表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末魔術文明のグゼ  作者: 黒幕スライム(作者名に意味はない)
+→・
40/41

つみ



「やぁ……グゼちゃん!」


楽園のような景色に異質な赤が佇んでいる。もちろん私はこの人を知っている。だが何故ここに居るのだろうか……


「此処は……いや全ての世界の真理か。此処と全ての世界は同一であるし、別にグゼちゃん以外がこの世界に侵入できない訳では無い」 


えっ!……そうなんだ。

まじかよ知らなかったわ。

世界の原因たる私が知らないことを何故カミーアが知っているのだろうか。嘘でもついているのか? そうは見えないが……


「私はグゼちゃんが無駄に格好付けて消えた様子を見て其れに気付いた」


見ただけで気づけるようなものだろうか。其れにいつものカミーアさんの口調と違う気もする?

彼女は話し続けた。


「そして……私は外側の世界を見た。其処を経由しここに来た。貴方は当然知っているだろうけどねぇ……」


そう言ったカミーアが此方に振り向く。

彼女の顔は見たことが無いほどに肯定的な表情に歪んでいた。顔をよくよく見れば私を見ていないことに気付いた。目線が合わないのだ。

気になり私は後ろを見た。目線の先を追って。


「どうしたの?」


其処にはいつの間にか物語を語るのを止めていたマリーがいた。まぁ当然だな。後ろからマリーが着いてきていたしな。博士がいないのがおかしいのだ。カミーアが博士に変装でもしていたのだろうか。考えても意味は無い……そも、今では分からないか。


「あ!」


そうカミーアが呟いた。

すると美しき情景は昼間に雨が降ったような景色に変わった。雨粒が草については跳ねる。

更に周りは霞みだす。

白んだとも。


「グゼちゃんは其処にいて!」


 ……結局カミーアさんは何がしたかったのだろう。私を愛しているのか……それとも物として見ているのだろうか。ふいにまともな素振りを見せたかと思えば突如非人道的な行為を行う。

其れは……私の予想でしか無いが私を人として見ているときと物として見ているかの違いだと思う。


だが其れはそれで良い。

普遍な愛には飽きてしまった。もちろん醜い愛にも歪んだ愛にも飽きている。

だからこそ私はまともでいて異常な愛を望もう。はっきりとした形を持ち私にはその形が見えなく異形であるもの。誰しもが憧れ理想の中にのみ叶えた何か。


 私は罪を精算し悪しきを殺した。それは許しであり忘却であるが一種の諦めだ。我らは何時までもまともな儘でしかいられないのだ。決しておかしくはなれない。だからこそ私達は正しさの中に異端を求め、嫌い、迫害し侮辱した。

 

 連綿と紡がれる生命の流れに有るものは必ず生きる術を知り死んでゆくものだ。故に原始の生命は源流として死に絶え生きることは出来なかった。


 私は…………生まれたときから死んでいた。


「カミーア!マリー!グゼはァッ!」



私は裂けた。

途端に十字で淡緑の光が閃く。私は思考停止出来なかった。だから……世界は銀色になった。床も天井も壁もない。銀色の空間。光ってなどいないただ銀色である。


カミーアとマリーは何事も無かったかのように平然としていた。カミーアは右手を振り上げ紅い液体で不思議な模様を瞬時に描いた。魔法陣とでも言えば良いのだろうか。それは幾重にも重なり合い廻転する。大きさは分からなかった。見つめれば大きくも小さくも見えた。


じっと見れば小さくなんとなく見れば大きく。

それは廻転し、分かたれ、この世のものでは有り得ないくらい紅く染まる。


一方マリーは不敵な笑みを浮かべていた。というかよくよく見ると…………いや私がマリーだった頃を思い出して考えると格好いいものに興奮しているだけなのかもしれない。


私は爆発し死んだ。衝撃波によって吹き飛ばされたように。散った肉片を集めることなく瞬時に私は形状を復元した。非効率な眼球で原因を探す。…………名無しのかと思ったのだが……どうやら自分がやってしまったようだ。


私は得も言われぬ自身の出力を制御することが出来ないらしい。一度足を踏み出せば何故かは預かり知らぬが自身の体が吹き飛ぶ。


3度目で分かった。腕を組む程度なら大丈夫らしく私は魔法陣を眺め続けた。何かが次元を跨いで描かれ全ての情報を説明している。つまり認識出来ない。之を題材に文章を書くことになれば実に曖昧な言葉を多用する羽目になるだろうには何ともいえない見た目をしている。


魔法陣からか細い光条が幾千も放たれた。目を瞑るには暗く目を見開くには眩しすぎた。

因みに私の目は十字に裂けているが別に痛くもないし視界は広い。私の目の形に意味は無い。


 多分だけどただ単にそう云う物なのだろう。私は何もすることが出来ずに光景を感光板に宿した。魔法陣は放った光条を収束させ燦めく光線を創り出した。それは銀色の世界を青一色に変えた。


 青の世界は世界を白く澱ませて景色を秘匿された惑星に変えた。名前をカーオスとでも言ったかな。次第に見た目だけでなく情報すらも変化した。模倣品の惑星は青色の天を戴きバラバラになって行く。その青は空色よりは濃く紺よりは淡い色。青色だッ!……


 まぁ惑星がバラバラになるのもしょうがない。ここに居る人物は漏れなく理外の存在と化しているからな。正直見た目は重要でない。

 

 個人的に私は見た目が嫌いだ。記憶の中で散々見た目で損したからな。歩くゴミに纏わりつかれるのは……なんというか……まぁいいや。本題から話が逸れ過ぎて収拾がつかないしな。


 バラバラになったこの星の地面は……なんかフワーッて浮いている。浮島といえば納得し易いだろうか。うーん……そこまででは無いか。


 少し地面が罅割れて星が揺れている。

やや空にマントルが漂っているが……光っていているなー、くらいしか感想が浮かばない。そんな感じ?


「そう云えば……」



 私は世界の様相が大分変わったので今は普通に歩けると思い、試しに足を踏み出した。すると……おや……駄目だったらしい。私の体が爆発四散した。


 はぁ……イケると思ったんだけどなー。仕方無いので爆発しながら歩くことにした。爆風で体が吹き飛びまともに動けないよぉ。どうしようか……。


適当に足を振る。体が更に吹き飛ぶ。再生した自身の血肉が散らばる。吹き飛び治り散らばる。何度も無為に繰り返した。


 とても痛い。



 おぉ?…………前が見えない。随分血肉をばら撒いてしまったようだ。其れに空中に浮いている気がする。幾ら何でも吹き飛び過ぎたな。


 ほらそのお陰でさ、上を見上げれば満天の星があんなにも近くにあ……あ…………!?


 星!?



 いつの間に青一色の天空は暗黒とその中に煌めく点に移り変わっていた。



 詩的な表現が思い付かない。やはり私に文芸の才は無かったのか……。そんなことを思い浮かべて地面に叩きつけられようと重力にひかれ体が落ちて行く。

 

 地面が刻々と迫る。

 風が翻り身体を煽る。

 しかし体は落ち続けもうすぐそこに地面がある。

 私と地面の距離は私の額から私の腕一本程。

 そこで足を振り落下エネルギーと体が弾けるエネルギーを合わせる!


 見事、合わさったエネルギーが…………私の身体を静止させる!



 私は華麗に着地した。

 服装も相俟って決めポーズを取る。

 多分グゼとしての人生で今が一番カッコイイな。私はそう確信する。何故ならもうすぐ死にそうだからな。


 空に燦く魔法陣だけが光り周囲は影が落とされたかのように暗くなる。その中心にはカミーアと私、マリーがいる。


 私の頭上にある魔法陣は巨大な槍のような光線を空に打ち上げた。たちまち世界は光に悉く包まれ照らされる。そして私はズタボロになって行く。


 いや…………私ではなく(マリー)が。


 終局。

 世界は瞬間、闇に。

 ひたすらに黒く濁り空は泥濘よりも薄汚い見た目となる。それは……見た目だけが変わっている。実際には星は何処かに今まで通りにある。


 闇の中に閃光が瞬き世界は……光は熔けた飴みたいに崩れる。私はこの光景をいやと云う程に知っている。だからこそただの一人間でしかないカミーアがこの事象を引き起こしていることに驚愕している。


 私は溶け合う。


 まだ終末時計は零時五十五分だ。明日までにはかなりの猶予がある。私は記憶世界を自身に統合する。


 …………これでいい。私は……私は結局一人だけだから。

評価、ブックマークなどしてくださると嬉しいですのでこの作品を面白いと思えたら是非。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ