アンデッド創造②
フランチェスカ・ワルスカ……?あぁ、そう言えばステータスで見たな。……でもなんで今そんなのを作ったんだ?
「あ、あのね……ニールちゃんの魔力を大量に使っちゃったけどこの子は成長するんだ」
そんなことできるのか?魂を使用してないからステータスとか能力は成長しないだろ。……見た目の成長は意図的に出来るかもしれないけど。
『そ、そんなことはないかもしれないよ。まだ分からないけど、私達のゴーレムも私達が成長したらステータスが上がるし……』
『……そうなのか?』
『……う、うん。ちょっと叡智で調べてみるから待ってて』
もしそうならかなり良いことを知れたな。……シルビアが調べ終わるまでは清川と話しておくか。どんな風に作ったのかも知れるかもしれないからな。
「……どんな風に成長するんだ?お前が強くなれば同時に成長するのか?」
「う、うん多分。村で見たおとぎ話にこんな感じのお話があったからやってみたんだ。イメージしかなかったから大量の魔力を使っちゃったけど次からはもっと少なく出来ると思うよ」
なるほどそういう書物から新しい魔法を作ることができるのか。これは地上に行ったらまずは本が沢山あるとこに行きたいな。
「……それじゃあ後で術式を教えてくれ。俺が作ったやつにも適用出来るかもしれないからな」
「う、うん。分かった……」
よし、言質は取ったな。これならあの気持ち悪いアンデッドをなんとかできるだろ。神聖魔法を使えば浄化できるけど、わざわざ作ったんだし有効活用したいな。成長すれば俺の望み通りの外見になるだろ。
『……わ、分かったよ。この魔法はアンデッド創造と死霊魔法を複合魔法だったよ。能力はアンデッドの成長を可能にするんだって。過去の実在した人物の姿にしないと発動しないんだって』
『……そうか。でもどうやって成長させるんだ?魂を入れてないのに』
『そ、それはただの眷属化なんだって。新たに擬似的な魂……感情を作り出すことで成長を可能にしてるらしいよ』
……確かにそれなら出来そうだな。死霊魔法を並行して使えば眷属化も可能だしアンデッド創造を使えば魂が必要なくアンデッドを作れる。
これはかなり強いんじゃないか?時間をかければいつかアンデッドの軍団とか作れそうだな。
『う、うん。以前にも人間がアンデッドの軍団を作ったみたいだよ。……せ、制御出来なくて暴走したみたいだけど』
へぇ、そうなんだ。そいつも馬鹿だなぁ。制御出来ない力を手に入れても破滅しか待ってないのにな。
とりあえずこの魔法は後で清川に術式を教えて貰うか。……こいつは適当にこの階層を自由行動させておくか。
俺は清川に術式を教えて貰って、シルビアに改良してもらい俺が作ったアンデッドに新しく魔法をかけて自由行動を命じた。
アンデッドは理解してるのかしてないのか体中にある口から「あ〜?」と、声を出しながら俺たちから離れていった。
「あれ、あの子行っちゃうけど良いの?」
「……大丈夫だ」
「そ、そうなの?」
「君は今度は何をするつもりだい?」
失敬な。俺を問題ばかり起こす何かだと思ってないか?普通にアンデッドを自由にしただけじゃないか。俺はそこまで問題児じゃないだろ。……今まで問題ばかり起こしてる気がするけど。
「……それでお前はいつまでそいつとイチャイチャしてるんだ?俺の姿をしてるから凄く背中の辺りがゾクゾクするんだが……」
「……お前が嫌ならやめる。……そんな目で見ないでくれ」
……気持ち悪い。というかこいつ本当に宮沢か?以前の明るい雰囲気と態度からは想像出来ないんだけど。
「なぁ、お前大丈夫か?アンデッドになってから以前よりも気持ち悪いぞ……」
「……俺は元々こういう性格だ。今まで俺の好みがいなかったから知らなかったんだろ。俺は好みの女の子にはこんな感じになるぞ」
「そうか。それじゃあ今のお前も今の俺の姿が無ければ以前のお前になるのか?」
「……そうだ。口調は戻せなさそうだが、態度は命令すれば戻すぞ」
まさか宮沢がそんな性格だったとは……。どうしよう、戻すか?でもわざわざ強制してまで戻す必要はあるかなぁ?
『……ニールちゃんがそうしたいならすればいいんじゃない?わ、私は別に大丈夫だし』
『そうか。……じゃあ少しだけ抑えようかな。強制はしないけど』
うん、そうしよう。別にそのままで良いが、他人がいるところでは抑えてもらうか。一人の時間を作ってあげればそれで大丈夫だろ。
「じゃあお前が一人の時にはやっても良いが、他人がいる前では抑えてくれ。……これは命令じゃないからな」
「……分かった」
宮沢はそう言うと俺にそっくりなアンデッドを影に入れた。
ふぅ、これで大丈夫だな。何度も言うが宮沢は常識は持ってるんだしちゃんと抑えてくれるだろ。俺が仮面を被ってれば大丈夫らしいし。
「それじゃあレベル上げを続けるか。……そうだな、お前らも戦えるようになってもらいたいから独自に魔物を殺してもらうぞ」
「……えっ」
……ん?何か清川が挙動不審になったな。もしかして戦えないのか?魔物に食われて殺されたからトラウマになっちゃったのかなぁ?……ステータス的にはもう負けないんだしそんなことはないか。
そもそも神聖魔法じゃないと死なないんだし、魂は俺が回収できるし、痛覚も遮断できるから攻撃をくらっても痛くないしな。
「……あ、あのね。私魔物が殺せないと思うんだ……。その、食べられたのを思い出しちゃって身体が動かなくなると思うの」
……やっぱりか。あれ、でもさっきは普通だったよな?俺が近づけなかったからそこまで怖くなかったのか?……そうだな、精神に干渉して治すのが一番楽だと思うけど、自分で克服してもらうか。
「それでもやってもらう。……お前はもう大抵の魔物には勝てるからそんなに心配しなくて良いぞ。魔力もできるだけ送るから遠距離から魔法を放てば良いしな」
「うぅ、でも怖いし。……ニールちゃんはどうして魔物が怖くないの?」
魔物が怖くない理由ねぇ……。普通に俺よりも弱いからじゃね?後は本能で相手の危険度がある程度分かるからだろ。危険じゃないと分かってる奴を怖がる訳がないからな。
『……ざ、雑だね。私たちが魔物を恐れない理由は多分ドラゴンの戦闘本能が理由だと思うよ?相手を恐れた時点でもうその相手にはか、勝つことが不可能になるからドラゴンは恐れることを知らないんだよ。……ニールちゃんは前世の記憶があるから危険だと分かったらす、少しだけ怖がるけど』
『へぇ……。じゃあ清川に魔物の危険度的なものを分からせればいいか。それなら怖がらないだろ』
『う、うん。それなら大丈夫なんじゃない?ニールちゃんも言ってたけど、危険じゃないならこ、怖くないしね』
……よし、それじゃあそうするか。怖くないじゃなく、危険じゃないと認識させないといけないんだよな。そうしないと俺の力だけでトラウマを無くしちゃうからな。
俺は清川との繋がりから精神に干渉して魔物は危険じゃないと認識するようにした。アンデッドの精神攻撃無効の特性のせいでシルビアと協力しないと改竄できなかったが、無事に魔物に対する認識を変更できた。
「あ、あれ?今ニールちゃん私に何かした?」
「……あぁ、ちょっとな。魔物怖くなくなるまじないみたいなもんだ。とりあえずお前が瀕死にならないように守るアンデッドを新しく作るから頑張ってくれ」
「……う、うん」
清川に言った通り俺は新しく猫型のアンデッドを作り、そいつに清川が危険な時は守るように命令した。
大丈夫そうだな。魔物に対する認識を変更したけどそれでも怖くて動けなかった時のために保険も作ったしな。保険のアンデッドが守りきれない魔物が出た時には繋がりから位置を特定して空間魔法で飛べば大丈夫だろ。
「……俺には何かないのか?お前から応援の言葉とか欲しいんだが」
……正直こいつにも保険をかけようとか思ったけど余裕そうだし要らないな。ステータスも高いしトラウマも無さそうだしな。……こいつだけ何もないというのも不平等だな。どうしよう……。
「それじゃあお前が俺が満足する程成長すれば何か一つだけご褒美をあげる。俺に出来ることならなんでもするぞ」
俺がそう言うと宮沢は不気味に口を歪めて笑った。
「……分かった、頑張る」
「お、おう」
今の顔は普通に怖かったな。そんなに嬉しいのか?ちょっと何頼まれるか今から不安なんだけど……。本当に驚く程成長してれば褒美を渡すか。
「……それじゃあ自分達で魔物を探してくれ。……この階層でレベルを上げてもいいけど俺がいるから直ぐに魔物がいなくなると思うぞ?」
「……ニールちゃんに送ってもらうことはできるの?」
……別に良いかな。大して魔力を消費しないし、散らばった方が効率が良いしな。集まる時にも送った階層を中心に探せば良いんだし送った方が後々便利だな。
「別に大丈夫だ。送って貰いたい階層があれば言ってくれ」
「……じゃあアンデッドが沢山いる階層はある?私は種族としての能力を延ばしたいから」
「……あるにはあるけどそこにはたまに人間が来るらしいんだよなぁ。見つかっても負けないと思うけどバレないようにしてくれよ?」
「うん。気をつけるね」
俺は清川の要望した俺が弓の修行をしたアンデッドが大量にいる階層へと転移魔法で送った。その後戻ってきてもいまだにいる宮沢にも清川と同じように送るかと質問した。
「……お前は行きたい階層はあるか?」
「それじゃあ、ここより下の階層に行きたい。詳しい場所は気にしないからここよりも魔物が強い階層に行きたい」
「……分かった。今のお前でもこのより下の階層は危険だから気をつけろよ?」
「……ご褒美の為に頑張る」
……やる気を出すという目的は果たせているのになんか失敗した気がするな。……まぁ大丈夫か。何でもしていいと言っても倫理的に駄目なことは頼んでこないだろ……多分。
宮沢へのご褒美について不安になりつつ宮沢がギリギリ勝てるくらいの魔物がいる階層へ宮沢を送った。もう一度魔物が互いに殺しあっている階層まで戻りラプラスと合流した。
「今から魔物を殺して行くんだけどお前はどうするんだ?着いてくるにしても邪魔はしないでくれよ?」
「君の邪魔なんてしないよ。私には『探知』があるから遠くから見させてもらうね。……有り得ないと思うけど君が危険な時には介入するからね」
「……それで大丈夫だ」
……慢心してる訳ではないけど俺がこの階層の魔物に負けるとは思えないな。でももしかしたらフェンリルみたいなやつがいるかもしれないし必要かな。
『……私もそう思うよ?ま、まだそんな気配はないけど、もしかしたらいるかもしれないし』
『……そうか。魔物を俺が殺している間は周りを警戒しておいてくれ。ラプラスがいると言っても警戒していて損はないしな』
『う、うん』
シルビアとの会話を切り上げた俺はもう一度レベルを上げるために魔物のいる方向へと向かった。結果先程よりも多くの魔物を殺し、レベルもMAXになりこの階層を離れようとすると一匹の魔物が話しかけてきた。




