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【完結】妹に婚約者を寝取られた公女は西方民族の長に嫁ぐことになりました。  作者: 瓊紗(夕凪.com)


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西方へ


王都を出て、西方の国境地帯までは2泊三日の旅程だ。今夜は王都郊外の宿に1泊する。私はユラが用意してくれたひとり部屋でゆっくりと身体を休めることにした。


なお、移動中、正式に嫁ぐまで花嫁は他者に顔を見られてはいけないので、花嫁衣装を身に着ける。唯一、側仕えのユラだけは私であると言う確認のために私の顔を見ることを長に許されている。


だから日中の移動は全て花嫁衣装、あとベール付き。不便と言えば不便なのだが、花嫁を守るための付与魔法が色々とついている便利装備でもあるので、また明日も着なくてはならない。


今夜はユラの用意してくれたワンピースのような寝巻を身に着けた。寝巻と言えど、西方の寒さをしのぐために裏地は温かいし、更には刺繍もそれなりに施されている。


―――薫衣草ラベンダーの刺繍。良い睡眠を、と言う願いが込められているんだっけ。何だかユラの気遣いが嬉しい。


私は寝る前に少し刺繍をしてから、ベッドで横になった。



***



翌日は、王都郊外から西方へ向かう交易路をひたすら進んだ。途中お昼休憩などがあったが、ずっと馬車の中だとさすがに身体がなまる。


ユラに疲労回復効果のある薬草茶ハーブティーを淹れてもらい、今日はひたすら移動である。


その日の夜は、西方地域へ向かう一歩手前の宿で休むことになった。



しかし翌日、私は信じられないものを見ることになる。



***


ユラに叩き起こされ、急いで婚礼衣装を身に着けて、走って宿の外に出れば、―――そこには。


大勢の武装した男性たちがいたのだ。そりゃぁ馬車の移動中も護衛はいたものの、これは一体どう言うことだろう?


一番前に立っているのは、ダークブラウンの髪に、切れ長の金色の瞳を持つ青年だ。背は高く、体格は細マッチョといったところだろう。整った顔立ちに凛とした顔つきは、王都のやさ王子にはない魅力がある。ぱっと見、かっこよかった。いろんな意味で。


青年は身体の所々に部分鎧を付けている。あぁいった部分鎧は、付与魔法を付けて身体全体を強化しているものだ。

更には腰には帯剣しており、他の男性たちも同じだ。


そしてダークブラウンの髪の青年がこちらに歩いて来て、手を差し出した。


「イェディカ・ローゼライトだな」


「は、はい」

声もなかなかののびがあってステキな低音ボイスだった。


「俺が君の夫になる、イル・シュラと言う」

え、こ、この方が旦那さま!?嘘、まさかのカッコいいなぁと思っていたひとが旦那さま!?やばい、嬉しすぎて顔がにやけそう。マジでベールがあってよかった。


「よ、よろしくお願いします!だ、旦那さま?」


「シュラでいい」


「は、はい。シュラさま」

私は、夫となるシュラさまの手を取った。―――しかし、国境地帯で落ち合うはずだったのに、何故こちらに?一緒に来た方たちはもちろんイールーの戦士たちだろう。


「君には悪いが、ここからは俺の馬に乗ってもらう」

「え、えぇ、まぁ」

一人で馬に乗れとか言われなくて良かった。私はシュラさまに手伝ってもらい、馬に乗せてもらった。そして私を後ろから抱きしめるような形で、シュラさまが乗って来た。部分鎧は胸元にもあるので、直接シュラさまの体温を感じることはないのだけど。何だかちょっと落ち着かないと言うか、緊張してしまう。


「途中、荒れるが安心してくれ。君に危害が及ぶことはない」

「え、荒れる?」

どういうこと?


「シュラさまにお任せいただければ大丈夫ですよ」

そう、ユラの声がして振り向けば、ユラもまた馬にまたがっていた。そして男性戦士から剣を受け取り腰にしてって、ええええぇぇぇっっ!?


ユラったら、ひとりで馬に乗れる上に剣で戦えるの!?ヤバい、カッコよすぎるわ。ユラ。旦那さまもカッコいいけれど、ユラは別枠でカッコいい。


そんな感じで感心していた私だったのだが。旦那さまの先ほどの言葉やここにイールーの戦士たち、そして旦那さま自ら来られた訳を、この後知ることになった。



***


「ひっ、ぎゃーっ!!」

「大丈夫。しっかり掴まって」

「は、はいいいいぃぃぃっっ!!!」


馬は疾走する。ものっそい早い。貴族の趣味の乗馬レベルではない。ほんまもんの戦士。まさに戦士である。旦那さまは片腕を私のお腹に回して固定しながら剣を振り回していた。ユラも、他の戦士のみなさんも。


そして襲い掛かる魔物たちを片っ端から片付けていく。


―――もう、目をつぶりたい。でも落ちたら嫌なので、手綱をしっかりと握り旦那さまがお腹に回した腕にぴったりと腕をくっつけた。


まさか西方へ向かう道がこんなハードだなんて、―――おばあさまの嫁入りの際の話の中では、聞いたことがないのだけど。


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