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弟子入り

 やばかった。え?レベル37って何?『勇者』補正の俺でも3日間狩り続けて一桁だぞ。こいつってこんなにヤバいやつだったの?


 それは置いといて、いや置いとけないが。まずは見たことないものがあるから確認していくか……。闇魔法てのはなんなんだ?


『闇魔法』

 魔の者が使う魔法。精神支配や召喚魔法などがある。


 物騒だなっ!いや、もっと視界を阻害したりする魔法なのかと思ってた……。でも、召喚魔法が魅力的だからコピーしちゃう。『念話』ってのは文字通り念話なのか?


『念話』

 脳に直接語りかけることができるようになる。レベルによって使える距離が異なる。


 おお!今の俺に必要な会話方法じゃないか!これもコピーだな!


《スキル『模倣(コピー)の能力によってスキル『闇魔法』と『念話』を獲得しました。》


 よし。……称号の『悪魔』と『嘘吐き』ってのはどんな能力なんだ?嘘しか言えないとか?


『悪魔』

 悪魔の持つ称号。肉体が滅んでも魂は魔界へと戻り時間が経てば肉体は再生される。


『嘘吐き』

 自分の言ったことが信じられやすくなる。一種の思考誘導。


 は?チートだろそれ。これじゃあ絶対倒せないじゃん。一時的には無力化できるだろうけど、また復活するから戦うだけ損だ。やべいな、早く逃げないと。


 だが、その判断をするには少し遅かったみたいだ。フルフルは既に俺に気が付き臨戦態勢に入っていた。


『ふむ、ドラゴンか。珍しいな』


 喋った!?……あぁ、念話の効果か。本当に話してるように聞こえるんだな。


『ん?どうした?喋れぬのか?』


 これは会話で切り抜けられるんじゃないか?結構理性的そうな声だし。見た目と中身は必ず同じとも限らないしな。


『あ、すいません。大きな気配がして気になったので寄っただけです。もう、ここには近寄らないので構わないでください』


 ……嘘は言ってない。前回は気になって立ち寄っただけだからな。今回は殺害目的だけど。


『ふん、そんなことで我から逃げられると思ったのか?』


 ひえぇ、駄目でした。相手は戦う気満々じゃないですか。……死ななければ勝ちだろ。


『ふん、動かぬのか。では、こちらから行くぞ』


 その言葉と同時にフルフルの姿が消える。瞬間、背中に強い衝撃を感じたかと思えば、目の前に地面が迫っていた。


「ガッ!?」


 衝突。同時にすり下ろすような痛み。勢いのままに地面とキスし続ける。止まった頃には顔は燃えたように熱く、体は針で刺したような痛みが覆っていた。


 いってぇ。まさかだが、あの一瞬で背後に回って攻撃したのか?見えるとか反応するなんてレベルじゃ――


 ズキリ、と背中に痛みが走る。視線を向ければひび割れた鱗。次にわずかに赤熱した白かった鱗。それからひしゃげた翼。


 なんだよ……これ……ィッ!?


 遅れて痛みが顔を出す。背中が熱した真夏のアスファルトのように熱く、込み上げてきた胃液が喉を犯す。堪らず吐き出し、痛みに転げ回りながら全身を掻きむしる。地面のひんやりとした感触すらも欲して、痛みから必死に逃げた。


「グウぅぅっ!」


《熟練度が一定に達しました。スキル『痛覚耐性』を獲得します》


 新たなスキルを獲得したことで、気休め程度に痛みが和らぐ。ギリギリ思考できるかどうかぐらいだが、今の状況ではそれて十分だった。


 落ち着け。深呼吸だ。ふうぅ……よし。まずはフルフルの気配を探そう。……見つけた。前方のやや右寄り。動いた!


「ッ!!」


 また何も見えなかった。今度も背中だが、一発目程の威力ではない。しかし、痛みは一発目とくらべるまでもなかった。


《熟練度が一定に達しました。スキル『痛覚耐性』のレベルが上がります》


 切り替えろ。痛みに構うぐらいだったら状況把握だ。攻撃を喰らう直前に放った火魔法は……当たってないな。だが奴の動きに反応できたんだ。次は動きを予測して先に当てる。


《熟練度が一定に達しました。スキル『予測』を獲得しました》


 考え続けろ。奴はどう動く?今を見るんじゃない。先を視んだ。頭をとめるな、思考しろ。


 フルフルがまた俺の背後へと動いた。


(ここだ!)


 俺は火魔法のファイヤーアローを10本フルフルの気配のある方向へと放った。


(嘘だろ)


 首へ強い衝撃が走る。全て受け止めても無傷なフルフルの姿を最後に、闇に飲まれた。






『ふむ、我のあの速度に対応してくるのか。これは、あの方に任せたら化けるかもしれぬな。どう成長するのか楽しみだ。クククク』


 そう言うとフルフルは俺を脇へ抱えた。そしてそのまま例の木を投げても音がしない、そこの見えない谷へと飛び降りた。


―――――

―――


『久方ぶりですな、アマルテイア殿』


我の正面には暗闇の中、神々しい光を放つ一頭のヤギが堂々と立っている。


『その久方ぶりの来客が鹿の悪魔ですか。私も堕ちたものですね』

『何度も言っておりますが我の名はフルフルですので、そうお呼びください』

『ふん。悪魔のことを名前で呼ぶ気はありません。貴方はまだ能力を使わないので許していますが、本来ならあなた達悪魔は近づかせません』


 この方は毎回我のことを悪魔扱いして――実際悪魔なのだが――名前で呼んで下さらぬのだ。我はこれだけ尽くしているというのに……。


『それで、今回は何用ですか……?ようやく例の魔法陣の中に入る気になりましたか?もしあの中に入るのなら名前で呼びますよ?』


『……我は悪魔であることに誇りを持っております。なので、その魔法陣に入る気はございません』


 また言ってきましたか。我は悪魔の時には嘘で相手を騙すが、三角形の特殊な魔法陣の中に入ると真実を話す天使になる。なので、あの方は毎回我をあの中に入れと勧めてくるのだ。


『ふぅ、そうですか。それで、そのドラゴンはどうしたのですか?』

『上層で見どころのある者を発見したために連れて来ました。気が向いたら育ててやってください』

『貴方がその評価ですか……。動きは見ましたか?』

『はい。我の動きを2度受けただけで、反応してきました』


 あの時は本当に驚いた。最初は我の攻撃を受けるだけの雑魚だったのに、2度目には反撃してきたのだ。凄まじい成長速度だと思う。


『それは本当ですか!?上層に貴方の動きについてこれる者がいたのですか……』

『これは推測ですが、戦闘中に成長したのでしょう』

『分かりました。このドラゴンを貴方を倒せるぐらいに育てることにします』


 よかった。この方に任せれば安心だ。さて、どのように成長するのか楽しみだ。






 目が覚めたら、目の前に山羊がいた。あれ?俺ってフルフルに殺されたんじゃ……。


『目覚めましたか……。私はアマルテイアと言います。これから、あなたを育てるものです』


 アマルテイア?それって山羊座の名前じゃないの……?とにかく、ステータスを確認するか。


――――――――――

種族:神獣


名前:アマルテイア


年齢:253


レベル:46


スキル:『スタミナ回復速度LvMAX』『魔法感知LvMAX』『魔力操作LvMAX』『神聖魔法Lv8』『雷魔法Lv7』『身体強化魔法Lv9』『念話Lv4』『痛覚耐性Lv7』『未来予測Lv4』『人化Lv6』


HP:3700/3700

MP:3300/3300

SP:3500/3500


称号:『神獣』『アイギスの盾』『守護者』『育成者』

――――――――――


 やべぇ。

 

 何がって?全部だよ。まずは種族が神獣というところと年齢。神の獣とか絶対やばいじゃん。年齢もフルフルの2倍近く生きているし。


 レベルもすごい。こちらはフルフルとたいした差は無いがスキルのレベルが高い。見たことないスキルがいくつかあるし、『人化』。これは何としてでも欲しい。


 ステータスはフルフルよりも少し高いな。称号はとても優しそうだ。分からないやつは鑑定していこう。


(鑑定)


『神聖魔法』

 アンデットや悪魔に対して威力が高くなる。レベルによって使える魔法が異なる。


『雷魔法』

 雷属性の魔法を使えるようになる。レベルによって使える魔法が異なる。


『未来予測』

 事象の少し先の未来が見えるようになる。レベルによって精度、見える未来が異なる。


『人化』

 人間の身体に変化する。レベルが上がるとより人間に似る。


『神獣』

 神に近しい獣。元の種族の限界を超えた者。成長限界が無くなる。


『アイギスの盾』

 表皮を鋼鉄化し自らの身体を全てを弾く盾へと変える。


『守護者』

 敵の攻撃を受けた時に守る者がいた場合、自らへと敵の攻撃を寄せる。全ての攻撃への耐性が上がる。


『育成者』

 育てている者への加護を施す。加護を施された者は経験値・熟練度の獲得量が増え、レベルごとのステータス向上値が上がる。


 詳しく見ると凄さが際立つな。だけど、これは全てレベルが上がってから真価を発揮するものばかりなのが残念だ。称号の効果も他者への恩恵があるものが多い。これを見る限り、悪い奴ではないのだろう。


 人化はなんとしても欲しいし、模倣(コピー)するか。


《スキル『模倣(コピー)』の能力により、スキル『神聖魔法』『雷魔法』『未来予測』『人化』を獲得しました。スキル『予測』はスキル『未来予測』へと統合されました》


《熟練度が一定に達しました。スキル『未来予測』のレベルが上がります》


 ん?『未来予測』て『予測』の上位互換だったのか。んー、まぁいっか。コピーして直ぐにスキルのレベルが上がったのはいいな。


『どうしたのですか?何処か身体に異変でもありましたか?』

『あぁ、いえ。それよりも、俺を育てるとはどういう意味ですか?』

『?言葉の通りの意味ですよ。私はあなたがこの下層で、1人で生きていけるように育てるつもりです』


 本気だったようだ、どうやら俺はこれからこの人(山羊?)に弟子入りするらしい。

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