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霊山 美結

 何も言わずレイ・サザーランドもとい霊山美結を見つめていると、少女が微笑んだ。


「ふふっ、そんなに驚かれるとは思っていなかったよ」

「……そうだな。俺もまさかここにクラスメイトがいるとは思ってなかったよ」


 俺は軽口を返しながら『鑑定』を使った。僅かな抵抗があったが、既に周囲を空間支配している俺を止められるほどではない。


 __________________


 種族:ヒューマン


 名前:レイ・サザーランド(霊山美結)


 年齢:5


 レベル:38


 HP:1300/1300

 MP:4100/4100

 SP:2400/2400


 スキル:『鑑定LvMAX』『魂魄魔法LvMAX』『気配感知Lv7』『危険察知LvMAX』『スタミナ回復速度LvMAX』『魔力回復速度Lv4』『魔力感知LvMAX』『魔力操作LvMAX』『身体強化魔法Lv6』『毒耐性Lv3』


 __________________


 ダンジョン入口の砦にいた変態全身甲冑よりも強いんだな。それともあの全身甲冑が弱いのか?……まだ判断基準が少なくて分からないな。


「……よく今の俺が成田龍輝だと分かったな」

「それはね、お母さんが教えてくれたんだ。この子がレイの友達だよって」


 霊山の声を聞きながら影に『念話』を使って清川と宮沢を呼び出す。2人は直ぐに出てきた。


「あれ、何で安寿ちゃんと宮沢がいるの?それに何で姿変わってないの?」

「あの、ニールちゃん……。この子誰?」

「……俺と清川の前世の姿を知ってる?」


 ふむ、戸惑ってるな。……それも当然か。いきなり呼び出されたと思ったら何故か前世の姿を知ってる奴がいるんだからな。


「……霊山だ。鑑定すれば分かるだろ?」

「あ、本当に美結ちゃんだ。どうしてここに美結ちゃんだが?英樹君が転生者を集めてるんじゃないの?」

「あ、それは私達が説明するね」


 清川が疑問を口にすると、ひょこっと顔を覗かせたジャックが説明し始めた。その姿は活き活きとしている。どうやら、俺たち転生者の話に加われて嬉しいようだ。


「あのね、レイちゃんは冒険者夫婦の娘なんだ!執事服さんのお兄さんの調べによるとどっちも高ランクだったみたいだよ」

「うん、私は両親について行って色んな所を巡ったよ。帝国、北の大地、魔法国家、商業の街、迷宮街、そしてここ王都。魔族領にも行ったかな」

「その時ここに来るキッカケになった事件が起きたんだ。帝国の陰謀で王国の村や町を燃やしてたんだよ!」

「正義感のつよかった両親はそれを止める為に攻めていったよ。私を置いてね」

「その後、2人は帰って来なかったみたいだよ。親を亡くしたレイちゃんは人さらいにあってここに売られんだ!」


 途中から霊山も説明に加わっていた。2人は交互に交代しながら説明してくれた。傍目から見ると容姿は似ても似つかないが、2人の仕草は本当の姉妹のようだ。


「……よくその体で生き延びたな。スキルがあったからか?」

「うん……。このスキルがあったから生き延びたんだ」


 ふむ、まるで死にたかったみたいな言い方だな。やはり親が殺されたっていうのはそれ程辛いのか?


「それにしても本当に安寿ちゃん達は姿が変わってないね。身長まで同じなんだ」

「……ニールがしてくれた」

「宮沢君の言い方じゃ分からないよね。あのね、私達は一回死んでるんだ」


 霊山が今更な疑問を口にした。先程も同じようなことを呟いていたが、その時は混乱していて意図せず口にしていたのだろう。


「当たり前じゃない?クラスメイトは全員死んだんでしょ?」

「そうじゃなくて……。驚かないで聞いてね。私達この世界に来てからもう一回死んだんだよ」


 自分が死んだって事は抵抗なく言うんだな。確かアンデッドだと言われるのには抵抗があったと思うんだが……。何か違いがあるのか?


「そういう事なんだ。死んだ安寿ちゃん達にこう言うのは変かもしれないけど、羨ましいね」

「……そう言うお前もあまり変わってないな。育てば前世と似た姿形になるんじゃないか?」

「それはスキルの影響だよ。私のスキルは魂に影響を与えるやつだから多分転生時の私の願望を感じとってこの姿にしてくれたんだと思う」


 転生が完了する前からスキルを使ってたのか?……いや、言い方的に無意識だよな。そうだとしても転生前に発動するものか?


「……聞くが、スキルのお陰で生き延びたのは本当か?」

「うん、このスキルを通してお母さんが助けてくれたんだ。ほら、ここにいるでしょ?」


 そう言って霊山は虚空に向けて何かを撫でるように手を動かす。『探知』を強めてみるとそこには魂があった。アンデッドの2人も今気づいたようで驚いている。


「……成程。死霊魔法というより神々の死の権能に近いな」

「そうなの?私は生きるのに必死でそういう細かいことは考えてなかったな」


 そう言って霊山は苦笑する。普通に笑ってはいるが、何かを隠しているような違和感を覚えた。


「……それで俺達をコイツに会わせて何がしたいんだ?保護なら英樹に任せれば良かっただろ?」

「その質問を待ってたよ!ニールちゃん達にはこの子の父親の魂を救って欲しいんだよ」


 俺がジャックに聞くと、また話に入れなくて不貞腐れてたジャックの顔がパァッと曇りない笑顔でそう言った。


「レイちゃんは私達とは違ってお母さんが殺された。お父さんもまだ魂があるか分からない」


 そう言いながらジャックは俺たちの周りを回る。いつの間にか外套からインバネスコートとディアストーカーハットへと着替えていた。


「つまり嘆き、怒り、悲しみ、そして復讐心。それら全てを持つ資格と理由がレイちゃんにはあるんだよ!」


 まるで演説でもするかのようにジャックは説明し、【虚無空間】から持ち手が鳥のステッキを取り出して、それを手のひらで回す。


「その復讐心を叶えてもらうためにニールちゃん達にはレイちゃんを連れて行って欲しいんだ」


 カッ、と回していた杖を掴み地面に打ち付ける。両手を杖の上に置き、ニッコリと笑った。


 ……つまり、霊山の復讐を手伝えということか。ジャックの頼みだし、断る理由もないが霊山はその気があるのか?


「ニールちゃんの思ってる事はお見通しだよ。レイちゃんには既に聞いてあるんだ!本人に聞いても構わないよ」


 霊山の方を向き視線で考えを聞くと、霊山は一瞬キョトンとしたが次の瞬間には苦笑しながら答えた。


「出来ればしたいかな。数年だけしか一緒にいられなかったけど両親だからね。復讐はしたいよ」

「……そうか。復讐を手伝うつもりはないけど、いつまでもここにいても仕方ないだろ。霊山が望むなら連れていく。お前らもそれで構わないな?」


 後ろを振り向き、並列思考達にも意見を聞く。まぁ、もう俺の中で決まっているので拒否されてもやめる気はないけどな。


「ニールちゃんが決めたなら良いと思うよ。魂魄魔法にも興味があるしね」

「私も良いと思います。それに、私達が拒否したとしてもニールさんはレイさんを連れていくでしょう?」

「俺も良いと思うぞ。コイツがいたら強いヤツと戦えそうだしな!」

「あたしは構わないよ。復讐とやらは興味無いけど帝国には興味が湧いてきたよ」

「フッ、深淵は全てを飲み込む。反逆すらも飲み込んでみせようではないか!」


 並列思考達は全員了承してくれた。ボロスだけは了承してるのか定かではないがいつもの事なのでスルーしておく。


「私は君の事には基本反対しないよ。それに、もしこの子が裏切ったとしても面白そうだしね」

「ニールがそれで良いなら」

「美結ちゃんと一緒に冒険出来るなんて大歓迎だよ!ふふっ、また影の中が賑やかになるね」

「……何を言ってるんだ?霊山は眷属じゃないから影には入れないぞ?」

「え……?う、嘘でしょ?」


 清川の顔が笑顔から一転、絶望へと染まっていく。それ程霊山と離れ離れになるのが悲しいのだろうか?


「ねぇ、何とか出来ないの、ニールちゃん。私達アンデッドが街中を歩く訳にもいかないし。……あ!ブラッドさんみたいに神の使徒に出来ないの?」

「……出来るか出来ないかで言えば出来る。ただし、そうすればお前ら触れなくなるがいいのか?」

「え?どうして?」

「……神気がアンデッドの体を浄化するからだ。俺の使徒なら一瞬で消滅だな。……たとえ俺の眷属だとしても」

「で、でも私がニールちゃんに触れても何ともないよ?」


 まぁ、その疑問は当然だよな。同じ神なのに俺に触れても何も起こらず、使徒になった霊山だと消滅だもんな。


「……経験の差だ。俺は少しずつ力をつけたが、霊山は一瞬で強くなる。……制御が出来ないのは当たり前だ」

「他に方法はないの?折角会えたのに話せないなんて寂しいよ」


 俺が説明すると、清川は更に落ち込みアンデッド特有の負のオーラを辺りに漂わせ始めた。


「……あるにはある」

「あ、あるの!?それなら早く言ってよ!」


 バッ、と清川が顔を上げる。その瞳は輝いて期待に満ち溢れていた。……以前よりも感情の起伏が激しくないか?


「……ただ、これはあまりオススメしないぞ?」

「な、何するの?美結ちゃんの為なら私は何でもするつもりだよ!だから何をするのか教えて」

「……アンデッド化だ」

「はぇ?」


 清川が奇妙な声を上げて固まる。口が半開きしていてマヌケな顔だ。


「……だから霊山をお前とアンデッドにするんだ」

「あんでっど?なんだっけそれ?」


 ふむ、そんなにショックだったか?……まぁ、そうか。自分の我儘の為に親友を一度殺すようなものだからな。霊山にメリットが無いわけではないけれど、その身が不浄になるのは霊山としてはどうなのだろう?


「あ、アンデッドのことか。うん、アンデッドだよね。アンデッドかぁ……分かるよ」


 清川の心情を考えていると清川が譫言ようにアンデッドという単語を繰り返し口にした。


 理解しているような顔をしてるけどこれは全く分かってないな。ほら、今だって「あはは〜」とか笑ってるし。


「……霊山はどうなんだ?一度死ねるか?……通常の肉体と引き換えに力と居場所が手に入るぞ?」

「私は安寿ちゃんと一緒に入れるならいいかな。殺す時は優しくしてね?」


 放心している清川を放って直接霊山に聞いた。檻の中の霊山は生気のない瞳で何でもないかのように殺して、と返答してきた。


「……分かった。それじゃあ準備するぞ。……まずはその檻から出てくれ」


 霊山にお願いすると同時に、俺は清川の時と同じようにゴーレムの体を作る。唯一違うのは姿を今の霊山に似せてるとこだな。


「……それじゃあ今からお前を殺す。何か要望はあるか?」

「うーん、そうだなぁ。それじゃあお母さんの魂を私の魂に括りつけてけれない?できる?」

「……問題ない」


 自分が死ぬというのに親の心配をするのか。これは俺を信頼してるのか?それとも単に死を恐れていないのか?。……分からないな。


「【斬首刑(ギロチン)】」


 魔法を唱えると、霊山首に漆黒の断頭台が現れた。そこから濃密な死の気配が溢れだしている。


「あ、あれ?ニールちゃん何してるの?何で美結ちゃんがそんなところにいるの?」


 ふむ、流石に気づくか。このまま霊山のアンデッド化まで呆けて欲しかったけど仕方ないな。そのまま見ててもらうか。


「【執行】」


 魔法の最後の詠唱を唱えれば断頭台の刃が霊山の首へと落ちる。しかし、首が切断されることはなく静かに霊山は死んだ。


「え……?み……ゆ………ちゃん?ねぇ、返事してよ。ねぇ!冗談は止めてよ!私だよ?折角会えたのにこんなの酷いよ……」


 清川が現実を認めないかのように霊山の遺体を抱いて何度も首を横に振る。俺はそれを眺めながら次の準備を始めた。


 ……目の前で親友が殺されたのは確かに辛いだろうけど、もう少し人の話を聞いて欲しいよね。少し呆れたぞ。


「ニールちゃん。転生はちょっと待ってくれる?あの子の魂魄魔法っていうのをちょっと改良してみたいんだ」


 床に魔法陣を描いていると横からシルビアが嬉しそうに話しかけてきた。ちらり、と並列思考達の方を見ればいつの間にか各々の好きなように動いていた。飽きてきたのだろう。


「……別に許可を求めなくてもいいんだけどな」

「それってつまり、良いってこと?」

「……そういう事だ」

「ありがとう、ニールちゃん!」


 許可を出すとシルビアが俺の頭を自らの胸へと沈めて抱きしめた。いつものシルビアよりも大胆な行動だが、それだけ魂魄魔法に興味を持っていたのだと納得した。


「……これで完成だな」


『創造』で作ったチョークで描いた魔法陣の中心にに依代となるゴーレムを置いて先程確保した霊山とその母親の魂の間に繋がりを作り、アンデッド化の準備を完了させた。

 因みにだが、この魔法陣は宮沢達を蘇らせた時の【蘇生】を改良したものだ。宮沢達の時よりも、より依代と魂との親和性が高まるようになっている。


「……それじゃあ始める。シルビア、改良はもういいな?」

「大丈夫だよ。ルルちゃんと話し合って最高の能力に仕上げたよ」

「はい、霊山の扱える力の中で最大のものにまで改良できて満足です」


 俺はシルビアから霊山の魂を受け取って確認する。確かについ先程とは比較にならない程、保有する魔力が高まっていた。潜在能力を全て引き出したのだろう。


 俺は空気中の魔素を集めて魔法に注ぐ。直ぐに発動の為の魔力が溜まり、魔法陣が白く光り輝いている。


「……【蘇生】」


 無詠唱で発動させれば、みるみるうちに魔法陣の光度が増していき俺たちのいる部屋が全て真っ白に染まりーー爆発した。

蘇生組久しぶりの登場

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