも、大型船で休んで賭博をやっている仲間たちは騒がしかった。隣にはこのチームのリーダーの中年の男がタブレットを見ながら立っていた。

「おうおう、ツリト。そんなところで立ってないで混ざれよ!」

「そうだそうだ。今、流れが悪いんだ」

「こいつの独り勝ちだ。どうにかしてくれ!」

「うるせえ!今、感傷に浸ってる途中でしょうが!!!!」

 そんな騒がしい若手と中堅たちに大声でリーダー、通称おじさんは叫んだ。それを見て笑われていたが、改めて注意することはなかった。

「大変だね。これから、独りで纏めるんだからさ」

「全くだ。今後の予定は決めてるのか?」

「うーん。とりあえず、世界一周かな。お金はたんまりあるし、ゆっくりと羽を伸ばすよ」

「そうか」

 ピッピッピピーピピーピピーピピー!!!!!

「来たね。じゃあ、いつも通り頼むよ」

「揺れも激しくなって来たな。気を付けろ、相手がどんなシックスセンスを持っているかは、まだ、分かっていないんだからな」

「分かってるって」

 ツリトは忠告を聞きながらオーラを纏った。

「黒のオーラをこんなに間近で見れるのも今日で最後か」

「感傷に浸りすぎ。それと、おじさんはおじさんで紫でそれなりに有名なんだから、ちゃんと胸を張っときなよ」

「紫ったて、騎士にならなかったクソ野郎で有名だぜえ?」

「知らないよ。じゃあ、ホントに行くよ」

「ああ、行って来い」


 オーラ。それは、基本的に身体能力の強化とシックスセンスを使うために必要とされるもの。

 シックスセンスとは特殊能力、炎、水、風、雷、などなどを生み出すであったり、浮遊するであったりなどなど、色々とある。


 ツリトは海に綺麗に落ちて潜った。

「さて、今回はどんなのかな?」

 ツリトは海の中で目を凝らして、今回の目標に視線を向けた。


 ツリトが海の中で目を平気で開けて暗い視界の中でも魚をはっきりと見ることができているのは何故か?

 河童だからだ。

 河童は暗闇でもものを見ることができる力がある。他にも話すことができたり、皮膚呼吸ができたりと特殊な力がある。

 注意として、緑色で禿げで、酒飲みでみたいな、我々のイメージする河童とは少々違う。端的に言うと河童のファンタスティックな部分を取り入れたものを亜人として、ここでは言っている。

「相変わらずデカいな。まあ、デカい方が映えるから良いんだけどね」

 ツリトの目の前には推定五十メートルは超えようかと言うほどの超巨大魚がいた。黒色のオーラを纏い

ツリトを凝視していた。

「さすがに、お前は強すぎるんだよ。海の生態系が崩れちまう」

 ツリトは少し殺気を向けた。すると、目の前の超巨大魚が猛スピードで、ツリトを食べようと突進して来た。透明のバリアを纏いながら。

「はあ。大したことないじゃん。がっかりだよ」

 ツリトは超巨大魚のシックスセンスにわくわくがなくてがっかりした後、自分のシックスセンスを使った。

 ツリトは一直線に突進していた超巨大魚の下腹に強い空気砲のような斬撃が放ち、水面から浮き上がらせた。

「「「「ウォーーーーーー!!!!」」」」

 興奮した叫び声を聞きながらツリトは水中を蹴って跳んだ。

「一応、貰っとくぜ」

 ツリトは超巨大魚の排泄口に軽く斬撃を飛ばして透明な小さな球体を取り出した。

 尻子玉。

 オーラの源泉とシックスセンスが保存されている、河童にしか見ることのできない肛門にある臓器だ。ツリトはその尻子玉の表面の汚れを斬撃で飛ばすと飲み込んだ。そして、それと、同時に水面にポチャリと音が聞えた。

「じゃあ、後はよろしく」

「おう」

 おじさんは紫色のオーラを纏うと気絶している超巨大業を小さくして行き、網で捕らえた。

 その様子を視界の端で捉えながらツリトはもう一度、海にダイブした。

「お前が一番厄介だってことは分かっているんだぜ。まあ、一番感謝しているんだけどね」

 ツリトの視界には黒色のオーラを纏い必死になって高速移動をしているタコがいた。一メートルほどの大きさだが、超巨大魚の速さを遥かに上回るスピードだ。

「っとに、相変わらず、逃げ足が速い」

 ツリトは自身に空気砲のような斬撃を纏わして海の中を高速移動した。

 !?

 タコはツリトが近づいて来ていることに衝撃を受けて八本の脚を、手でゴムを弾くように、弓矢を引くようにして絡まして引っ張ると脱力をした。そして、更に高速移動をした。

「全く。これだけ、生存能力に特化した奴はお前らタコぐらいしか知らないよ。それに、野心も凄いからな。よくもまあ、あの超巨大魚を食ってやろうなんて思うよ」

 ツリトは斬撃の威力を強めて距離を縮めた。

「ホントは全てのシックスセンスの性能を確かめてから捕えようと思ったけど、面倒だわ。脳の数だけあるってズルいよなあ」

 ツリトは河童の特性の尻子玉のことを棚に上げて、タコの脳の数、つまりは、シックスセンスが九個あるのを非難した。そして、タコとの距離が手の届く範囲になった時、タコは墨を吐こうとした。

 だが、遅かった。

 ツリトの体は膨らんでいた。ウミの中の空気を吸い込んで体を膨らませたツリトは両手の甲を背中の後ろで合わせていた。そして、膨らんだ分の空気とオーラを手のひらに集中させながらツリトは拍手した。

 河童の拍手。前述の通り凝縮された空気とオーラを飛ばす、河童にしかできない技だ。その凝縮されたものを食らった生物は揃って、体外はもちろん、体内のオーラも飛ばされる。

 そのため、タコはオーラを纏えなくなり、シックスセンスを使えなくなったことで急速にスピードを落とした。ツリトは空気砲のような斬撃を飛ばしてタコを水面から跳ね上げた。タコはこの攻撃で意識を失った。ツリトは再び水中を蹴って水面から上がるとタコの排泄口から尻子玉を取り差して、表面の汚れを弾き落として食った。

「さてと、皆のところに戻るか」

 ツリトは浮遊しながら、光り輝く大型船に向かおうとした時、透明な結界に囲まれた。

「久しいな。ツリト」

 こいつ、どこから?凄い殺気だな。まあ、今はそんなことより、乗っかるか。

「俺も会いたかったよ」

「随分とフロンティアの外の世界に溶け込んでいるな。だが、良いのか?いっぱい悲しませた奴らがいるのではないか?」

 悲しませた奴ら、か。

「随分と親切だね。でも、俺はお前を絶対に殺す。もう、誰も悲しませない」

「フンッ。お前の体格、年齢、俺への挑発だったのだろうが、残念だったな。結局、この八年間で俺を一回も見つけられなかったのだから」

 それは、まあ、探さなかったんだから。

「わざわざ、そんなことを言うために俺に殺されに来たの?」

「フン。バカを言え。俺が今日、お前に会いに来た理由は一つ、お前がフロンティアに帰ったら、その時が決戦の時だ。二度も同じ手は食らわんぞ」

 フロンティア、ねえ。

「にしし。どうしたって、お前は俺たち河童に邪魔される運命なのさ。それに、お前の奇襲は一年前にも失敗してるぜ。俺は一切関わらずに。どれだけ、凄いエージソンシリーズの武器を作ろうと、所詮、お前は雑魚だ」

「フン」

 デストロイはもう一度鼻で笑った。


「「俺が お前ら全員を殺してやる!!」」


「俺は皆を守るためにこの星を終わらせない」

「フン。俺には守るものはない。俺はどうとでも始末しろ。今度は確実に魂を破壊する」

 ツリトはデストロイの首に鋭い斬撃を飛ばすと同時に瞬間移動をして大型船に戻った。

 ボンッ!!!!

 先ほどいた結界は消えて、デストロイの体は爆発して粉々になり、灰となった。

「どうせ、こんなことだろうって思ってたよ、デストロイ。それにしても、面倒だったし、面倒だなあ

 俺の、ツリトの繋げた未来は」


 十歳の頃、ツリトになった河童の少年は今後、来るであろう波乱に静かに胸を高鳴らせた。

さて、出て来る登場人物は「TSURITOー繋げた未来」と同じなのですが、設定上の矛盾を取り除き、ブラッシュアップされたのが、今回の「TSURITOーー繋げた未来」です。結構、面白いと思います。

ブックマークと★★★★★をください。結構、違う話になりますので、両方を楽しんでください。

よろしくおねがいします。


ブックマークと★★★★★をください。この作品を人気にさせることができるのはあなたたちです。

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