俺の嫁が無口だけど可愛すぎる
拙い文章ですが、読んでいただけると幸いです。
俺、箕田 和樹は箕田 梨奈の夫だ。
しかし、俺は梨奈の声を今までほとんど聞いたことがない。
これは俺が結婚を無理強いさせたとか、そんなことはなく、ただ梨奈が非常に無口で普段も身振り手振りやアイコンタクトで意思疎通をしている。
そんな梨奈と出会ったのは中学生の時だった。
当時もやはり梨奈は無口で、しかし美人だったため、言いよる男が多かった。
毎週の様に告白されていたし、罰ゲームでの告白も多かった。
俺が彼女と付き合う様になったきっかけは彼女への罰ゲームだった。
当時仲の良かった友人とのゲームに負けた俺は、ありきたりな放課後の屋上に彼女を呼び出した。
少し約束していた時間から遅れてしまった俺は急いで屋上へと続く階段を登っていると、屋上の方から声が聞こえてくる。
「梨奈ちゃん〜誰を待ってんの?そんなのいいから俺らとこのあと遊ぼうぜ」
「……」
「梨奈ちゃん無言は肯定と捉えるよー」
昇降口に背を向けて立っている男2人はケタケタと笑い声をあげた。
その時小さく鈴を鳴らしたかの様な声で
「………やめてください。」
小さく呟いてるはずなのに和樹はしっかりとその透き通った天然水の様な声を聞いた。
そして体は考えるよりも先に動いていた。
不意を突いた形で優位をとった和樹は難なくチンピラ二人を撃退できた。
しかしそんな和樹を見て梨奈は震えている。
それもそのはずで和樹は素早く二人の顳顬に握り拳を当てて一発で意識を飛ばしたのだから怖がらせるのも納得だろう。
「待たせてごめんな。俺が呼び出したのに遅れてしまったせいでこんなのに絡まれてしまって。」
「……」
顔を少し俯かせて、首を横に振る梨奈。顔が見えないが震えが収まっているので問題なさそうだ。
「…………ありがと」
「気にしないでくれ。俺がもっと気の利いた場所を選べば良かったんだ。で、本題なんだが、俺と付き合ってくれないか。」
「………」
梨奈は少し顔を朱に染めながら首を縦に振った。
「そっか、やっぱだめか、、って、えぇ?!」
「マジで、俺と付き合ってくれるの?」
再びこくんと首を縦にふる梨奈。
このあと他の男子生徒から呼び出されたり、女子生徒からはストーカーだの無理強いしたのだの好き勝手言ってたのだが、終始俺の腕に抱きついている梨奈を見せびらかしていたら、いつの間にか噂は消えていった。
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「ふぅ、梨奈と出会ってもう10年か…結局梨奈の声を聞いたのはあの時以降なかったなぁ。」
タバコを蒸しながら夜のベランダで物思いに耽っていたためか、少し体が冷えてしまった。
火を消してリビングに戻ると梨奈がテレビを眺めながら飼い猫のマリを抱いていた。
「なんか面白い番組やってるの?」
首を横にふる梨奈。
「そっか。ホットミルク作るけど飲む?」
今度は首を縦に振る梨奈。
二人分のホットミルクを作ってリビングのソファに腰かけると梨奈は和樹の方に体重を預けてきた。
声は発さずとも彼女が俺のことを愛してくれていることはひしひしと伝わってくる。
しかし、その時間も暫くすると終わりを迎えた。
梨奈はスッと立ち上がって作業部屋の方へいく。
「またゲームをするのか?」
こくんと縦に首を振ると扉を閉じてしまった。
莉奈がなんのゲームをしているのか知らないが、わざわざ作業部屋に行くと言うことは恐らくPCゲームだろう。長時間座ってゲームすることが苦手な俺にとってPCゲームは馴染めないものだった。
そこで俺は気軽に出来るスマホゲームをやろうとスマホを取り出す。
起動するのは最近携帯でもリリースされた昔からあるMMORPG。どうやらパソコンやゲーム機とも一緒に出来るようになったらしく、今かなりの人気を博している。
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俺がログインするともうすでにフレンドのミーナさんもインしていた。
彼女は同じギルドに所属していて、年齢も同じで、すでに結婚済みと言うことで意外と共通点が多く、よく一緒にゲームすることが多いフレンドだ。
『ミーナさんやほー』
『ヒュプノスさんこんばんわー』
俺が挨拶するとすぐに返信がくる。
『今日は何処行く?』
『最近アップデートで追加された。深淵の谷をデュオ攻略したいですねー。』
『あれかー事前情報見たけど、フレーム回避とかあって携帯だとやりにくいんだよねー。あと新しいモンスターが多いからマクロ完成してないんだよ。そうするとチャットも打てないし…』
俺がチャットを打ってからたっぷり30秒ほど間が出来た。返信の早いミーナさんらしく無いなと待っていると
『じゃあ、VCやりますか…?』
驚きのあまり「え、」と声に出してしまう。
ミーナさんは普段は高難易度ダンジョンでもVCは入らずにテキストチャットだけでコミュニケーションを取っていた。
『そうしてくれると嬉しいんだけど、大丈夫なの?』
『恥ずかしいですが、ヒュプノスさんだけなら大丈夫だと思います』
程なくしてミーナさんからのボイスチャットソフトのIDが送られてくる。
俺はボイスチャットソフトを開いて、ID検索をして友達に追加しようとするが、
《この友達は既に友達登録してあります》
という文言とともに出てきた名前とアイコンを見て言葉を失う。
「え、ミーナさんは莉奈なのか…?」
『りな』と家で飼っている猫のアイコンは疑問形で漏らした言葉を否定する。
先程までだらし無く座っていたソファから立ち上がり、莉奈のいる作業部屋へと向かう。
コンコンと2つノックをして俺は部屋へ入る。
ヘッドセットを付けて、ゲームをしている莉奈の横に座る。
首を傾げて和樹を見る目はどうしたのと訴えかけてくる。
俺は莉奈が付けているヘッドセットを外させてから
「こんばんは。ミーナさん。」
元々大きな彼女の目はさらに大きく見開く。
頬を赤らめながらも首を縦に素早く振った。
「……こんばんは。和樹さん。」
その言葉を真っ赤な顔で小さく告げると梨奈は和樹の背中を押して部屋から出ていく様に示してくる。
部屋から追い出された和樹の携帯がリビングに鳴り響く。
犯人は扉の奥にいる。もちろんすぐさま電話を受ける。
「もしもし…」
「こんばんは。ミーナさん」
「あぅ、和樹さんにその名前を呼ばれるのすごい恥ずかしいです…」
「ごめんごめんもう虐めないよ。梨奈。」
「和樹さんごめんなさい。」
「え、梨奈が謝ることなんてされた記憶がないんだけど」
「いやヒュプノスさんが和樹さんじゃなかったら、他の男の人と電話してたから…」
「あー、いやそれくらいじゃなんとも思わないけど」
「けど…?」
「やっぱり嫉妬しちゃうな」
「あうぅ……」
電話越しでも照れてるのが分かる。思いっきり抱きしめて愛でたいそんな気持ちが溢れてくる。
「そういえばなんで俺と話してくれないの?」
「…恥ずかしいからです。」
「それだけ?」
「はい……中学生の時から私にとって和樹さんはヒーローなんです。守ってくれるし手を引いてくれる。そんな素敵な方だし私のことが好きなのが分かるので、顔を合わせちゃうと恥ずかし過ぎて喋れないどころか目すら合わせれないんです。」
「ん。梨奈もう無理!」
和樹は珍しく扉を勢いよく開けて、顔を真っ赤にさせた梨奈を抱き抱える。お姫様抱っこだ。
和樹は腕を上げて梨奈の顔を近づけると、梨奈と耳元で囁いた。真っ白な肌全体が少し赤みがかる。耳が弱い様だ。
「今日は一緒に寝ようね」
それだけ告げると和樹は自室に入って梨奈をベッドに優しく寝かせる。
すぐに和樹も梨奈の隣に横になって逃さない様に全身で抱きしめる。
「ねぇ梨奈。梨奈は俺のこと勘違いしてるよ。中学生の時に梨奈を守ったのは自分が呼び出したから絡まれたっていう責任感だし、手を引いたのは梨奈の声を聞きたいっていう自分よがりな理由なんだ。」
「でも…」
「でもね。一つだけあってることがあってね。梨奈のことが大好きだってことだよ。」
耳を甘噛みする。梨奈の体がビクンと跳ねる。
「今までは梨奈の意見を尊重して我慢してたけどもう無理。あんな可愛いの聞かされたらタガが外れちゃうよ。」
梨奈の体を無理やり和樹の方へ向けさせる。折れちゃいそうなほどに細い体は抵抗せずにされるがままになっている。
どうやら先ほどの甘噛みで蕩けてる様だ。
顔を両手で隠してるのだがそのまま手の甲へキスをする。そのまま彼女の至るとこにキスを落としていく。
このあと「も」めちゃくちゃイチャイチャした。
読んでいただきありがとうございます。今後の参考やモチベーションに繋がりますので、感想お待ちしております。