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 俺の鑑定を妨害した……?本気じゃなかったというのは全く言い訳にならないな。何故なら相手も全く本気じゃないからだ。まるで息をするかのように干渉し望んだ項目を不可視にしていた。認識は出来ていたのに反応することが出来ない程に自然な干渉だったな。


「顔色一つ変えずにあの精度で鑑定を発動させたのは素晴らしいのじゃが、乙女を勝手に覗くのは許される行為ではないのじゃ」


 ウカノミタマは僅かな苛立ちが含まれた声で俺の行為を注意し威圧した。シロナとクロナも触発されたのかこちらのことを警戒し始めた。


「……すまない。勝手にステータスを覗くのは失礼だったな」


「うむ、素直に謝ったので許す。最近の者は何だかんだと御託を並べてうるさいからのぅ」


 俺が謝るとウカノミタマは威圧を止めた。その後、本当に嫌そうな顔で誰に向かっては分からないが文句を言っていた。


 ……鑑定を妨害されたのって初めてかもしれないな。いや、ラプラスの時を含めて2回目か。フルフルの時は失敗だったからノーカンだ。それよりも今の俺と同じ精度での魔力操作か。そういえば今考えるとまともに戦ったのって脳筋ばかりだな。

 魔物もリードもルティヤも身体強化以外の魔法は使っていなかったし。もしかしたら俺の魔力操作は余り凄くないのかもしれないな。比較対象がいなかったのもあるが強くなって慢心していたのだろう。……もっと精度を上げるよう修行するか。


「少し辛気臭くなってしまったのじゃ。この雰囲気を変える為にも主らを客人として宴でもしようではないか。最近退屈だったしの」


 会話が途切れ、気まずい雰囲気になりかけているとウカノミタマが突然立ち上がってそう言った。俺が何も言えずに固まっているとウカノミタマ双子達に準備をするよう命令してしまった。


「……そんな急に宴とか大丈夫なのか?」


「うむ、妖狐は寿命が長いためそういった催し物は開かないが、宴自体は好きなのじゃ。心配せずとも勝手に準備をしてくれるのじゃ」


「……いや、準備が間に合うのか聞いた訳ではないんだけど」


「俺は祭りをやりたいぞ。ニールは嫌かもしれないけど俺は好きだぞ、祭り」


「私もやってみたいです。それに最近ニールさん気を張ってばかりなので息抜きという意味でもやった方がいいと思います」


 賛成したのはコアとルルの二名だ。後の3人はどちらでもいいと良いという感じだ。しかし、シェリーとシルビアは相方が参加したがっているからか、目で許可を出すように訴えてきてる。


「……はぁ、分かったよ。参加するからその目をやめてくれ」


 俺がそう言うと不安そうだったルルとコアの顔がパァッと喜びに満ちた。2人の周囲の温度が暖かくなったのは気のせいだろう。


「……ただし、1つ条件がある。絶対に自分から問題を起こすな、この1つだけだ。……これを破ったらしばらく並列存在を使わせない」


「分かったぞ。自分から問題を起こさなければいいんだな。それくらいなら出来るぞ」


「了解です。我儘を聞いてくれてありがとうございます」


 コアはガッツポーズを、ルルはお辞儀をすると先程までの子供らしさはどこへやったのか弾丸のように走り出した。どうやらあの双子に追いつく気らしい。


「……まだ準備終わってないんだから歩けよ」


「フフ、子供らしくて可愛いと思うよ?」


 俺がコア達のはしゃぎ様に苦笑しながら文句を言うとシルビアが笑って俺の顔を覗き込んできた。


「そういえばあんたはあんまり身体に引っ張られないね。コアやルル、ボロスなんかは一目瞭然、あたし達でも口調とか変化してるのにね。何かコツでもあるのかい?」


 引っ張られない?何が。……あぁ、性格のことか。確かに最近は違和感のある行動をしてないな。気づいていない可能性もあるけど、こいつらが何も言わないということはそれは無いな。


「……多分お前らのお陰だろうな。かなり前に聞いたんだけどお前らって俺の魂と肉体の差異から発生するらしい。……ジャックだけは違うけどな」


「あ、確かに世界神さんが言ってた。わ、私も聞いてたけど忘れてた」


「へぇ、あたしは初耳だね。コアとルル、シルビアは分かるけどあたしとボロスは何から生まれたんだい?」


 シェリーは恐らく性別とドラゴンの闘争本能からかな?俺の魂とこの身体のズレは今もどんどん大きくなってるからな。シェリーはしばらく魔法の修行に専念してた頃の戦闘欲求から発生したんだろ。ボロスは……いや、やめとこう。これだという確信はないからな。ただ、一番可能性が高いのは俺の黒歴史から生まれた可能性が一番高い。


「フッ、どうした我が運命を共有する者よ。貴様も我が深淵の力を欲するか?」


 俺がボロスを眺めているとボロスは何を思ったのか見当違いの事を言うと闇魔法特有の黒いオーラを発生させ、ジョ〇ョ立ちの様に左手で広げ顔を隠した。


「……シェリーは分かったけとあれは分からない。ボロスは分からないのでもうこの話は止めよう」


「な、なんか焦ってない?」


 なんでこういう時だけ鋭いんだよ。そもそも並列存在に意識を移してるから思考は読み取れないはずなのになんで分かるんだ?……ちょっとシルビアが怖くなったな。


「ま、あたしも興味で聞いただけだから別に答えが無くてもいいんだけどね。そもそも、あたしは戦闘にしか興味がないからね。シルビアもそんなに知りたいなら自分で調べれば良いじゃないか」


「そ、そうしようかな。それで、話は変わるんだけどシェリーさんはもっと服装を考えた方がいいと思います」


 ボロスについてシェリーが諦めてくれたお陰で話を終わらせることができた。と、思ったらシルビアの矛先がシェリーに向き稀に見る強気なシルビアに変わり、服装についての話に変わった。


「なんでだい?これが一番身軽で動きやすいじゃないか」


「そうですけどそれは女として何かが大きく欠けてるんだよ。私達よりも硬い装備が無いと言ってもーー」


「……俺は先に戻って良いか?ほら、ラプラス達も待ってるし」


 俺がそう言うとシェリーに説教していたシルビアの目がこちらに向いた。その目は普段の弱々しい目とは似ても似つかず、その赤い目は獲物を見つけた獣のように鋭く普段のシルビアを知っているせいか怖かった。


「ニールちゃんもニールちゃんだよ。いつも同じ服を着てるけど違う服は着ないの?確かにニールちゃんに似合ってるし耐久性もあるけど、もっといろんな服を来た方が可愛いよ。と、いうことで私が2人に似合う服を創ったから着てね」


 その後は地獄だった。本気を出したシルビアは凄まじく抵抗する余地もなく服を着せ替えられた。しかもかなり可愛かったので文句も言えなかった。ラプラスに笑われ、ブラッドに気持ち悪い目で見られたのはかなり屈辱だ。もちろんブラッドは殴っておいた。

 シルビアが元に戻って解放されたので黒のワンピースに着替えて、自分を責めて動かないシルビアを抱えて妖狐の里へと向かった。ブラッドはどうしたのかって?ラプラスが足を持って引き摺って運んでる。その後、歪んだ空間を抜け里に入るとどんちゃん騒ぎの妖狐達にもみくちゃにされ今に至る。


 __________________


 疲れた……。妖狐達って宴になったらあんなにはしゃぐのかよ。最初に見た時は無表情が多くて寂しい場所だったのに、宴になったらあれとか極端だな。並列思考達は楽しめてるみたいだけど前世の頃からこういうのは苦手な俺は長く楽しめないな。


「む、主も息抜きか。妾も同席してよいかの?」


 俺が宴から離れた位置で風にあたっているとウカノミタマがお酒片手に話しかけてきた。


「……別に構わない。お前にはまだ聞きたいことがあるしな」


「ほう、妾に聞きたいことか……。聞くだけ聞いてやるからいってみるのじゃ」


「……それじゃあ遠慮なく聞かせてもらう。俺の魔力操作を見てどう思った?特に精度について聞きたい」


「ふむ、難しいのぅ。妾の感想を告げるのであれば、主の魔力操作ははっきり言ってまだ粗いのじゃ。客観的に言うのであれば、世界中の強者を集めたらお主の魔力操作の精度は上位に入るじゃろうな」


 やっぱりそうだよな。今日ウカノミタマに鑑定を妨害されて分かったけど魔力操作は精度だけじゃないんだよな。……やっぱり長年生きているだけあるよな。


「む、お主今失礼なことを考えたじゃろ」


「いいえ、全く」


 ……鋭い。何か干渉された訳でもないのに完璧に心を読まれたな。それにしてもそんなに年齢を気にしてるのかよ。それだったら称号も隠せば良かったのに。天狐って確か3000歳を超えた狐だろ?


「むぅ、また失礼なことを考えられた気がするのじゃ」


「……考えてない。それで話を戻すんだが、俺に魔力操作を教えてくれないか?もちろんお礼はする」


「ふむ……。先程あのようには言ったが現在のお主でも充分強いぞ?それこそ世界最強を名乗っても良い程にな」


 ウカノミタマは目を瞑って何事か考えるとそう言った。その言葉に嘘をついている気配はなく、本気で俺が最強だと信じて疑っていないみたいだ。


 世界最強は言い過ぎだろうがそれに近い実力はあるんだろうな。今は弱体化しているらしいけど、裁定者のルティヤに余裕で勝てたし。仮にも世界のバランスを保つ役割をもつ者にだ。……だけど俺はそれで満足しちゃいけない。何しろ俺が目指してるのは邪神討伐だからな。


「それでは満足出来ぬのだな。良かろう、お主に妾の技を教えようではないか。勿論、礼は貰うぞ」


「……ありがとう。多分お前が望む大抵の物は用意できるだろうから期待しててくれ」


「それは楽しみじゃな。それはそうとお主の連れが暴れているようじゃぞ?あの人間、下手したら死ぬじゃろうな」


 ウカノミタマに言われて見てみるとコアがブラッドに肩車してもらっていた。しかし、コアの足がブラッドの首を絞めていて呼吸出来なくなっていた。ルルだけは止めようとしてるが他の並列思考は周りで笑ってた。あのシルビアでさえ顔を赤くして笑ってる。


 もしかして酔ってないか、あれ。うん、完全に酔ってるな。ドラゴンって神話では酒で酔って殺されるイメージがあるけどドラゴンは酔いやすいのだろうか?……おっと、そんなことを考えているうちにブラッドの顔が青を通り越して白くなってきたな。ルルだけじゃあ暴れるコアを抑えるのは大変そうだし早く加勢しなくちゃ。


 俺は急いでブラッドの元へ向かった。酔っ払った妖狐に絡まれたけど邪魔だったので首に手刀を当ててちょっと眠ってもらった。一度これをやってみたくて、出来て嬉しいのは内緒だ。


「……コア、早くそこから降りないとしばらく並列存在を没収するぞ。早くしないとブラッドが死ぬ」


「えっ、並列存在没収はやだぞ。はい、降りたぞ。降りたから没収するな。肉体が無いと戦えないんだぞ」


 俺が優しく脅迫(おねがい)するとコアは焦ってブラッドから降りた。そのまま逃げるようにシェリーのいる方へと走っていき、妖狐達と組手を始めた。反省してないな、あれ。

 その後コアに首を絞められて顔を白くしていたブラッドを神聖魔法で治療しているとシルビアが撓垂れ掛かってきた。


「ねぇねぇ、ニールちゃん。そんな男放っといて私と遊ぼうよぉ。ねぇねぇ」


「……今は駄目だ。後でお前が冷静になったら遊んでやる」


「え〜、何でよぅ。ほらぁ、あっち行って妖狐の人達と遊ぼぉ」


「あ、ちょっ、待っ、何処触ってんだ!?聞いてるのか!?ちょ、引き摺るな。おい何かあの妖狐達雰囲気おかしいだろ。あ、あ゛あ゛ぁぁぁぁ」


 その後は抵抗虚しく酔ったシルビアと妖狐達、あとは途中で参戦したウカノミタマによって遊ばれた。何をされたのかはちょっと話すことは出来ない。

ちなみにこの宴は2日間ぶっ通しで行われ、その間ほとんど妖狐達に遊ばれていた。

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