表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/64

44.焔と水と―9

 やがて、水上機は頭上から去った。

 ここへ来た時と同じ向きに引き返したのではない。

 カロンの三叉路の状況を確認しに行ったのだろう。

 そして、その後もう一度ここを確認するつもりだ。

 それでも、ほんのひと握りであれ時間は得られた。

 水上機のエンジン音が聞こえなくなったあたりで、集落跡は動きをとりもどす。

 監視にあたるもの、警戒につくもの――調律のとれた機械のように、兵たちは自発的にうごいて態勢をととのえていく。

 ただ、〈ブラウヴェイス〉乗り組みのドワーフたちには、さしたる仕事がない。

 車体の点検や整備にかける時間は多分ないだろうし、それ以前にエンジンをかける必要性もないからだ。

 ここ、或いはここから先で〈ブラウヴェイス〉が果たすべき役割はなく、状況的にはカロンの三叉路にもどってグラス曹長の僚車と合流するのが良策かとも思える。

 と、

 ヴォトル少尉が、そのあたりも含め、ヴィンテージ中尉と話し合いをもつべきか――そう考えていた矢先に、向こうの方から呼び出しがきた。

 伝令の兵がひとりやって来て、今後について相談したいから自分のもとまで足労願いたいと言ってきたのだった。

 階級、序列がどうのと言うよりも、指揮下においている部隊の規模、それより何より地図、通信機をはじめとする資材関連は山岳歩兵たちの方が充実している。

 ヴォトル少尉は、すぐに応じて、案内の兵ともどもヴィンテージ中尉のもとへと向かった。

「どう攻める?」

 同行を命じたシールズ軍曹とともに(おもむ)くと、開口一番そう訊ねる。

 ヴィンテージ中尉の脇に立っていた副官らしきエルフが、思わずといった感じで目をパチパチと瞬かせたが当の本人は動じず、

「共同で」と淡々とこたえを返してきた。

 前振りも何もない端的な問いを向けられたのだったが、聞きかえすこともせず即答である。

 状況の分析と結果として自分たちが取るべき対応についての考えは、どうやらヴォトル少尉と同じだったらしい。

 が、

「共同?」

 端的な問いに、おなじく端的に返され、今度は当のヴォトル少尉の方が首をかしげている。

「そう言われても、〈ブラウヴェイス〉はセクレの泉までもってはいけないが……」

 ここまで来たのだ――共同して事にあたるに否やはないが、しかし、自分たちの果たすべき役割がわからない。

 暗に言う言葉に、ヴィンテージ中尉はうなずいた。

「そうですね。そこで巫女殿の助力が必要になります。彼女は意識がもどりましたか?」

「ええ? なんだって?」

 しかし、彼が口にしたのは、またもヴォトル少尉の想定外。

『共同』と言っても、そこまで範囲をひろげるとは思わず、思わず、素、そのままの声がでてしまった。

「いや、すまない。バタバタしていたので未確認だ。気を失ったときのままなら、〈ブラウヴェイス〉の車内でまだ横になっている状態なはずだが……」

 ゴホンと咳払いしてから、報告する。

「では、まずは彼女の容態の確認をねがいます。多分に彼女の容態そのものが、これからお話しする事の(きも)になりますから」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ