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終末魔術文明のグゼ  作者: 黒幕スライム(作者名に意味はない)
異なる世界 異なる法則
32/41

嗚呼、現実よ無常なれ。されど神秘だけは殘酷に!



兵器からの爆音が空間を伝って鳴り響く。時空間は歪み世界の法則はボロボロに崩れていく。

そうまでしてやっと斃れた天使の怪物。

斃れた死体から色彩豊かな肉の煙幕が拡がりゆくにつれ煙幕から続々と怪物が溢れ出しこの世界を埋め尽くす。


バタバタ バタバタ バサバサ


人を御伽噺のドラゴンのように弄び悲痛を叫び戦場に散る。生きることすら赦されざる天使は命令に従いゴミを啄む。


生物としての矜持か仕組みか……智慧の終着点へ達した人々は本来の世界であるならば無敵の兵器を怪物に向ける。ただ死にたくない一心や親愛な者のために。


「どうなってやがる! 不死身の怪物め!」


嗚呼、空虚な世界の一部が夷狄に差し向けられる。敵は呆気なく散り、死体からは無数の怪物が翔び立つ。複雑怪奇、緻密な兵器は無知の怪物の暴力に蹴散らされる。彼は死んだ。


終末文明。その世界において可能な全ての可能性を確認し実行した知性体の集合体。

だが所詮はその程度なので運命には抗えない。因果を操作出来ても世界を再構成、創造出来るとしても意味を為さない。何もかも分からない故、何も出来ない。解らないと意味は無い。

偶発的な奇跡が全てを解決するなんて有り得ない。もし、もしも出来たとしても更なる洗礼が下されるのみで……如何とも出来ない。




その原因は神と愚別されたあらゆる世界にて抹殺を行う無法にある。


神にとってこの世界は美術品としての失敗作にしか過ぎない。例えるならキャンバスに垂らした絵の具が滲み過ぎた為に描き直すかのように世界を漂白するだけ。完全無欠な世界を作りたいだけ。

そんな神は何処から生れ落ちたのか。


知性体の願いと好奇心だ。

世界の外側には何があるのか?

この世界はシミュレーションなのか?

自らの起源は一体?

本当に終着点はあるのか?


そんな願いと欲求が本来はありもしない怪物を創り出したらしい。

つまり自業自得である。


彼らが如何せんとすれども彼らの願いを叶える神様はそれを完璧に遂行する。彼らが今迄頑張ってきたご褒美でもある。神罰と神の恩寵は与えられる物が異なるだけで神からの贈り物(ギフト)であることに差異はない。

素晴らしきかな神。



漂白された世界で殘酷に命は安定していく。時には灰燼へ、肉塊、エネルギーそのもの様々な形へ移ろう。キャンバスは綺麗に整列していた方が都合が良い。どんな物を神が描きたいかによって世界の滅び方は変わる。



今滅んだ……この世界では滅亡の始まりに弱々しい、あまりに貧弱な天使が現れた。それはこの世界の住人にとって大変可愛らしく庇護愛を加速させたものだった。なり損ないでは無い正真正銘の天使である。故に天の無慈悲な執行者そのものだ。

 

天使は体積を膨らませある日宇宙の中心、彼らの文明の中心地で融けた。

 

どろどろにカラフルな死体が拡散して涙が枯れる。人々は元に戻そうと愚かに近くに側に寄り添った。天使は彼らに告げた


「あぁ、現実が、現実が私を許さないの。少しだけ楽になっても……」


液状の幻から怪物が翔び立つ。


ありもしない音を立てて翼をバサバサと。 

人々にとっては其れ等すらも赤子同然である。

襲われたとしても敵ではない。


ふと、誰かが弾みに彼らの内の一匹を殺してしまった。怪物は死んだ。


死体からは極彩色の煙幕が拡がる。


中はみえない。謎だ。

包み隠された正体に好奇心を人々は無意識に抱いた。


「何があるのだろう?」



そう誰かが呟いた一言が終わりの始まりだった。



突如として煙幕から巨大な銀河よりも大きい目が現れた。現実では有り得ない巨大さ(サイズ)。されどそこに然とある、


「不思議だ。」


彼らの内の誰かがそう呟いた。

確かに不思議ではある。だが少し考えればわかったのでは無いか。見えるから何だと言うのだ。彼は無視するべきだった。死にたくないなら。



赤いその瞳は十字に裂けていた。

巨大な蛇は身体を縮め世界に降り立つ。

本命は絵の具が飛び散るのを未然に防ぐだけであるが、彼らの運は悪かった。

このときの蛇は仕事に一工夫を入れていた。


毒。世界に毒を巡らせる。

ゆっくりと着実に効いていく毒。

世界の法則は捻じ曲げられ追加され彼らが知覚する間もなく世界は終わっていく。


だが流石というべきか彼らは世界を復旧しだした。彼らは気付いてはいないが奇跡的に世界の傷は治すことができた。

だが対処療法では今回は意味を為さない。


世界の法則は不可思議になる。星は纏まりを失くし光は鈍く遅くなり極度に安定した空間はオーバフローを初める。

原初の宇宙に近づくにつれて歴史に空いた穴を埋めるように世界が神秘で満たされていく。


其れは天使の死体によって成される。

魔力、魔なる力。世界を滅ぼす悪魔()の力。根源は不明。人々の願いともはたまた…………誰も知る由は無い。

とにかく人々は世界が突如として知らないものになった原因を探し、其れを天使にあると見た。悲しきかな、天使は放っておけば勝手に死ぬのだ。

自らの世界が自らの世界の法則で容赦なく破壊される点に目を瞑れば。勿論彼らは一人残らず死ぬ。

だがこの世界の基盤と法則は守られたまま。そうすればもう一度生命が発生できる。

今回は別物へと変わるせいで無理なのだが。

まぁどちらにせよ彼らの運が悪かったとしか言いようがない。


人々は一人残らずあっさりと滅んだ。

天使が現れてから実に長くも短い三分間であった。

実際の時間は圧縮されていて悠久とも言えるが

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