41.焔と水と―6
「長距離ロケット砲、だって……?」
ヴォトル少尉は言った。
「多分、まず間違いなく」
ヴィンテージ中尉がうなずく。
どっちなんだとヴォトル少尉は思ったが、きっとヴィンテージ中尉も内心動揺しているのだろうと、問い返すことはしなかった。
頭の中には、カロンの三叉路で、そして、集落直前で、〈ヘルハウンド〉の兵が使い、あるいは使おうとした携帯可能な対戦車兵器が思い浮かべられている。
ロケットという名称が共通していることから、あれら対戦車兵器と筏の上に直立している塔――その内部に収められているのだろう物の動作原理は同じなのだろう。
しかし、サイズが象と蟻くらい違いすぎる。
ざっと見ただけでも塔の高さは約一四、五メートルはある。
であれば、内部のロケットとやらも大きさはほぼ同じはず。
そんな巨大なロケットで、一体なにを狙うというのか……?
そして、何故こんな敵地の只中に運び込んできたのだろう?
「一旦さがりましょう」
目は筏の上を凝視したまま考え込んでしまったヴォトル少尉に、ヴィンテージ中尉が囁いた。
袖をかるく引っ張られて頷きをかえす。
「わかった」
実際、こんな敵の目と鼻の先でゆっくり考え込んでいられるような余裕はなかった。
現に集落での戦闘音が、かすかであれここまで届いたか、筏の上の人の動きが忙しないものになっている。
それどころか戦車兵がもっとも耳にしたくない音までが伝わってきた。
飛行機のエンジン音だ。
「水上機か」
音がした方へ向け、視線を転じたヴォトル少尉が舌打ちする。
機数は一。
双舟の上に機体を乗せた単発機が、こちら側からは死角になっていrあたりに駐めてあったのだろう――筏の向こう側からこちらへ水面を移動してきつつあった。
キャノピーが長い。
複座の哨戒機、もしくは観測機だ。
おそらくは分解して運んできたものを現地で組み立てたのに違いない。
それなりに重量のあるフロートを付けたままではアーカンフェイルの山並みを越えられないから、そうするより他なかったはずだ。
守備部隊としては〈ヘルハウンド〉を優先的に輸送せざるを得なかったろうから、最後の直奄たる兵備はあれだけとなったのだろう。
厄介ではあるが、水上機となれば、急降下爆撃までは出来まい。
機銃掃射に小型爆弾を二、三発おとされる程度ですむだろう。
その点だけはまだマシか。
これも一種の火事場の馬鹿力と言うべきなのか――脳が全開となっているためだろう、ヴォトル少尉は敵の配備状況、取り得る攻撃手段について瞬時にそう推測してのけた。
「それで?」
すこし離れた場所に駐めていた軍用バギーまで戻ると、ヴィンテージ中尉は通信機を取り上げた。
敵の飛行機が偵察に来るだろうこと、可能な限り見つからないようにする事――集落にのこっている部下たち(および〈ブラウヴェイス〉)に対してテキパキ指示をする。
その彼が回線を切るのを見計らって、ヴォトル中尉は先のはなしの続きをもとめたのだった。




