要するにつまらぬゲーム
はいセーフ!
天は開かれ、天高く聳えていた樹々は恵み撃つ大森林なる名の由来か爆発性の果実を地面に降らしている。地面は抉れ落ち葉は吹き飛ぶ。
それはこの"とりさん"に対する防衛反応か、もしくは死に際を悟った彼らが次世代を生み出そうとしているのか。
私は先程までの光景がまるで戦場に変わってしまったので大変驚いている。
アレは戦闘機もかくやな動きを繰り広げ樹々を翼の一振りで薙ぎ倒し、大地に突き刺さったかと思えば地上には地中の虫の死骸が地面から吹き出してくる。
木の中の虫も、天高く飛ぶ虫も、地を這う虫も何もかも全てが圧倒的な強者に嫐られる。
ある意味平等なユートピア。冗談にすらならない。リセットボタンを押したセーブファイルみたいに何もかもが消えていく。
「っ………………」
爆発が周囲で起こり対象的な甲高い"とりさん"の鳴き声がチュンチュンと聞こえる。
見た目は小鳥で鳴き声も見た目通りなのだが肝心の挙動は…………殺戮兵器さながらである。
どうしたらいい!
このゲームは節足動物オンラインでもあるが色んなゲームの複合体でもある。
なのでね…………。
別に他のゲームをすれば良い。
レベリングをしても全てがあんな風に水泡に帰してしまうのなら…………しない方がマシだ。
こんな…………クソゲー。
……クソゲー、やめられない。
つまらないのに、何の意義も無いのに!
遥か高みの強敵に挑まずにはいられない!
無謀な、空虚な戦いに身を投じずにはいられないのだ!
心高鳴る。心が跳ねて踊りだしそうな高揚感。
それだけで無為に戦いを挑むに足る理由になる。
クソゲーがなんたるかを私は知らない。
だって記憶喪失なんだから!
だが…………勝算が見当たらない。
火力、速度、大きさ全てにおいて確実に負けている。攻撃で倒すのは不可能。先ず攻撃が当たらない。
今も周りが消し飛んでいる中でいつ私が死ぬか……考える時間はあまり無い。
どうする!
?
何か……何か無いのか。
物語で有りがちな突然打開策を思い付くみたいな……秘策は!
ポンと果実がお隣で弾けた。
「ぶべらぉあ」
(GAME OVER)
…………クソゲー。
その一言に尽き……尽き。
まだだ、もう一度会いたい。
勝ちたい。不可能を突き付けられるほどに破りたくなる。そもそもリスポーンしても声帯獲得しかしてないし、全然大丈夫だよね。
もう一度行くか。
リスポーン〜ん……。
(只今大変混み合っております。時間を置いてからリスポーンして下さい。)
ん〜!
んっ!んむ!ん〜〜〜〜!
んh。
んんンンン?!
んんん〜ぅ。ンう。
!!!!!!
ん!
んんンンン(ログアウト出来ない)
んん!(やばいよ!)
んんんーンンン(デスゲームでも始まるの?)
んんんんんん(全部自分の独白ね)
んぅ。
んうやく、んおったか。
ん通にんとばんゃべれるようにんったわ。
ん!
んゃべれてないじゃん。
人格分裂気味。
大丈夫か?
全然OKよ!
てか入れないけどどうすんの?
死ね!死ね!しね!死ね!いね!
は?
待て……ひと呼吸おいて…………。
す~、はー。
ふぅ~。
落ち着け、落ち着けよ。
私はグゼ。只の……人間?
何なんだ、私は。
頭が痛い。
というか、ログアウト出来ないしどうしよう。
ゲーム遊ぶのに機器がいらない分強制ログアウト出来ないし……無駄に高性能なのがなぁ。
パーソナルスペースとやらで永遠に幽閉させられそう。
面倒なので本領発揮するか……先ずは文字を書き換えて、現実を曖昧に…………これも面倒なのでログアウトした構築だけ用意しよう。
ソレなら構築に必要な……要らないか。
ん、終わったし後は記憶を消して……と。
それなら……いやまだ早過ぎるか。
「あれ!ログアウト出来てる!やった?」
幽閉させられそうなんて杞憂だったらしい。
やったぜ!
辺りはログインしたときの場所だ。ルシフェルはまだゲームをしている。
化け物なんでゲームしながら仕事して、別のゲームして、仕事して、友達と喋ってとか云うのを延々と繰り返しているらしい。
なんで別のルシフェルが横からやって来た。意味が分からん。
「やぁ!"とりさん"の恐ろしさは分かった?
正直正規の方法では絶対に倒せないから挑むだけムダだね。あれ、鳥の見た目してるだけの運営だからね。盤外戦術使うしかないよ。その運営私の部下なんだけどさ! 今から殺しに行く?」
そうなんだ~。
頭イカれすぎだろ。普通はそんな理由で殺しには行かないだろ。しかも自分の部下なのにあっさり殺しに行くのは更にやばいよ。情の一つも持ち合わせてない?常識違いすぎだよ……。
本気でルシフェルは天使なのか?
仲間の死体から出て来る奴等だったらそうでもおかしく無い……のか?
何も分からない。
都合よく記憶思い出さないかなー。
……さすがに無理か。
「いや、もうあのゲームは飽きたからいいよ。其れより帰るね」
「!? 本気で言ってるの! まだ此処に来てから三十四分と約五十二秒しか経ってないのに!まだ遊ぼうよおー。」
「いや。帰るわ!」
「其処をなんとか〜。」
「えー。帰るね。私。バイバーイ! お元気で」
「ウッソだろ。バイバーイ!また遊ぼうね」
パチンッ
小型転送装置を起動。
世界がグニャリと歪曲し遷ろう。
あの言動やはり天使か。
破茶滅茶に聞こえる文脈がない表現。
理由なき考察。
妄想の類。
だが別に想ってもいいではないか。
理由なんて要らないから。
思うだけで心を満たせるなら。
生きても生きても意味は無い故に時として理論は無視されるべきだ。
さてと、帰ってもすることが無いな。
私は倉庫の自室に今いるのだが




