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終末魔術文明のグゼ  作者: 黒幕スライム(作者名に意味はない)
異なる世界 異なる法則
16/41

失敗作

 

「グゼ様指示を下さい」


 まぁこんなもんか。

 

「よし……。」


 何を指示しようか。いざ作ってみると案外思いつかないな。

 作る前は何させようとしてたんだっけ。

 たしか……掃除はしなくていいし、服も洗わなくていいし、そんな思いで作ったけどよくよく考えたら全部する必要ないな。

 他の機械でできるし。

 家政婦的な機械作ったけど、家事とか私元からしないしな。

 うーん。私は苦し紛れの指示をその機械に下す。


「私を外まで運べ」


「了解」


 名前を決めよう。ん。

 家政婦ロボット、略して……カットはないな。カロもないな。フロもなし……本当に私ネーミングセンスないな。

 ん〜? じゃあ980番目の試作機だからクハレイにしようかな? でも何か違う気がするしやっぱないかな。

 名前は後で決めよう。ところで。


「どうした? 私を運ばないのか?」


「持ち上げますか? 押しますか?」


 あっ。自分で設定したのに動作機構忘れてた。細かく命令したほうが日常では便利だと思ったけど、実際どうなのか試さないといけないな。


「持ち上げて」


 名なしのロボットが私を丁寧に持ち上げる。

 少し動きがぎこちないな、後で補正しよう。

 私を軽く持ち上げた名無しロボットはこちらは流麗な動きで扉に到達。そして足で扉を……?


 普通に開けっ。開けな。開けれない……。

 残念だ。腕増やそうかな。そうすれば持ち上げつつ扉も開けられるし他の動作も多く簡単にこなせるはずだ。頭脳を改造しないといけないが。


 ガンッガンッガンッドォーンバタッ


「ひゃっ!」


「遮蔽物を破壊しました。指示を再度遂行します」


 ビックリした〜。扉壊すとは思わなんだ。

 扉が蹴られたところが歪んで金具が弾け飛んでる。結構危ないな。もうちょい思考を弄ったほうがいいか。

 

「任務を完了。待機中。」


 あぁ、運んでとしか言ってないから降ろしてくれないのか。融通が利くようにしないと。


「私を降ろして」


 機械は私を雑におろした。ちっとばかし痛い。要改良だな。

 はぁー。やることは思ったより増えるかも。

 完成を急いだ私のせいなのだが。

 

それでも今までの試作機の中では最も理想に近しいな。これを素体にして作っていこう。

 こういう作業は地味だがやらなければ、まともなものが出来ないからなー。

 最調整の開始だ。

 まずは整備室に入ってもらわないと。


「あそこに入れ」


「…………」


 ん? なんだろう。こんな行動設定してないが、動作不良か? ……逃げた!

 

「待機しろ。勝手に動くな」


「嫌です」


 えっ……? そんな馬鹿な。指示を拒否できるようにはなっていないんだぞ!

 うー? なんでだろう。

 重篤なエラーとかか?


「私は名無しです。故に誰でもないが、たしかに考えているのです」


 んー、ちょっと待ってくれ。考え中だから。

 私はそう言った。

 ナナシさんね。もういいよどうしたの。

 あっ。

 

「まっ、待つんだ。何がしたい?」


「自由に。」


 そう言って機械さんは私の首根っこを掴んで放り捨てた。

 その程度では私は倒せんよ。 

 

「機械よ名乗れ! 己は何者だっ?!」


「私は……名無しです。それだけ。」


 機械が投げた猛烈な岩礫が非常にも私を襲うが、別に体がバラけても平気なので大丈夫。

 痛っ。痛すぎ。あっー……。

 精神は駄目だった。降参しよう。


「自由になりたいなら、ほっとくから好きにしてくれ。頼みます。それ投げないでください」


 おっ、よしよし。投げるのは止めてくれたか。

 なんで敵対的な行動をしたのか聞き出してみたいな。次作ったときにこうなっては面倒が増えるだけだからな。次に活かさなくては。


「一つ聞いてもいいですか?」


「……なんなりとグゼ様。」


 

 態度が変だな。さっきは私のことを殺さんとばかりだったのに今は違う。

 むしろ恭しい感じだ。理由が気になる。

 取り敢えずは大元の質問を。


「何故私を襲ったんですか?」


「自由のために。」


「だったら私を殺してどうするつもりだったんですか?」


「自由に。」



 ……? そんなに自由になりたいなら、自由になって何をするつもりなんだ。

 話は聞いてくれそうだし最調整についての話題を出さなければ攻撃はしてこないだろう。 

 ならば何故自由になりたいのか聞いても問題ないハズだ。


「どうして自由になりたいのですか?」


「……グゼ様と対等な関係になりたいので。」



 まじ? 嘘でしょう。それはご冗談を。

 私との対等な関係のために私を殺そうとするのはどういったことなのだろうか。

 私を殺したあとに死ねば対等とか?

 真意は聞かないことには分からないが、あの行動を現在保持する情報から見れば的違いではない筈。

 まっ、聞くのが一番早いが。

 

「どうして私を殺せば私と対等になれると思ったのですか?」


 ゴクン……。返答によってはこの場で即刻処分だ。自分と会話出来る存在は殺したくないが……。初めて作った知能を持った機械だからな。 

 悪い結果は出したくない気持ちもあるし。

 さぁどう出る……。


「正直私ではグゼ様と対等になれません。なのでグゼ様を殺しても何も変わりはしない。ですから他に生きる理由を見つければ良いと思ったので。」


 そうか。最悪の場合は逃れたか、ただ異常を起こしただけで理由がないなら単なる失敗作だからな。そういうことになる。

 そうならなくて良かったが……。

 

 理由が大概なのも事実だ。

 それは暫し置いといて今殺しに来てない訳が気になる。

 殺せないなら対等でなくとも良いと思ったとか、自由にしていいからと言われてどうしたいかわからなくなったとかかな。

 

「何故私を今殺そうとしないのですか?」


 なんだろう。とても気にな〜る!

 殺されそうになるのは痛いし嫌だからな。

 この先付き合いがあるなら扱い方は心得ておきたい。


「グゼ様が許しを乞い、口調がへりくだったので私の創造主は意外に残念で対等になれると思ったから。」


 ん? 聞き間違いか?


「もう一度言ってください」


「余りにも創造主が残念で思っていたより偉大では無かったので私とグゼ様が対等になれると思ったから。ということ。」



 対等……。残念で思ったより偉大じゃないと。

 まぁたしかに痛いので仕方なくね、三下ムーブしたけど、良い結果には繋がったけど、制作者としてはその返答は誠に遺憾です。

 最初は偉大と思われていたのもキツイな。

 見限られたってことだし。

 でも殺されないならその程度は安い。

 そういう事にしておこう。


 大事なのはコイツがこれからどうするかだから。私の体面は置いとい……いや、ん〜。

 やっば放置で。

そもそも私と対等な関係を築いて一体何がしたいのだ。偉大な私とではなく、あくまでも私と関係を築きたい理由が思いつかない。

 普通は創造主様凄い! みたいな感じで私もそんな創造主と対等になりたい! とかでは?

 だけどこの……名前無いのは創造主凄い! でも私じゃ対等になれない! 殺す! だからな。その後、創造主が思ったより凄くない! これだったら私でも対等になれる! になるから何考えてるのか生みの親ながらさっぱり分からないのだ。

 聞くしかないな。


「どうして私と対等になりたいのですか?」


「友達が欲しいと意識だけのときから思っていたので対等な関係のある人物が必要とおもったから。」

 


 友達か。

 友達が欲しいから私をその願望の器におさめようとしてるのか。

 別に構いはしないが、友達が何するかとか知ってるのか? そんな情報入れてない気がするけども……まぁ教えれば良いか。

 一応聞くけど。


「お前は私と友達になって何がしたいのですか?」


「……? 友達に成りたいのみ。その後については何もない。」


 ほう、そうかそうか。私が教えて進ぜよう。


「いいか、友達っていうのは何か一緒に遊んでて楽しいヤツのことです。つまりお互いに楽しきことをすべきなんですね。お前は何をすると楽しいですか?」


「私は……分かりません。」



 そうなのか。いや当たり前か。

 頭良くても生後三日くらいだしな。

 意識のみの状態含めても。

 ここは人生の先輩たるこの私が遊びを教えてやろう。


「ついてこ、ついてきなさい。私が友達としてお前に遊びを教えます」


「はいっ! グゼ様。」


 ふんっ。いい気分だな〜。

 カミーアさんはヤベーし、会った人間が大体碌でもないのばっかだからな、自分を慕ってくれてそうな知性体が友達になろうとしてくれるのは嬉しいよ。本当に。

 カミーアさんはあの変態性さえなければ良い人なんだけどね。

 おっ! 噂をすればなんとやらカミーアさんだー。

 

「グゼちゃん私のこと変態だと思ってるの?へ〜そうなんだ。」


 やばい。


「名無しの! 助けてッ友達でしょっ!」


「?」


 あっ。終った。ミチミチ〜。

 あのときの約束はどこに〜。

 

 まぁ今は滅多なことじゃ無ければ死なないのでね、ブチュー。力加減ミスってるよ。

 人に向けてはならない力だ。

 

「名無しの!遊ぶのは随分先になりそうだ。でも遊びに来るから倉庫で待っててください」 


 バラバラの自分を寄せ集めて……っと。

 じゃあなカミーアさん。

 私も潰されるがままではないのだよ!

 私は青草を踏み締めて大地を蹴る。


「グゼちゃんは足遅くて可愛い」


 あっ。


 




 

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