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終末魔術文明のグゼ  作者: 黒幕スライム(作者名に意味はない)
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二面相

 

……いつまで彼等は黙り続けるのだろうか。


あいも変わらず彼等は茫然自失としている。

勿論私には気づいていない様子だ。

…………

……


流石に長すぎないか……暇だな。


そう言えば私の顔とマリーの顔は当たり前ではあるが全く一緒なんだよな。現実では紛うことなき同一人物だからマリーを知る人物に顔を見られたら面倒なことになるかも知れない。別にバレてもいいが……バレないほうが培養槽を開けてもらうには早いかな。無駄な話し合いはしたくないのだ。

……なら仮面でもつけるか。

デザインは顔さえ隠せて目が見えればいい。世界の情報を捏造して板を創って……丸い板に穴をつけて……ウーン。いいんじゃないのか。黒いけど色は何色でもいいし。


試しに顔に当ててみると視界も良好だ。


これをしっかりお顔に付けて……落ちるな。

至極普遍な事実だったな。ものは安定するまで落ち続けるんだよな。忘れていた。固定しないといけないな。

情報を書き換えて仮面に穴を二つ新規に開ける。紐を出して……顔の後ろで結んで……と。

落ちないかな……不安定だけど大丈夫か?

少し跳ねる。落ちないか……なら大丈夫だな。


仮面を付けるときに見た手……指紋が私の手は無いからふとした弾みで正体がバレるやも。手袋もつけておこう。 

格好いい手袋の付け方ってあるよね。

こう……軽く嵌めて裾を掴んで一気に引っ張る!

誰も見てないけど決まったわ。


あら……仮面がズレてる。


紐をつけて顔の後ろで結び安定しなかったので沢山つける。折角なので可愛くリボンでもつけてしまおう。歩くと頭の後ろと首がフワフワして気に入らないが逆に新鮮味があって良い?




そう……私の見た目はどんな風になったのだろうか。

鏡を出して覗き込む。

 

…………どうしたものか!

私は変な人ではないか。

でもシルエットが特に格好いい。だが……なぁ。


いや、私の正体にはこちらの方が明かされにくいのではと思いこのまま行くことにする。マリーと今の私の見た目は全然違うし印象だけでバレることは無いだろう。


今の姿は威圧感が普段よりはあるし考えなしでも交渉出来るだろう………………いや出来るか??

でも交渉の要領なんか無い……いやでもなぁ。

礼儀とか、習慣が違うから異世界で身につけた能力なんて異世界では役に立たないのだよね。

記憶からの技術を扱おうと思ったけれど私が知っている交渉術は少ない。


刃物を差し向け合う世界と目玉を地面に描いて穴を掘る世界とかの交渉術しか知らない。

刃物も無いし、ペンもない。

創ればいいか。

刃渡りが肩から手首までの刃物とインクが出るペン。


いざとなったら之らを使おう。


そう思い彼らに近づき話しかける。

まだ黙っている。私には一瞥もない。鈍感すぎないか?



「こんにちは……」


名乗るか……会話もしやすくなるだろう


「私は……カンゼ。培養槽を開封してもらえますか?」


偽名は思いつきでつけた。意味は特に無い。私にしては良い名前何じゃないかな。記憶を取り戻したことでネーミングセンスが極大化しているのか?


其れとは別に博士たちは私の要求に答えてくれるだろうか。

博士は人類を裏切るなんて言っていたし人類の希望みたいなマリーをどうにかさせてくれないかな。でも職員の人は其れを聞いて黙りこくっているから抵抗されるかも知れない。

まぁ……場当たり的にどうにかするしかない。まともな情報の一つもなく、マリーを起こすことすらままならないのだから。


できるだけ早く全ての私を破滅させたい。

今も自我が薄まっていて世界が形而的にぼやけて見えだした。例えるなら水という言葉の意味が徐々に曖昧になっていくような風に。


早くしないと……


「カンゼ様、儂はご存知だとは思うが特殊研究開発部門統括責任者ラインラートル・スペルクリア・パースディです。さて……培養槽を開封ですか……不躾ですが執行書を見せてもらえますかな?幾らSI(エスアイ)の方といえど否応なしに部門に執行は出来ないはずですから」


………………。…………!

詰んだ。

諦めるには早いが詰んだと思う。

まともな交渉術がない以上無理だ。

刃物もペンも相手がそうしなかった以上お荷物でしかないし、それは同時に私の交渉術が確実に通用しないと教えてくれる。


SIの意味も知らないし、この世界の事情が全く分からない。

うぅ、どうしよう!

あぁ、ヤバい。あー。あう〜。

世界の真理を垣間見た気がする。いや……別に知ってるわ。私の大元何なんだよ。本当に頭おかしすぎるだろ。

常識的に考えて自分の知っている物は全て自分同然だとか考えないだろ。其処に魔力なんて物が加わって本当にそうなるんだから我ながらいい加減にして欲しい。最終的に……どうするんだろ。自分の事の筈なのに目的が不可解すぎる。

考えても分からない。壊れた機械の欲求は異次元だなぁ。


ふぅ~。あ〜〜。


悪口ってスゲー……仄かに光る蛍を握り潰したくらいスッキリしたわ。……自分でも例えの意味が分からぬ。まぁ、兎に角セイセイしたわ。


まぁ、現実は変わらないんだけどね。

どうしよう……


多分私今物凄くポカンとした顔してるんだろうな。開いた口が塞がらないし目が動かないのに加えて見開いている。

仮面付けてて良かったわ。こんな顔は人に見せられない。交渉も不利になるやもしれぬしな。


目?……私って目は相手から見えるんだよな。

私の目は虹彩がなくて瞳孔が十字に裂けていて若葉色なんだよな。

今まで会ってきた人の中で虹彩がなくて瞳孔が十字に裂けていた人は天使だけど、ルシフェルしかいないんだよな。


マリーは目に虹彩がなくて瞳孔が十字に裂けている。


……あれ、正体明かされるのでは?


更に髪も丸出しだよな。

勿論同一人物のマリーと私は髪型、髪色が同じなわけだ。


増々危ないな。

かと言って此処で不自然に其れ等を隠しても余計に勘付かれかねないので自然に振る舞おう。

別に私が会った人がたまたま目が裂けていないだけで普通にそう云う人はいるのかも知れないしな。

焦るのは尚早だろう?

きっと大丈夫さ!

こういう時は諦めて割り切って行動しなければならない。記憶を参考にすると変に熟考しても結果は大抵の場合変わらなかった。

それなら……諦めて返事をしようぜ。


でも最低限会話は成り立たせないといけない。

その点において博士の言動を考察しないとならぬ。幸い、この世界における私の思考時間は幾らでもある。


其れを踏まえて考えてみよう。体裁だけ整えればいい。深く考えなくても良い。


後は記憶世界の基本事項でも確認しておこうか……。

先ず、現実と性質は殆ど変らない。殆どに含まれぬのは私の思考時間と私の本来の能力だな。

本当の世界だったらもう、私は凄いよ。

漫画だったら一話で世界の謎とかラスボス全部解決出来るくらいの能力があるからね。

肝心のラスボスが私の本体疑惑があるのは内緒だ。

実は普通に生きている説がある。



今では能力はほぼ扱えない……というか私の精神性の根源に本体がいるから妨害されてるんだよね。だって本体は自分の歴史を壊されると幸せへの道のりが無くなるからね。

私としては迅速な対応をしたがったのだけどね。

本体からすれば装飾品みたいな私の自我では本体に抗えない。だが本体と私はイコールではあるので能力や記憶は覗き込める。

サイコロでスタート地点からゴールまで駒を進めていたら突然駒が反旗を翻すような感じだ。


駒は本体でもあるけど貼り付けられた自我が本体とは違うから微妙に複雑なことになっている。

そう……TRPGのプレイヤーキャラクターは操作とかの意思決定にはゲームプレイヤーが必要だけどイベントがあればシナリオ通りに進行するだろう?

あれと同じようなものだ。

違うところはあるが一番近いと思う。


この世界は本体の記憶から形づくられているから完璧だ。本体が世界そのものでもあるから理論上はコピーを作っているのと変わりないことだ。


平行世界では無い。れっきとした異界である。











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