表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末魔術文明のグゼ  作者: 黒幕スライム(作者名に意味はない)
異なる世界 異なる法則
21/41

限りない愛を貴方に!(1)



私は二人の下へと走り出した。

もう、大丈夫だ。今ならどんなことも受けいられるような気がする。総てを自身が創り出したが故に満足していないと駄目なような。何も思えない生きることしか出来ない低次な生命のような。

だけど私は自身の正体は受け容れられない。

私は私が作ったのではないのだし、私は残念で残酷ながらに考えている。


 衝撃波、液体それらが混じり合うところへと向かう私は思った。この追いかけっこは増え鬼なのだと。なら、カミーアさんが私を捕まえなかった理由が説明出来る。納得も出来る。なので私は名無しのを捕まえに行く。

だが私は衝撃波に耐えたり、高速で瞬間移動しているようにしか見えない液体を避けることは出来ない。だから、寄るだけ寄ってカミーアさんがどうにかしてくれるのを待つ。

 自分が作った機械に言うのも何だが、被造物が創造主を超えたら創造主としては嬉しいよ。

 でもなー、実際は私の方が遥か格上なんだよね! だって私はしようと思えば名無しのより強い機械も作れるし、頭の良い機械も作れるしね。 


だがこの場では私は直ぐに機械を作れないから、限定的には名無しのは私を上回るのだ!

 創造主として嬉しい。

 だからね、私は此の場では名無しのに劣っているので精一杯カミーアさんを応援することが正解だ。カミーアサンガンバレー。

 其れでも依然として私の方が上なんだな。これが。まぁ、役割分担、分業、効率化、合理化、なんとでも言えるが部を弁えて行動するのはいい事だ。今はこうしているのが良い。

其れは……足手纏とか邪魔者なんて言葉が有るのが全てを表している。無能で溌剌な味方は時と場合により最悪の敵となる。生物は限りある価値を消費して生きていける。だから基本的には怠惰なのだから、狩りも光合成も出来ないゴミクズが葉を茂らせようと、獲物を探そうと自殺行為にしかならざるをえない。 

 そんな中でも禁忌の果実を得て価値をより消費する風になれど、其れに気付けなくては意味がない。幾ら無能が頭を悩ますとしても、無駄な事だ。別の個体に頭脳を委ねた方が良いし、頭脳の事が理解出来ないなら獣になれば良い。其れすらも不可なら何もしないでいれば良い。

 端的にいうと、出来ない事はどう頑張っても可能にはならないので大人しく諦めようと。


 えー、だからね私は自分に出来ることをすべきで土を捏ねて遊んでもいいのだ。

 土は思ったより軟い、かなり基礎を作らなくては高く盛れない。しかも深いほどに硬くなる。

素手で掘るのは、露出させた自身の骨で削って二メートルが限界かな。硬い土を掘れど、掘れたら掘れたで軟くなってしまう。無茶苦茶痛いかったのでとても残念ですわ。

 

 三時間後くらいに私が土で駆け上がれるくらいの角度の壁で家を作り終わった頃に戦闘と言ったほうが正常な追いかけっこが終わりだした。

 此処は活躍したいね。最後の最後で見せ場は作っておかないと。

私は恐らく名無しのが入っているだろう紅い液体に手を突っ込む。漁夫の利だ! 但し雰囲気で使っているので用法は守っていないものとする。手を深く刺すと。

来た! 当たった。 粘度が高い液体如き土を掘り続けた私にとっては障害にはならない。



「はい、タッチ!」


名無しのの硬いフレームが指先に触れる。

これで追いかけっこも終わりか……終わってみると哀しいものだな。

手が抜けないな。いや……本気を出さないといけないとかではなくて、物理的に抜けない。


グギギギぁ


強く引いた指先から吸盤を剥がそうとしたみたいな感触と痛みとはいえないが痒いともいえない刺激が伴う。強く、強く引くほどに刺激は増していき、指先が抓られたような感じになっていく。痛くは無いけど……なんか、うーん。

取り敢えず、カミーアさんに私が捕まえたことを報告しておこう。後この液体カミーアさんが操っているのだろうから、私の手が取れるように頼もうか。私は首をひねってカミーアの方を見た。


「カミーアさん、私が捕まえました! これは私の勝ちですね。ね! ところでこの液体のせいで手を抜こうとしたら指が取れそうなんですけど」


 段々私の指にかかる力が強くなってきてる。骨折れそう。……痛ッッッた! 

やばいよ、ちょっと手を抜こうとしたら今迄感じたことがない痛みが来た。

カミーアさん早く取ってくれ……。死にそう。

カミーアは此方を向いて固く握っていた少しだけ開いた。あーー! 少し力が緩くなった。

成る程そういうことだったのね。

カミーアさん本当に最……。あぶねー。セーフ。

カミーアさんがきつく手を握る。


「そうだね、グゼちゃん。治るんだし、取ればいいじゃん。私が取ってあげるよ」


カミーアはそう言って、私の腕を両手で掴んで無理矢理引き千切ろうとしてくる。普通にあり得んくらい痛い。叫び声が出ない。

というか、カミーアさんが行う行動に道徳心の欠片も無いけど頭大丈夫なのか? そもそもカミーアさんがどうせ液体操作してるのだろうし。酷くね。液体操作して剥がせばいいじゃん。もう手と腕が筋繊維でしか繋がってないんだけど。手先の感覚も無くなってきたし。

 

カミーアさんがもっと力強く私の腕を引っ張る。この期に及んで心読んでないとかあり得る? 大根収穫するときみたいに腕を引っ張るのは人に対して失礼だと思う。だからね、止めて。もう泣きそう。衝撃波でバラバラになるときは一瞬だから少しだけ、とても痛いけど少しだけなら耐えれた。でもその痛みがずっと続いたら耐えられないいぃッ。



「や、止めて! ゆっくり取るから。ふんっ!ふんっ! ……取れない」


 やばい。取れた。

 手だけね。しかも体内に傷口からなんか入ってくる。ギュルギュルって血管やら筋肉の間とか骨髄に入ってきたような。実際どうかは分からないけど不快感が凄いなって、気持ち悪いし、痛すぎて泣いた。涙で前が見えない。

カミーアさん人で無しだろ。もう。本当に最低だ!

 

うぅ。痛いよー、ひぃっ。あっあっ。


カミーアさんが喋った。


「おやごめんね、名無しの。ほら」


名無しのより私だろ。いや、でもこれの中の名無しのはもっと辛い思いしてるのかな。そうだったら、まあ……いいか?

液体が地面に広がり消える。


 そのせいで取れた手がボロンって落ちた。拾ってくっつける。なんか違和感あるけどいいや。

ふぅ、死んだかと思ったわ。

中から出てきた名無しのが言う。


「グゼ様は私の知らないこと知ってますか?!」


 怖いから話しかけないでくれ。後で教えるからいいけど今は何か……怖い。でも、名無しのが辛い思いしてるのかなって思ったら怖いなんて言われたら傷ついちゃうかも。


「げっ。怖いからちょっと離れてて」


 ちょっと引いたみたいにしたら、私の有様も勘づいてくれるのではといった気持ちと距離を離してくれという言葉なら傷付かないと思ったんだけど。普通に怖いって言っちゃったし、名無しの落ち込んでる。失敗だ。今は誰とも話さないようにしたほうがいいかな。



ところでカミーアさん最低すぎないか?


「ねぇ!何であんなことしたの?死んだかと思ったよ」


「あー、何度も衝撃波で無惨な姿になっても平気そうだったから、行けるかなってさ! 思ったんだよね。其れに泣いてる顔もすごく良いよね」


酷すぎないか。私も衝撃波を何度もくらった。それでも名無しのを追いかけていたけど、それにしたって別に全く気にしてない訳では無いし。普通に痛かった。

 更に人が泣いてる顔を見て良いよねなんて言って人間性を疑う発言なんだが。


「何でそんなことを言うの? 人の心が読めるなら心情くらいは分かるんじゃないの!」


「分かるけど……。やばいと思ったけど欲望を抑えられなかった」


「そんなの意味わかんないよ。どうしたらいいの。いや、罪悪は裁かなくちゃいけないんじゃないの?」


「じゃあ、裁判する?」


 そんなあっさりと言われても……。

別に裁くけどさぁ。名無しのに裁判員をしてもらおうかな……。何か追いかけっこしてただけなのに後味悪いなぁ。ハァ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ