見た目通りの……
(――あぁ……頭が痛い)
(それに舌の上が苦い)
もそっ
あれっ。ベッドの上だ。ご飯食べてた筈なのに。う〜ん………………頭が痛くて思い出せない。
カミーアさんは何処? 一緒にご飯食べてたのに。ベッドから離れて探すか。
「あぁ〜う〜あー」
意識が飛びそう。頭が痛いせいで眠りが浅かったのか眠気が襲ってくる。
なんでこうなったんだっけ。
……確か昨日作った機械をお菓子食べたあとに紹介してそしたら変な白いのが出てきて、鏖にしてその後ご飯食べて…………。
で? それ以降の記憶がない。
何故だろうか。ご飯に変な物でも入っていたのだろうか?
ガタッ……サー
倉庫の扉を開き外に出る。
なんとそこには燦燦と照らされる赤黒い血のような草原が広がっていた。
まぁそうだよね機械の後片付けしてなかったしね。そんな中をペチペチと血の塊を転がしながら進む。掃除するなら早い方がいいと思う。
それにしても何故頭が痛いのか、ナノマシンでも作っておけば良かった。
食事のとこから記憶がないからな。やっぱり原因があるとすればそのあたりが怪しいと思う。でも記憶がないからな。どうしようもないな。
そんなことをぶつぶついいながら当初の目的も兼ねて、塊を大きくしていると。
おや……あれは? 巨大な赤い塊の下に人が立っている。カミーアさんかなと思い私は塊を置き去りにしてそれのもとへと駆けていく。
……いや二人だな。カミーアさんの隣に誰かがいる。
緑髪の青年といった感じだな。そのまんますぎてなんとも言えんが。
並んで見ると私より大きいカミーアさんが小さく見える。こちらに気付いた。私のほうを二人が見ている。
「グゼちゃーん起きたの? 」
「あの人が異世界の人ですか、カミーアさん」
「うん? あぁそうだよ名前はグゼちゃんね」
何やら会話をしているが私の五感は冴えている。会話の内容は聞いたぞ! と思ったけど大した情報もなかったな。
近くにカミーアさんがいるから大丈夫だとは思うけど警戒するに越したことはない。
多分大丈夫。そう思い近付いていく。
それにしてもあの赤い塊、私の塊の数倍はある。結構前から転がしてたのか。やっぱり景観がよろしくないか。
今度からは機械の紹介のときには後片付けを直ぐにしよう。そう私が心に決めていると男が喋った。
「やぁ初めまして。僕の名前はシュライス。」
「あなたはグゼというのですね。」
この男はシュライスというらしい。初対面の印象はいいが、これからだな。
私が上から目線で評価を下す。
身長的には見下ろされているが。
こちらも礼儀に則り名乗ろうか。
「そう私はグゼですわ。貴方、私に何か用があって?」
変に見下そうとして言葉遣いがおかしくなってしまった。うーん。これからシュライスとかいう人の前ではこのキャラでいこうかな。
キャラ変しても無理してたのかと思われたら良くないしな。よし、カミーアさんにどう見られるか分からないけどそうしよう。
「グゼちゃん。ふふっ」
あ……カミーアさんに笑われた。
最近話してばっかだから心読めるの忘れてた。
…………あっ。もしやシュライスみたいな人にも心読まれてるんじゃないのか。もしそうだったら今までのこと全部聞かれてる?
すーハー。
そう落ち着くのだグゼ。
深呼吸。印象は最悪かもしれんがこれから取り戻せば良いのだ。
肝心なのは最後、終わり良ければ全て良しと言うしね。
よし、もう後戻りは出来ない!
「シュ、シュライスさん私失礼なこと言いましたわね。御免なさい。で、でで何か用があるのではなくって?」
「いやグゼさんには用は無いよ。この赤いのとカミーアさんに用があるんだ。ところでそんな動揺して何かあったの? 」
はっ。心は読まれていない!
勝ったな。風呂入ってくる。
第一人の心読むとかあり得ないよね。
プライバシーの侵害だよ。人間が人間たることを自覚するための根源。その自意識を他人が覗き見るなんて駄目だよね。
人間、知らなくても良いこととかあるし、悪いところが全くない人間とかいないしね。
そこら辺折り合いつけていくのも人間関係と言うものなのだよ。彼はそこら辺良識ある方なんですよね。
……あっ痛い。カミーアさん頬つねらないで。
べ、別にカミーアさんが良識ないとは言ってないよ。あくまでも良くないよね〜、くらいの話だよ。ほら、ねシュラインさん?
私がそんなことを言うと彼は。
「二人とも何の話してるの? 全然ついて行けないけど。……同意を問われても分からないよ。それに名前間違えてる。」
あれ、間違えてるっけ。シュライン……しゅ、あーシュライスね。思い出した。ヨシッ。
確かに心は読めていないようだな実は一連の行動はブラフだったんだよね。
うん、そういうことにしておこう。
あっ待ってカミーアさん。抱かないであっあー。力が強い。倉庫の方に運ばれている。
取り敢えず別れの挨拶でもしておくか。
「シュ、シュラインさんご機嫌ようですわ〜」
「えっあぁ。何? さ、さようなら〜? (名前また間違ってる……)」
――――――――――――――――――――――――――
グゼの部屋IN倉庫――
ギシギシ
「カ、カミーアさんやめて! 骨がやばい音立ててるって。えっそんな悪いことした⁉ 」
「グゼちゃん私のことあんな風に思ってたんだ。悲しいよ……」
だからってこんなに強く抱き締められると。
息が出来ない。肺が少ししか膨らまない。
生命の危機を感じる。
少し力が弱まった。喋れる。
「いや別にカミーアさんに言った訳じゃないから。それに骨が折れそうだから離して」
「嫌なので離さない」
「待って、落ち着いてそのままだと死ぬから」
ほっ。漸く離してくれた。数分間だったけど長かったな。危うく呼吸困難になるところだった。危ない危ない。
さてカミーアさんはなんでこんなことをしたんだろう?
「カミーアさん何でこんなことしたの? 」
「それはグゼちゃんが好きだから。嫌われてるのかなって思ったから。ちょっと昂ぶって」
まじか。カミーアさん私のこと好きだったのか。
まぁそれは一旦置いといて、理由がな、ちょっと昂ぶったら毎度押し潰されそうになるのはなー。あまりよろしくない気がする。
その内昂りすぎたら打ち上げられた深海魚みたいになってしまうかも。
うーん。体が痛む。
まぁ別に悪意は無さそうだし、責め立てるのは良くないな。
また嫌われたって思われたらっていうのもあるし。
「カミーアさんは悪気があってしたんじゃないんだよね? そうだったら次気をつけてくれたら良いから。 だからもう一度抱こうとするの止めよう」
「分かった。止めるよ。ごめんね感情的になっちゃって」
よし。ひとまずは危機を脱したぞ。
そう、別に謝ってくれたらいいんだよ。
ところであの男の人何だったんだろう。
赤いのとカミーアさんに用があるって言ってたけど、カミーアさんなんか放置してるけど良いのか?
おっとカミーアさんどうしたんですか。
はい。私を徐ろに持ち上げた。
余りにもゆっくりでどうしたのかと思ったよ。そのまま倉庫の外へ出る。
男の人の方へと向かっていきます。
……名前何だっけ。シュレ何とかさんだったよね。後半部分が思い出せない。
それはそれとしてカミーアさん喋る。
「遅れてすまなかった。ちょっと取り乱してしまって」
さっきも言ってたけどちゃんと自覚あるんだね。男の方は何やら赤い塊を見ている。
声に気づいたようでこちらに振り向いた。
「別に大丈夫ですよ。時間はたくさんありますし。それでこの塊どうするんですか?」
んー?この人、塊に用があるんじゃないのか。
「私は纏めてくれたら十分です。そこに置いといて下さい。後はグゼちゃんに聞いて」
「はい。グゼさんはどうしたいんですか?」
どうしたいもこうもないよ。
いきなり訊ねられても答えかねる。
てかこの男の人は結局、何用なんだ?
「あなたって何しに来たんですか?」
「この赤い物質の採取と掃除、カミーアさんに頼まれてきた。後色々研究するらしいから手伝って欲しいって言われたんだ。」
「そうだよ、グゼちゃん。後でこの人と一緒にお話しようね」
なるほど。周りを見ると赤いのが殆ど無くなっている。少し残っているのがおどろおどろしい雰囲気を醸し出している。まだ昼だが。
でも何故魔術を使わないのだろうか。
すぐ片付けられそうなものだけど。
さてお腹が減ってきたな。
「カミーアさんご飯いつ?」
「あーそうだったね。食べようか。じゃあシュライスさんも一緒にね。」
はっ。唐突に全てを思い出した!
昨日の晩御飯、あれだ。固形の美味しそうな見た目の味がやばいやつ。
「カミーアさん!今日は大丈夫なんですか!」
「どうだろう。今回のもまだ食べてないんだよね。まぁゲル状タイプだから大丈夫だと思うよ」
食べた。美味しかった。
見た目より味だね。