剣聖
「ニールちゃんの言葉で言えば亡霊かな?」
「は?」
「あぁ、なるほど。君のその気配はそういう事か。納得したよ。……それにしてもこんなのを無意識に呼び出すなんて君は本当に面白いね」
ジャックはそれをまるで誰もが知っている事のように言った。ラプラスもそれを当然の事のように受け止め、俺に向かって身に覚えのないことを言ってきた。
亡霊……?なんでそんなのが俺のスキルから発生するんだよ。……そもそもスキルから新しく発生した意識のはずなのに、さっきから俺のスキルから発生する前の記憶があるみたいな話し方なのも異常だな。……とりあえず話を聞いてみるか。聞いていくうちに分かるだろ。
「……亡霊が何で俺のスキルから発生するんだよ」
「私たちの名前はジャックだよ?あまり間違えないで欲しいなぁ」
俺がジャックのことを名前ではなく種族名(?)で呼ぶとジャックは質問に答えず、あどけない様子で呼び方を指摘した。
「……ジャックは何でスキルから発生した?」
「うん。えぇとね、さっきも言ったけど私たちはニールちゃんの称号に惹かれてきたんだよね!虐殺と殺人の称号かな?」
「……そうか」
虐殺と殺人か……。なんかその単語とジャックという名前だと切り裂きジャックしか思いつかないんだが。……ラプラスという事例があるんだし転生してきたりしないよな?
「……ジャック、お前に前世の記憶とかあるか?」
「うん、あるよ!丁度ここみたいな人気のない所でお母さんを殺した記憶しかないけどね。……あぁ、もう一回やりたいなぁ」
俺が本来ならこの世界の住人では理解できない質問をすると自分は何の躊躇いもなく親を殺したと答えた。その後興奮した様子で頬を赤らめて狂気に染まりきったことを呟いた。
……異常だ。虐殺と殺人に惹かれたと聞いた時点で予想はしていたけどここまでとは思ってなかった。……まぁ、今後慣れていけば良いか。どうせこいつにはひとつ頼み事をしてしばらく別行動をするんだし。
「……そうか。そんなお前にひとつ頼もうと思う。……人間のゴミの掃除と同じだと思ってくれて構わない」
「うん、良いよ」
「……まだ何も言ってないんだが」
「ニールちゃん、私がまだ中にいた頃から考えてたよね。だから知ってるんだよ」
「……そうか。今からその人間に会うからこれからはそいつと行動してくれ」
「うんっ」
俺がそう言うとジャックは見た目相応の少女のような顔で笑った。その後直ぐにジャックは外套で顔を隠してしまった。俺はもう少し見ていたかったと思いつつも気持ちを切り替えてギルドへと移動し始めた。
「ねぇニールちゃん、悪い人は殺しても良いんだよね?」
歩き始めて直ぐにジャックが俺の事を覗き込んで質問してきた。
「……本当のクズだけな。馬鹿は放っといても良い。……俺は別に善人って訳では無いからそこら辺は曖昧だけどな」
「じゃあ、私たちを虐める人達は解体してもいいんだね」
「……俺は構わない」
俺から目的の答えが聞けたのかジャックは微笑むとそれ以上質問してこなかった。そこからは無言で歩き、すぐにギルドに着いた。
「……おい、ラプラス。俺は昨日のやつにジャックを会わせるからお前は先に受付の所で待っていてくれ」
「わかったよ。余り問題は起こさないようにね。見てて楽しいけど少し自重して欲しいかな」
「……善処する。流石に自分から問題を起こすような行動はしない。……昨日も証拠は残さなかったしな」
「だと良いんだけどねぇ」
何でそんな意味深なことを言うんだよ。流石に二日連続では絡まれないだろ。昨日わざわざあのチャラ男が帰ってこないことを示したんだしな。……一応ヴェノムを出しておくか。
『……ヴェノム、出てこい』
『… またか?またなのか?また抱えられるのかよ』
『おい、外に出れるだけ良いだろ。俺らなんかずっと影の中からてめぇの様子を見てるしか出来ないんだからな』
『主殿、リードの言う通り外に出して欲しいのだが……』
ふむ、そんなに暇なのか。長生きしてて余り文句を言わないフェンリルすら言うんだからよっぽどだよな。……どっか森の奥とかに家を作ってそこで眷属達を自由にさせるか?そういうのも考えておくか。
『……分かった。何か準備しておこう』
『おう、なるべく早くな』
『頼んだぞ主殿』
俺は影から出てきたヴェノムを抱えた。そのままギルドの中へと入り昨日実験のために魅了した男へと近づいた。しかし、酒場の端っこで 酒を飲んでいた男が歩いてきてに遮られた。
「仮面の嬢ちゃん、ちょっと俺に付き合ってくれ。すぐに済む。後ろのスタイルの良い奴もなぁ。ん?外套の嬢ちゃんは来なくても良いぞ」
何でこうなるんだよ。俺は何もしてないのに何故だ……。ジャックだけ来なくていいみたいだし、魅了している男に預けておくか。……今後一緒に行動してもらうからこの時間である程度会話して欲しいからな。
「……分かった。手短に頼む。今日は冒険者登録したいから」
「それは嬢ちゃん次第だな。俺の質問に嘘をつかずに本当のことだけ答えたら早く終わるかもなぁ」
俺たちが男の後ろを着いていくと昨日チャラ男を殺した路地裏まで来た。俺たちを連れてきた男は、丁度ヴェノムがチャラ男を溶かしきって魔力に分解したところで振り返ると威圧しながら問いかけてきた。
「さて、じゃあひとつ質問をしよう。嬢ちゃん、いやお前は昨日ここで人を殺したな?多分その抱えてるスライムとかで溶かしたんだよなぁ?」
……何でバレてんだ?昨日はちゃんと証拠が無いのを確認してから帰ったのに。もしかして誰か見てたのか?うーん、でも周りに気配とか無かったしなぁ。殺気でバレたかなぁ。こいつ人間なのに気配とか歩き方とが不自然な程に静かだからな。……鑑定してみるか。ステータスとかスキルで何でバレたのか分かるだろ。その前に思考加速をしておくか。
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種族:ヒューマノイド
名前:ブラッド・ローレンス
年齢:29
レベル:100
HP:12000/12000
MP:7400/7400
SP:8800/8800
スキル:『鑑定LvMAX』『気配感知LvMAX』『スタミナ回復速度LvMAX』『魔力回復速度LvMAX』『並列演算LvMAX』『思考加速LvMAX』『魔力感知LvMAX』『魔力操作LvMAX』『身体強化魔法LvMAX』『火魔法LvMAX』『雷魔法LvMAX』『神聖魔法LvMAX』『神剣LvMAX』『毒耐性LvMAX』『自己再生LvMAX』『未来予測LvMAX』『縮地LvMAX』
称号:『亜神』『冒険者』『剣聖』『竜殺し』『神の使徒』『不老』『元人間』
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……あれ、おかしいな。何で人間がこんなに強いんだ?いや、元人間か。……いやいや、そういうことじゃなくてこのステータスはおかしい。スキルは、まぁ『鑑定』とかは例外で努力すれば手に入るものばかりだから気にしないけど、ヒューマノイドって何だよ。元人間ってなんだよっ。………とりあえず落ち着いて一つ一つ確認していこう。その後に考えれば良い。
『ヒューマノイド』
人間に良く似た人口生命体。主に神などの上位存在が作り出す。能力は人間とは比較にならないほど高い。
『神剣』
神の剣技。剣を極めたものが辿り着く領域。人間では寿命のある内に辿り着くことが不可能とされている。
『亜神』
神の眷属が不完全に進化したもの。時が経ち魔力が増えると純粋な神へと進化することが可能。
『冒険者』
冒険する者。魔物との戦闘時にステータスに補正がかかる。ステータス量によって補正に誤差がある。
『剣聖』
人類最強の剣士。生物との戦闘時に剣を使用する場合、技能に補正がかかる。
『竜殺し』
ドラゴンを殺した者。ドラゴンとの戦闘時に能力に大幅な補正がかかる。ドラゴンの血肉を食らうことでこの能力を強化する。
『神の使徒』
神々の使い。神と眷属のような繋がりが発生する。熟練度と経験値の獲得量を増やす。
『元人間』
人間を辞めた者。変化した種族特有のスキルや称号を獲得できるが、人間特有のスキルや称号も獲得することができる。
……うん、俺の天敵だな。負けることはないけど、リードとかは厳しいんじゃないか?今のステータス的には圧倒的に勝ってるけど、『竜殺し』の補正次第では負けそうだな。……『神剣』ていうスキルは気になるしコピーしておこう。槍とか弓バージョンも獲得したいな。技術的には十分獲得出来るだろうし何で獲得できないんだ?
《スキル『複製』の能力により、スキル『神剣』を獲得しました》
《スキル『神剣』に『剣術』が統合されます》
無事に出来たな。特に剣の扱いが上手になった実感は無いけど大丈夫だよな?……後で確認しておくか。それよりもそろそろ話を聞いてあげよう。いくら思考加速を最大で発動させてると言ってもいつまでも考えているのはつまらないよな。
俺は思考加速を解除し、ブラッドの話を聞き始めた。何も反論せずに黙って聞いていると、なんとこの男俺が魔物だと言うことまで考えているらしい。ここに残っていた魔力の残滓の波長が魔物のそれだったらしいがヴェノムのだと思うだろ普通、と考えていたら魔力の質が違うとか言ってきた。仮面を被っていて気づかれなかったと思うが、その時の俺の顔は冷や汗やらなんやらで酷かったと思う。あと、途中で鑑定してきたので軽く妨害しておいた。別に偽装して見せても良かったけど、なんとなく妨害しておいた。
「ということでお前の正体はバレてんだよ。さっさとその認識阻害の仮面を外して俺に殺されろ」
「……嫌だと言ったら?」
「問答無用で殺す」
「……そうか、なら仮面を外して全力で抵抗させてもらう。さっきは妨害したけど今度は見せてやるよ。……後悔するなよ?」
俺は仮面を外してブラッドが鑑定出来るように耐性や妨害を解除し、ブラッドに鑑定することを許した。
「はっ、魔物の癖に言うじゃねぇか。良いぜ見てやんよ」
瞬間ブラッドが鑑定を発動させた。体の中身を余すところなく見られるような不快感が発生し、ブラッドが俺のステータスを見ていることを確認する。
「……おい、お前偽装してるだろ。そういうのは俺に効かないからさっさと本当のステータスを見せろ。……お前が神とか転生者とか俺的には認められない」
「……?何言ってんだよ。何も抵抗もしてないし偽装もしてないぞ?……というか、それを知ってて俺に挑んで来たんじゃないのかよ」
「フフフフ、君は本当に面白いね。実はね昨日、君の殺気が一瞬漏れてたんだよ。彼はそこからここにきて魔力の残滓を見つけて君を特定したんだろうね。だから決して君の実力を知ってた訳では無いよ」
俺が本心からブラッドに尋ねると後ろからラプラスが笑って説明してきた。それを聞いたブラッドは若干頬を紅潮させていた。俺のステータスを見たからかそれともその体の性質ゆえか体が硬直してしまっているらしい。
「……そういうことで俺は人を殺したけどお前はそんな俺をどうしたいんだ?……殺すと言うなら抵抗させてもらう」
「なんかいいや。神だと認識してしまったせいで敵意も湧かなくなったし、死んだ奴もクズだったからお前が人を殺したこと自体は問題じゃなかったんだよ。……人類に敵対するのかそうでないのかを知りたかったんだよなぁ」
ブラッドはそう言いながら俺に向かって頭を下げると今までの雰囲気を一変させてどこかふざけている雰囲気になった。それを見た俺はブラッドが何をしたかったのかいまいち分からず、ラプラスの方を見てもう一度説明を求めた。




