5.世界大戦-2
イスタリア帝国、サン=セヴェリナ教主国、ハイランド共和国、タス連邦――列強と呼ばれるこれら四つの国が『世界大戦』を戦った、いわばメインプレイヤーだった。
最大最強を自他ともに認める『ヒト』族至上、戦争の因ともなったイスタリア帝国。
世界宗教が聖地とする地を首都に定め、その総本山であるサン=セヴェリナ教主国。
もっとも古い歴史を有し、同時に『技術力』革新の騎手でもあるハイランド共和国。
ローレンシア大陸西部域――『人類』領域の最東端、広大な版図を有するタス連邦。
よっつの軍事強国が、周辺の、また傘下にある中小の国々をまきこみ激突したのが、すなわち『世界大戦』だったのである。
戦いは、アーカンフェイル山脈の北に位置するイスタリア帝国と、ローレンシア大陸西部域――その西南、西北にあるサン=セヴェリナ教主国、ハイランド共和国、それから東方のタス連邦が矛を交える、一対三の構図ではじまり、進展した。
国民の人種構成が、圧倒的に『ヒト』族優位であり、それ故に『妖精』族排斥に傾きがちなイスタリア帝国と、そこまでではない、或いは融和的な政策をとる他三国の対立の、もっとも先鋭的な政治のあらわれだったと見ることもでき、
経済的、民族的、宗教的――様々な『戦う理由』を基に戦争は戦いつづけられたのだった。