アンデッド創造
『魔法陣の構成』→『術式』にします
さて、それじゃあ魔物共を虐殺していくか。スキルのレベル上げもしつつ俺自体のレベルも上げるならやっぱり魔物を殺すのが一番効率が良いだろ。
ここら辺の階層は眷属達が散らばってるからあまり魔物は狩れないだろうな。……よし、まずは空間魔法のレベルを上げるか。瞬間移動とかも出来るみたいだしな。……空間魔法ってどんな魔法が使えるんだ?
『……く、空間魔法なら一つだけ改良してあるやつがあるよ。この魔法ならニールちゃん一人でも普通にせ、制御出来ると思うよ』
俺が空間魔法について悩んでいるとシルビアが話しかけてきた。
『え?もう出来たのか?まだ頼んでから30分も経ってないと思うんだけど……』
『わ、私だけ思考加速する方法が見つかったからニールちゃんよりもさ、作業効率が上がったんだ』
マジか……。シルビアの意識が発生してからまだそれ程経ってないけど、なんか既にこいつに負けてる気がするんだが……。
いくら魔法の知識があると言ってもこの成長速度はヤバいだろ。……他人から見た俺ってこんな感じなのかな?
『……そうか。それじゃあ術式を教えてくれ。それと能力は何なんだ?』
『え、ええと、元々は視認しているところに瞬間移動できる魔法だったんだけど、千里眼の視界にもて、転移できるようにしておいたよ』
『……助かる。それじゃあ引き続き魔法の開発を頼む。休みたくなったり聞きたいことがあれば中断してもいいからな』
『うん。ニールちゃんも頑張ってね』
俺はそこからは清川達を影に入れて、シルビアに作ってもらった魔法をひたすら使い続けた。途中何度か魔力を回復させたり、シルビアが魔法陣を改良したりしたがほぼぶっ通しで空間魔法のレベル上げをし続けた。
千里眼も同時に使って転移していたので千里眼のレベルも上がり、今では4、5階層先まで見れるようになった。
「ふぅ、空間魔法のレベルもMAXになったし、そろそろ本格的に移動するか。おいラプラス、これからかなり下に降りるから手を握ってくれ」
「……まさか君から私を連れていくような発言をしてくれるなんて、私は嬉しいよ。まぁ、もし転移で逃げられても『探知』と『叡智』で探しだすつもりだったんだけどね」
……あれ、なんかこいつの俺に対する雰囲気が仮面を被る前の宮沢に似てる気がするな。一つ目の仮面のせいでで表面は読み取れないけど何となく似てる気がするんだが……。
まぁ、いいか。まだ明確にそういう発言をしてる訳でもないし、今後にもしそういう発言があるならば何とかしないとな。
「よし、それじゃあ行くぞ。ちゃんと掴まっとけよ」
俺は千里眼で5層先の景色を視認して転移した。それをもう二度繰り返し、計15層降りた。
そこは一面が荒野のような光景が広がっていた。上層の自然豊かな階層とは正反対で木々の代わりに大量の魔物が互いに争いあっていた。
「……一度ここを突っ切ったことはあったけど改めて見ると酷いな。今の俺の目的に合ってるけど、あまりここには来たくなかったんだよなぁ」
「そうだったのかい?君は合理的だけど、変なところで感情的なんだね」
「う……気持ち悪い」
「……何故こいつらは意味もなく殺し合ってるんだ?」
『……に、ニールちゃん?私の記憶だと本当にこの階層は嫌ってたと思うんだけど……』
『レベルを上げたら直ぐに上がるつもりだ。スキルの精度もレベルも実戦が一番効率良く上がるからな』
『……そうだね』
……よし、それじゃあさっさとここからお暇したいし始めるか。ええとまずは『身体加速』を発動させて、『水流操作』で血流を加速させてと。
……う、痛覚は遮断させておくか。傷に気づけなくなるけどこの全身を駆け巡る痛みにはちょっと耐えられないかな。後は軽い思考加速で魔法の発動速度を上げてと。……準備は完了だな。
魔物達を殺す準備を終えた俺の体は普段アルビノのように白い肌も血管が浮き上がり、赤くなっていた。かなりの熱を発しており、周りの空気が陽炎のように揺らめいている。
目も血走り、元々赤目だったがより赤くなり既に深紅に近く、白目にも血管が浮き出てほとんど真っ赤になっていた。
あれ、かなり魔力を放ってる筈なんだけど全然魔物が寄って来ないな。こちら側から攻撃しないと気づかないのか?
『に、ニールちゃん。仮面を外さないと来ないと思うよ?それともこのまま大規模魔法を放っちゃう?』
『あぁ、そういうことか。……そうだな無理に正面から攻撃する必要もないしそうするか』
『そ、それじゃあ私は魔法陣を構築してるね。ニールちゃんは魔力に近寄ってくる魔物を処理しといて』
俺は背中からフェイルノートを取り出して物質創造で矢を作った。魔法を纏わせて近くの魔物に狙いを定め放った。
狙い通りに魔物の頭を貫き、矢に纏わせた劫火の息吹と同じ炎が体に広がり其れがまた別の魔物に広がるという連鎖を引き起こした。
《経験値が一定に達しました。レベルが2上がります》
《熟練度が一定に達しました。スキル『能力創造』『探知』(ry》
……ふむ、やっぱりこの炎は酸素ではなく魔力を燃料にしているな。植物では直ぐに魔力が枯渇して植物が溶けたけど魔物ならばある程度の魔力があるので他の魔物に広がるくらいは炎がもつのか。
『……こ、構築終わったよ。いつでも発動できるように待機状態にしてあるからニールちゃんの準備ができたら言ってね』
劫火の息吹の炎を観察していたら魔法陣の構築が終わったシルビアが若干呆れた雰囲気を纏った声を掛けてきた。
『分かった。もう少し待ってくれ』
『……うん』
それじゃあ魔物共を集めるか。そうだな、適当な魔物にヘイトを稼がせるか。精神系の魔法ならここにいる魔物達は簡単に集まってくれるだろうな。
……あれにするか。ええとこれをこうしておけばいいか。よし。こんな感じでいいかな。それじゃあ魔法陣を構築してと。
「……【敵意増幅】」
俺が魔法を唱えると対象にした魔物が淡く光り始めた。次第にその魔物に周りの魔物が集まり一斉に襲い出した。
うん、うまくいったみたいだな。精神誘導で対象の感情を増幅させてそれを念話俺を中継にして他の魔物に伝えるだけの魔法なんだけど、今回は魔物相手だから成功したな。
対象にした魔物の敵意もかなり増幅されたし、その増幅した敵意を受けた魔物の怒りも凄かったので失敗する訳がなかったんだけどな。
『それじゃあシルビア、放ってくれ。あの俺が集めた魔物共の真ん中にな』
『う、うん。……【雷撃】』
《経験値が一定に達しました。レベルが19上がります》
《熟練度が一定に達しました。(ry》
シルビアの詠唱と同時、魔物の頭上が光ったかと思うと地面から爆ぜた。百数匹は群がっていた魔物達も一発で半数まで減らし、その生きてる残り半数も既に戦闘不能な状態だった。爆ぜた地面もそこに隕石でも落ちてきたかのようなクレーターが出来ており魔法を受けたはずの魔物の姿はなかった。
魔力も全く減っておらず、今からずっと打ち続けてもその間も魔力は回復するので60発くらいは打てそうだ。
『……これなんの魔法だ?』
『た、ただの雷魔法だよ?範囲を広げたから威力は落ちてる筈なんだけど、世界神さんのけ、眷属になった影響で威力が上がってるんだと思う』
『……そうか。ありがとう』
そんなところにも影響が出るのか。普通に経験値と熟練度の獲得量が増えるだけだと思ってたけど、普通に能力が上がるんだな。
……これからは威力には気を付けておかないといつか、取り返しのつかないことを仕出かしそうだな。注意しておくか。
「な、なに今の魔法」
「……流石はニールだな」
「どんどん君は化けも……強くなっていくねぇ」
俺が今後の魔法について考えていると連れてきたやつらがそれぞれ言いたいことをいって言った。
今絶対化け物って言おうとしてたな……。まぁ、そうだよね。こんな惨状を作り出した生き物がただの生き物な訳がないよな。でも……それでも、一つ目の仮面をずっと付けているラプラスには言われたくなかった……。
「……それじゃあ俺は生きている魔物にトドメをさしてくるからここから動かないでくれ」
「分かっているさ」
俺はシルビアが魔法を打った地点まで移動し1匹ずつトドメをさしていった。ついでにスキルのレベルも上げたいのと使ってないスキルの効果を確認する意味で様々な処理方法を試した。
身体加速で高速で殴り殴殺、水流操作で失血死、劫火の息吹で焼死、闇魔法で精神を弄りショック死、万能薬で猛毒を作り毒殺、体を分解させたり、暴食スキルで魔物を魔力に変えて食ったりした。
ふぅ、ある程度スキルの能力は理解出来たな。いや、使い方と効果は知ってるんだが実際使用してどうなるのかとかは知識と違うところがあるからな、確認しとかないと不安だからな……。
……そうだな。死体は沢山あるんだしアンデッド創造を使ってみるか。死霊魔法とはどんな違いがあるんだろうな。
俺は散らばってるいる魔物の死体を一度、三箇所に集めた。清川と宮沢も呼んで三人で実験をすることにした。
「それじゃあお前らもアンデッド創造を使え。今後のためにも自分の能力を把握しておくことは大事だからな。使用した魔力もある程度なら俺が補うから遠慮なく使ってくれ」
「う、うん」
「……ニールが頼むなら」
……これ宮沢に仮面の効果効いてるか?大人しくはなったけど大して俺に対する態度が変化してないんだが……。もうちょっと様子を見てみるか。
……始めるか。清川達も準備は出来てるみたいだしな。
「それじゃあ俺は始めるが、お前らは好きなタイミングでやっていいぞ。……魔力は全て使ってもいいからな?お前らアンデッドだから死ぬことはないし」
「あまりその事は言わないで……」
「……たとえニールでもそれはもう言わないで欲しい」
「……そうか。すまなかった」
あまり言われたくなかったのか。……少し悪いことをしたかもな、今後は控えるか……。
俺は清川達に謝罪し、魔物の死体にアンデッド創造のスキルを使った。スキルを発動させると、死体が次第にくっつき歪な形になって起き上がった。
「……あれ?」
『……に、ニールちゃん?何これ』
「な、何この生き物」
「……これはニールが作ったのか?」
「き、君は何故このような醜悪な生き物を作り出したんだい?」
「あ〜、あ"〜?」
恐らく俺が作り出しただろう生物が悲鳴にも雄叫びにも聞こえる声を出した。変化は未だに続いており、最初は魔物がまとまるだけだったが今は俺の魔力を消費して新たな体を作り出してどんどんと巨大化している。
変化が収まった頃には眼球が複眼のように纏まり、複数の口が現れておりそこから時々声を発している。多数の頭と背中からは複数の羽、八本ずつあるうさぎと蜘蛛の足が生えていた。
『……な、なぁシルビア。死霊魔法との違いは発見できたか?』
『い、一応。まずは魂を使用してない。殺したま、魔物の魂を集めてあるけどひ、ひとつも減ってなかった』
いつの間に集めてたんだよ……。まぁ、そのお陰で違いを発見出来たんだけどな。……だけどなんか悔しい。なんでだ?
『他には?』
『後は私たちのイメージ通りにさ、作成されないこと』
……確かに俺はこんな化け物は想像していなかったな。普通にゾンビを想像して作った筈なんだけどな……。もしかしてこのスキル制御出来ないんじゃ?
『……せ、正確には制御はできるの。作成の中継くらいは……あ、後は清川ちゃん達の結果を見ないと何とも言えない』
ふむ……。それもそうか。このスキルもマクスウェルからコピーしたんだしな。アンデッドなら完璧な制御ができるかもしれないもんな。どちらにしろ比較対象がないと分からないか。
「わ、私も作るの?」
「……そうだ。俺みたいにはならないから大丈夫だ……。多分」
「……今多分って言ったよね?」
「……言ってない」
「絶対言ってた」
しつこいなぁ。もう眷属として命令しちゃうか?あまり元クラスメイトとして使いたくないんだけど……。
「……俺は別にニールの頼みならなんでも聞く」
「……仕方ないかなぁ。命令されたらどうせやらなきゃいけないんだし、自分でやった方がいいよね」
宮沢がそれが当然だと言うように清川に向かって言うと清川も諦めてアンデッド創造のスキルを使う準備を始めた。
宮沢の方が先に始めていたため先に死体が変化し始めた。死体は大体俺と同じくらいの大きさになると人型に変化し、変化が終わるとそこには銀髪赤目の少女がいた。
「……おい。何作ってんだてめぇ」
「……いい。凄くいい。俺の想像通りのニールだ」
きもっ。もうここまできたらいっそ清々しいな。……こいつには何を言っても意味が無さそうだし放っておくか前はこんな性格じゃなかったんだと思うんだけどなぁ。一応常識はあるんだしいつか気づいてくれるだろう。
「よ、よし。私も頑張るね」
清川は自分に喝を入れるために両頬を叩くと目を閉じて集中し始めた。瞬間、俺の身体から急に大量の魔力が引き出されそれらは全て清川に流れ込んでいた。
……こいつは一体何を作るつもりだ?少し……いや、かなり不安なんだけど。何になるか少し興味があるな。
清川は俺から魔力を引き出すと残りの死体全てにスキルを使用した。スキルを使用された死体は俺と宮沢の時と同じようにくっつき変化し始めた。それはどんどんと縮んでいき、最終的には赤ん坊と同じくらいのサイズになっていた。
死体は金髪碧眼で服も何も着ていない赤ん坊に変化し、その赤ん坊は産声のように大声で泣きわめいた。
「やった、できた。ニールちゃんには紹介するね。この子は前世の私……フランチェスカ・ワルスカの姿なんだ」




