ひそひそ
ひそひそ·····ひそひそ·····
ひそひそ·····ひそひそ·····
最近自分の周りが静かに騒がしい。
矛盾しているが、ひそひそと話す声は内容までは聞き取れなくとも耳に入ってきてしまう。
ひそひそ·····ひそひそ·····
あぁ、まただ。
声のする方に視線を向けるが、そこには他愛の無い会話をするクラスメイトがいるだけ。
気のせいと自分を誤魔化すが、やはりひそひそとした声は聞こえてくる。
自分に関する良くないうわさでもしているのだろうか?
気にしだすと余計聞こえてくるが、依然として内容まではわからない。
朝、登校のために駅へと向かう。
ひそひそ·····ひそひそ·····
近所のオバサンまで自分のことをうわさしているのか?
「あーら、早いわね。今から学校?いってらっしゃい。」
ゴミを出していたオバサンに話しかけられ、ぺこりと頭を下げる。
いや、これだけじゃまずいか。
「い、いってきます!」
これ以上変なうわさはされたくない。
できるだけ元気に言って走って駅へと向かう。
はあ、はあ·····
意味も無く走ったおかげか、いつもの列車より一本早く乗ることができた。
一本違えば混み具合も違うのか、珍しく座ることができた。
朝早いし、座れたし·····睡魔、が。
ひそひそ·····ひそひそ·····
またあの声だ!
目を覚まし辺りを見渡す。
気が付けば列車内はかなり混雑していたが、皆スマホに夢中で特に話をしている様子はない。
『次は学園駅~学園駅~左のドアが開きます』
降りる駅だ。
「あ、すみません。降ります。」
目の前に人が立っていたので、軽く断りを入れて立ち上がる。
ここで降りる生徒は多く、人の波に乗って降りると改札口へと向かう。
ひそひそ·····ひそひそ·····
「おは「あー!もう!何なんだよ!」よ?」
ひそひそ声が気になりすぎて思わず叫んだ瞬間、友人に声をかけられていた。
「え?何ナニ?朝からご機嫌ナナメ?」
「あ、おはよ。悪い、なーんか声が気になって落ち着かなくて。」
「気になる声?そういや知ってる?ひそひそ様。」
「ひそひそ、サマ?」
「そう。最近流行ってる都市伝説。何かひそひそ聞こえるんだけど、声のする方を見ても違う会話してたり誰もいなかったり。」
ヤバい。めっちゃ当たってる。
「信じるか信じないかはキミ次第!なーんてな。」
どこかで聞いたセリフを呟かれ、歩いていた足が止まる。
「ん?どした。まさか信じちゃった?」
「·····るんだよ。いるんだよ!ひそひそサマだか何だか知らないけど、最近ずっとひそひそひそひそ聞こえるんだよ!」
「んー、仕方無いんじゃない?最近の君ってカッコイイから。」
は?
確かに今の制服はパンツスタイルだし、ベリーショートにはしているが。
「うわさもされてるよ。三つ編みしてたのにいきなりのベリーショート!
おまけにそこらの男子顔負けのカッコ良さ!」
「いや、髪は鬱陶しくなってきたから切っただけで。」
かくいう友人も、校則違反ギリギリのツーブロック。
「悪いうわさじゃないから気にすんなって。」
笑い飛ばされどこかホッとして学校に向かう。
ひそひそ·····ひそひそ·····
悪いうわさではないらしいが、やはり気になる。
そもそもひそひそ様、なんてものは本当にいるんだろうか。
『なぁ、ひそひそ様って本当に·····』
ぎゃああああ!
「うわっ!」
「えっ!何?」
友人にひそひそ様のことをひそひそと話そうとすると聞こえた叫び声。
「ひそひそ様のこと、ひそひそ話そうと思ったら叫び声が聞こえた。あ·····」
ひそひそ声が聞こえない。
ひそひそ様のクセに自分がひそひそ話されるのはイヤなのか。
「帰り、何か奢っちゃる。」
「お、何か知らないけどラッキー!マック·····いやモス行こう!」
「げ!コンビニのつもりだったのに!」
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ひそひそ·····ひそひそ·····
ひそひそ·····ひそひそ·····
アナタの周りでひそひそ声が聞こえませんか?