ふわもふと贈り物
※わぁーい。待ちに待ったふわもふ回ですよー※
「ここは、」
どこだろう?
私はふかふかなベッドに寝かされていた。いや、ここはイールーなのだから、すのこベッドのはず。王都周辺のベッドは床から離れているが、こちらは土足厳禁なのでベッドの底がすのこになっており、その上にマットレスを敷くタイプだったはず。―――それにしてもふかふかで、あぁ、ふわふわ。
―――ん?ふわふわ?
私はうっすらと目を開けた。
「ふゅるるーふーるー?」
不思議な鳴き声に、白い毛並みのもこもこ。
その耳は狐のような猫のような。顔はまん丸くて、4本脚は短めだが全体的にもっふりしていてかわいらしい。更に特徴的なのが、狐のようなもっふりしっぽ。しかも3本ある。
これは、イールーの土地にしかいないと言う、フーリーと呼ばれるもこもこ生物では!?
ガバリと起き上がった私は、そのもっふもふを抱きしめた。
「ふーもーふぁー」
本当に鳴き声が謎過ぎる。でもかわいい。そして、驚くべき点がひとつ。
―――この、サイズ感。
おっ、大型犬んんんんん――――――っっ!!!
「ふぉるるるるー」
でもかわいいからいいか。大人しいし。あぁ、まさかこんなすぐに出会えるなんて。でもここはどこだろう?
明らかに一人用にしては大きなベッド。まるで夫婦用みたいな?いや、まさか。―――そうなの?暫くすればノックの音と共にユラが顔を見せてくれた。
「お加減はいかがですか?」
「あ、大丈夫よ。私、お酒に」
「少し、強かったようですね」
少しってかかなり!
あのレベルは少しなのだろうか。まぁ、確かにユラは強そうだけども。
「今晩は宴ですが、出られそうですか?」
「えぇ、大丈夫」
お腹もすいたし。
「あぁ、そうだ。宴には魔獣の肉もでますが、平気でしょうか」
「え、魔獣のお肉?」
「先ほど来る最中に狩ったあれです」
ええええぇぇぇっっ!?―――獲れたてほやほやですやん。
「あ、食べたことはないけれど。おばあさまからお話を聞いて、ちょっと挑戦してみたいとは思っていたの。カニャーシカのお肉のお話とかを聞いたわ」
「では、そちらもお出ししますね」
え、出してくれるの?てか、いたの?旦那さまたちが屠った中に。
「そう言えば、あの。婚礼衣装は」
いつの間にかワンピースのような動きやすい服に着替えさせられていた。恐らくユラが着替えを手伝ってくれたのだろう。
「婚礼の誓いが終わり、イェディカさまは長の正式な妻となりました。ですので普段着でよろしいですよ」
よっしゃ。遂に解放された―――。
もちろん、婚礼衣装もすてきなものだったけれど。
「こちらでの衣装を用意しておりますが、いかがなさいますか?」
「あ、こちらでの衣装でお願い」
せっかく用意してもらっているのだから、そこは着なくては。興味もあるし。私の答えにユラは嬉しそうに微笑んで頷いてくれた。
婚礼衣装のように重ね着したり、留め具などを幾重にも嵌めるものではなく、普段着はチュニックに近かった。ひざ丈のワンピースの下に、ゆったりとしたズボンを穿く。夕餉の席なので宝飾品はほのないが、ワンピースに施された刺繍も当然ながら色鮮やかできれいだった。
「あと、こちらを」
ユラが差し出してくれたのは、丸い銅色の台座の上に金色の三日月型の宝石が嵌め込まれた耳飾りだった。金色の三日月型の宝石の中には婚礼衣装が届けられた時に見た長の家の家紋が浮かび上がっている。
「これはっ」
「もともと、長が夕餉の席用に用意されていたものです」
「そうだったの」
「とてもお似合いです」
ユラに耳飾りを付けてもらい、そう言葉をかけてもらうと少し照れ臭くなってしまう。
「ありがとう。嬉しい」
なんせ、婚礼用の耳飾りは盗まれてしまったから。
夕餉の席にはさすがにフーリーはお留守番となるので、ばいばいと手をふると、ふわもふな3本のしっぽをふりふりしながら「ふゅるるー」と鳴いてくれた。
―――ぐはっ。かわいすぎるんですけど。
※イェディカは18歳ですが、日本のみなさんはお酒は20歳になってから(ΦωΦ)※