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51.焔と水と―16

 水上機が投下した爆弾は狙い過たず〈ブラウヴェイス〉の直上に落下し、命中……寸前のところで、何かにぶつかったかのように横に弾かれ、その途中で爆発、四散した。

 まるで透明で巨大な傘、目に見えないドームで頭上をおおわれているようだ。

 こまかい破片が空からバラバラと降り注ぎ、それが空中のある箇所で向きを変えられ、明らかに引力にさからった奇妙な動き――まるで滑り台か何かがそこにあるかのように、斜めに降りていく様をどこか呆然としながらヴォトル少尉は眺めていた。

()()()()、か……」

 ことさら考えるまでもなく正解の言葉が口をつく。

 そうだった。

 イスタリアのく○ども――〈ヘルハウンド〉の兵隊どもが、携帯ロケットでこっちを狙ってきた時、ネクターが事前に加護を願ってくれていて、それで難を逃れることが出来たんだった……。

 今回は、その同じ加護を山岳歩兵の複数名が願い、周囲に展開していたのだ。

「また助けられたな」

 水上機はセクレの泉の砲へ去っていく。

 見事、命中させたと思った爆弾が、その直前で爆発してしまった。

 水上機に乗り組んでいるイスタリアの兵は、舌打ちしたい気分でいるのではないか。

 自分たちは完璧な仕事をした。

 しかし、爆弾の方が不良品だったか、保管や整備に問題点があったのか、過早爆発をおこしたのだ。

 奇跡でも起きたか、なんとも(いの)(ちみょ)(うが)な連中だ――そう思っているかも知れない。

「いや、敵を過小評価するのは禁物だな」

 そこでヴォトル少尉は自戒と共に、いやいやと頭を振る。

「仮にも連中は〈ヘルハウンド〉、もしくは〈ヘルハウンド〉が警護をまかされる程のものなのだ。こちら側にエルフがいるのは、もうわかっている筈……」

 だったら、今の攻撃が魔法に阻まれたのだくらいの事は容易に思いつくだろう――そう考えて、気を引き締めたのだった。

 そして、

 ふ、と目を瞬いた。

「そうか」と呟く。

「これは……、いけるか……?」

 顔をうつむけ、親指と人指し指であごを摘まむとすこしの間、考える。

 その後、

「よし!」と叫ぶとコマンダーハッチから車上へ、ウン! とばかりに両方の腕に力をこめると自分の身体を引っこ抜いた。

「ヴィンテージ中尉!」

 大声で名を呼ばわりながら、ダンダン! と足を踏みならし、〈ブラウヴェイス〉の車体の上を後方へ――エンジンフードからキャタピラ覆いの方へと進んで、そのまま、えいや! と地面に飛び降りた。

 車体の後ろへまわりこみ、開いたままになっている兵員輸送用の乗降ハッチの中へ頭を突っ込むと、

「ヴィンテージ中尉!」と再び名を呼んだ。

 通信機のマイクを手にしたヴィンテージ中尉が、すこし驚いた顔でこちらを見ている。

 どうやら、セクレの泉湖畔に位置している観測班と連絡をとりあっている最中だったようだ。

「すまんが、ちょっと来てくれ」

 それに構わずヴォトル少尉は相手を手招く。

「砲弾の終末誘導の件でちょっと思いついたことがある。話をきいて、使えるかどうかの判断を仰ぎたい」

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