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終末魔術文明のグゼ  作者: 黒幕スライム(作者名に意味はない)
異なる世界 異なる法則
19/41

機械視点1

 

私の名前は名無しの。

グゼ様が制作した機械だ。

名前は名無しのだが名無しではない。重ねて言うが名無しのというれっきとした名前がある。


私は普段はグゼ様の側にいる。

グゼ様は私を作った偉大な人で凄いのだ。私はグゼ様に少しでも近づく為にお側で日々の所作を観察している。見る限りはあまり特筆すべきことはないが、心の底から凄いと思う。理由は自分でもよく分からないが……とにかく凄いのだ。すごい!


 そして今日はグゼ様とその友人?のカミーアと追いかけっこをすることになった。初めてだが上手くやれるだろうか。


追いかけっこのルールを確認すると、地域や派生によって種々様々なルールがあるらしい。 

一口に追いかけっこと言ってもそういう風なのは驚いた。

 

 そして今回の追いかけっこのルールは逃走者に鬼、追いかける側が触れると逃走者は追いかける側になり、触れた追いかける側は増えた追いかける側と一緒に逃走者を追いかける、といったものだ。増え鬼や増やし鬼、子増やし鬼などとも言われるそうだ。


最初はグゼ様が鬼ということになったので、私かカミーアが途中から鬼になるだろう。

 カミーアは瞬間移動をしたり手を振る所作が目で追えないほどに速いので、恐らくは最初に追いかける側になるのはそれより遅い私だろうな。

 諦める訳では無いので精一杯頑張るが正直、私が追いかける側になったとしてもカミーアを捕まえられる気がしない。どれだけ走行速度が速くともアレに追いつくのは無理だ。

 

でもグゼ様なら追いつけるに違いない。

私が石ころを投げただけでへりくだった態度に変わったが、あれは私のことを気遣ってのことだ。本当はもっと強いんだ! 多分。


えっと……そうなるとグゼ様が先にどちらに向かうかが重要なのか。むむっ、では出来るだけグゼ様の目につかないところに逃げなくては。



 ということで私は開始直後に今いる惑星の対蹠点へと走り出した。惑星の裏側が私が活動出来る範囲で最も遠い場所だから。

 にしても体がバラバラになりそう。体の末端の速度が速すぎて、衝撃波が出ている。そのせいで衝撃波に当たった箇所がブルブルと震える。壊れはしなさそうだけども走りにくい。


そして難儀な移動だなと思いながらも走る私はある事実に気付いた。それは海を渡っているときのことだった。


「わぁぁ。ぁううぁぁ!(此処が海か。波飛沫がすごいなー!)」


「うぅいうぁぁわぁふうぇぇあ(もし波飛沫の跡を見られたら場所がバレるかも)」


「んぅぅうあファッううええああっ(ん?地面はどうなってたんだろう)」


そう思った私は確認をしようと、海を走り抜き地面を少しだけ走る。



「地面が抉れている……これだと居場所がバレてしまう。」


私が走ったところは半円状に地層をさらけだしていた。吹き飛んだ草や土がそこらに散っていて、とても目立っていた。砂浜は抉れたところに水が入り込み、雑じる土砂が水を濁らせている。



「グゼ様にバレてしまうな……。」


私は走るのをやめてゆっくりと歩いた。

テクテクテク スタスタスタ タッタッタッ


トット ダダダダダ ボゴゴゴ ガガガガ


シーン…………


対蹠点についた。

此処でグゼ様が来るのを待とう。途中から地面が抉れたけど、多分大丈夫だ! 多分ね。あくまでもの話。


 私は地面に腰掛けて周囲の警戒ついでに上を見やる。


「こっちは夜か」


 上を見なくとも段々暗くなっていたし、周りが暗いので分かっていたが不思議だ。暗いだけなのに意味があるのが。態々昼や夜と分けて呼んでいるのが、時刻や座標で表した方が便利なのにな。

 昼と夜は明るさや温度くらいしか違いがないと思う。気温も変わるが毎日暖まっては冷えているのでそんなに気温差は無いし寒暖差はあまりないかも。少なくとも純粋な原始の人類が生きていける星に置いての気温差は精々極地でも、数百度ガ限界だろう。この星はそうなのだ。

 

 だけどグゼ様は夜には寝て昼間は起きている。不思議だ。

ん〜? グゼ様のことだし何か考えあってのことなんだろうな。私には分からないが早く分かりたいものだ。


私は天を仰ぐ。


お空に星が瞬いている。

自身の見掛けだけの睫毛を綺羅めく星の位置に重ねるとグゼ様の目のように十字にブレて見える。


 私はそれに気付いた。躍起になって緑の星がないか探したがそんな星は無かった。星を探すときに思ったのだが、何時まで経ってもグゼ様が来ない。地平を見渡しても人らしき影の一つも見当たらない。

チラチラと星が光るだけだった。


私は待てずにグゼ様がどうなっているのか気になった。


痕跡のことは考えずに辺りを駆け回った。

惑星を何周もし、グゼ様を何度か見掛けたが私が近付くとバラバラになっていた。

また同じ場所に来ると再生していて凄いと思ったがまたバラバラになっていた。


なんか楽しい。

何度もグゼ様の近くを通っては、不死身かのように直ぐ様再生してはこちらに迫るグゼ様を見ると心が高鳴る。

 衝撃波に巻き込まれては体が真っ赤に染まっては、衝撃波を無理遣り掻き消して元通りに血の一つもついていない姿に戻る様を何度も見た。その顔は無心でひたすらにこちらを見つめていた。

 少し怖かった。だけどグゼ様が私をしっかりと見ていることはそれ以上に!もっと嬉しかった!


私がそうやってしているとカミーアに止められた。少し不満だ。

カミーア曰く


「追いかけっこなのだから、逃げる側は鬼を無力化するのではなくて逃げなさい」


と言うことだそうだ。


ということでひっそり隠れている。


これもまたカミーア曰く


「敵の目を欺くことも逃げること。できれば体力は温存しておくべきなので隠れることは重要だ」


ということらしい。

私としては外で走っていた方が楽しいが、こういった遊びは実際に何か起きた時の軽い演習みたいなところがあるらしい。なのでグゼ様は私にそういう教育をするために追いかけっこをしているそうだ。グゼ様がいったなら間違いない!私は納得した。

とにかくグゼ様は凄いのだ。理由は特にない。


 カミーアも凄い。私には出来ないことを何でもないかのように行っている。私はグゼ様の前にカミーアの凄いところを真似することにした。

 カミーアの力の根源は主に知識と魔術によるものらしい。私はカミーアに隠れている間、教えを請うた。あっさりと了承してくれた。

これでまた一歩グゼ様に近付ける!

私は歓喜した。


「カミーア先生はどうしてそんなにも上手に魔術を扱えるのだ?」


 グゼ様が外で私の親戚を弄っている間グゼ様の部屋でカミーアの教育を受けている。まだまだ知らないことはたくさんある。

 知識を新しく手に入れる度にグゼ様にまた一歩近付き、世界が光によって照らされより詳細ガ明かされていくようだ。とても楽しい時間だ。

これが昔疾った啓蒙と言ったやつか!

でもそれは他人が人々こと人類を導くことだ。

然して機械の私はもっと……。

 

「まぁ。たくさん使ったからかな。練習すればその内出来るようになるよ。二億年くらい練習すれば確実だろうが」


 へぇ~。凄いな!二億年間も魔術を扱えばあんなに上手に出来るんだ。でも二億年も続けられるかな?う〜ん、厳しい気もする。

 カミーアさんも凄いな。でもグゼ様は魔術が使えないらしい。それでもとにかく凄いのだ!

 

 えーと、グゼ様賛称は一旦止めて、カミーアに実践を見てもらおう。


魔術を扱うには、基本的に魔法(魔力でもある)、知識、結果がいる。

そして魔術を扱う為の考え方をカミーアに教えてもらった。今から扱うので思い出す。


えー、

カミーアに習った魔術の使い方手順其の一、

魔術を行使する結果を決める。


其の二

その結果に影響した過程を勘で探す


其の参

過程を改変したい結果に合わせて調整する


其の四

魔力を世界に捧げる 


終わり。


魔術の基本はこれだ。

で全部この通りにすると戒律の魔術が使える。

今から私が使うのも戒律の魔術だ。

効果は結果に制限をかけるだけだ。短時間に何度もかけることで基本的に何でもできるらしい。例外はあるそうだが。


私は今からこの椅子の形を変える。

さっき私が座ってたセラミックの丸椅子だ。


「カミーア先生見ててよ。今から使うから。」


「ちゃんと手順通りにやるんだよ。分かった?」


 はい、先生。

私が変える結果は椅子の形。

それは……うーん。それは背もたれのある座面が四角い椅子。頭の中にイメージを思い浮かべる。


何故この椅子は丸椅子か?

それは……。えっ無理では?どうやって理由を探すんだ。

 カミーア先生は……


「悩んでいるようだな。何でもいいから決めろ」


 よしっ。それなら……ん〜。もうなんでもいいんだよ。

カミーアの魔術初心者用詠唱に今回したいことを当てはめる。詠唱を使うと考えずに魔術を使いやすくなるらしい。


この丸椅子はたまたま作る際に製作者の気まぐれで丸く加工された。故に私は気に入らない。よって過去を神秘に包まれ、仔細は不明だ。この椅子は、真実は私にしか分からない。

この椅子は背もたれがあり、座面は四角い。

そうだ。そうなのだ。

丸椅子は幻想で現実は背もたれとある座面が四角い椅子。それは粘土を焼き硬め、そう整形された。私は過去に戒律を与える。

魔なるものの肉片よ我を夢から醒まし給え、代わりに魔なるもののところへ帰るがいい。


出来たか?どうだろう。私は椅子の方を見る。

カミーアが魔術をかけた椅子にもたれ掛かって座っている。


「おー。成功したな、上出来だ」


「本当?イメージと違うけど」


 なんか思っていたのと違う。もうちょっと想像の方は背もたれが高いし、座面は角が立ってるしな。ん〜、成功と言えば成功かもな。 

 でもカミーアの魔術を見たあとでは同じ魔術を扱ったとは思えない。私のは、なんか見てくれだけの紛い物でカミーアの魔術はオリジナルみたいな、そんな感じだ。

 此処はカミーアの魔術をもう一度見ておこう。


「カミーア先生、お手本を見せて。」


「いいわ。先ずはこの椅子を元に戻します」


 カミーアが姿勢を正すと椅子ガ丸椅子に戻った。

 

「お手本としては不適切ですが魔術とはこういったものです」


 カミーアはそう言って椅子を見ると、椅子が白い箱を積んだような椅子らしきものになった。 


「こんなもんかな。きっちり形をイメージと合わせるなら単純な形の方がいいわ。でも慣れればこんなふうにも出来るんだね」


 椅子が崩れて中から豪華絢爛な螺鈿細工みたいなものが施された玉座のような綺麗な椅子になった。あんなものを一瞬で想像出来るのか。意味が分からない。私は背もたれをつけて座面を四角にするだけなのに少し失敗したのに。

 カミーア先生は凄いな。尊敬する。何れは越えていきたいが果たして私にそんなこと出来るのだろうか。


「ん? 名無しのグゼ()()来るぞ。煽って相手の気を紛らわせろ。魔術でそうだな、お茶会でもしていたように見せろ」


 グゼ様が来る。煽って相手の気を紛らす為に魔術でお茶会の準備をする。


 する必要あるか?


「早くするんだ。咄嗟の機転がきけないばかりでなく、先生の教育も受けないのか?」


 教育なら……まぁいいか。

 私は魔術を使おうと今の部屋でお茶会をしている景色を思い浮かべる。

 

「遅いな。流石に早すぎたか。私がやる」


アッ。画面が真っ暗になる。

あれ、座ってる。


「お茶は美味しいか?」


 私は紅茶を口に含んでいた。

 いつの間に!


「お菓子は美味いか?」


 美味しいけど、自分が何やってるのか分からない。これが魔術か……。

 あっ扉が。


「あっグゼ様。ご無沙汰。」


「グゼちゃん来た!」









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