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21.魔犬―7

 カロンの三叉路。

 それが、魔犬の集結地であるようだった。

 大地の(しゅう)(きょく)、また隆起、くわえて風雪や氷河による侵食。

 太古代におこった……、いや、現在もなお継続中の地形の変成作用は、アーカンフェイル山脈に高低をはじめとした種々の表情をあたえたが、その一つ。

 端的にいえば中央天山路から何本も分かれて伸びる枝道の更にそのまた枝道にいたる分岐点。

 イスタリア帝国軍に対峙しているサクラサス公国軍をはじめのドワーフ達からすれば、ある意味後方を(やく)されたようにも見えるが、そうではない。

 むしろ、その地にいる魔犬の方が、空輸によるもの以外に補給をうける手段もなく、味方本体のもとへ帰るに帰れない袋小路に我と我が身を置いているといえる。

 装甲車両、魔獣、そして兵員――強力な兵備、兵員を持ち込んだとて、銃砲弾や食料、医薬品がなければ戦おうにも戦えなくなるのは必定だからだ。

 みずからが破壊したエルフの隠れ里から物品を収奪しても、条件はさして変わらない。

「逆に言えば、そこまでする何かが、そこにはあるって証拠なんだろうがな……」

 こまかく折り畳んだ地図を風になぶられながらも見て、ヴォトル少尉はつぶやいた。

 そう、カロンの三叉路から分かれてのびる道は壊滅したエルフの集落へとつながってはいるが、更にその先は行き止まりとなっている。

 セクレの泉は、その集落から山ひとつを越した先であり、人道はともかく車両は通行できそうにない。

 つまり、知り得た敵の配置からすると、エルフの集落に何か秘密がある、もしくは、そこでなければ出来ない何事かを敵は為そうとしている。

 魔犬は、その何事かを無事達成させるため、カロンの三叉路に陣取り、守備しようとしているように見えるのだ。

「こんなどん詰まりで一体なにをしようってんだ、まったく」

 その『何事か』が何か、まったく見当も付かないのだが。


 中央天山路がアーカンフェイル山脈を南北に貫く主要交通路といっても、しょせんは整備された山道程度のものである。

 夜ともなれば星明かりの他、道を照らしだすのは自らが掲げるヘッドライトのみ。

 日が落ちるとそこで移動は中止となって、部隊の面々は野営の準備にはいった。

 万が一に備えて〈ブラウヴェイス〉、それからエルフの軍用バギーで円陣を組むように火線を四周に指向する。

 ヴォトル少尉たち戦車兵は、なんなら〈ブラウヴェイス〉の車内で眠ってもよいが、エルフたち歩兵はそうはいかない。

 雨、は降らないにしても、夜露はしのぐ必要があった。

「足回りの点検やっぞ!」

 シールズ軍曹の声に、『へぇ~い』と、リド上等兵、ネク二等兵がいかにも気乗りしなさそうな返事をかえす。

 装甲車両のキャタピラ――そのパーツたる転輪や履帯は、いずれも重い。

 一個で何十キロもあるのは、ザラだ。

 いくらドワーフが腕っ節自慢と言っても重労働なのは変わらない。

 ウンザリするのは当然だったが、しかし、やらなければならない作業なのではあった。

 今回の作戦行動は、防御主体のこれまでとは異なり、移動は必須、もしかすると機動戦闘もありうると考えておかねばならないからだ。

 ただでさえ砲が固定式で機動戦闘に向いてはいない。

 それに加えて足回りに不調をきたして満足に動くこともままならない事となっては、それこそ命にかかわりかねない。

 ドワーフたちは、二両が二両とも整備にはいり、ヴォトル少尉はそれを横目に指揮官たちによる打ち合わせの席へと移動した。

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