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死霊魔法

 俺たちはケイローンのいる階層に繋がる階段を登っていた。上の階層に近づくにつれどんどんと匂いがきつくなっていく。


 何だこの匂い。何かが腐ったような匂いがするな。ドラゴンになって感覚が鋭くなったせいかもしれないけど、これはきついな。いったい何があるんだよ。


『アンデットの巣窟か。本当にこんな所に主殿が修行する神はいるのか?』


 アンデット……?だからこんなに腐臭がするのか。スカアハが言っていた階層はここだと思うんだが、違ったか?……とりあえずこの階層の気配を探ってみるか。


「なっ……。どんだけいるんだよ」


 集中し、周りの気配を探ってみたらありえない数の魔物の気配があった。しかも、こちらに気付いているのか徐々に近づいてきている。


「あぅ〜」


「あ"ぁ〜」


『お、おい、なんだよあれ。なんか近づいできてるぞ』


 そこには某ゾンビ映画に出てきそうなゾンビ達が大量にいた。動きはのろく、手は脱力して皮膚は腐っている。


 うわ、きも。ムカデを見た時もキモかったが、今回はまた別のキモさだな。ムカデの時には生理的嫌悪だったが、今回は人型なので背筋がゾワッとする感じだ。……鑑定しておくか。


 ________________


 種族:ゾンビ


 レベル:16


 HP:900/900

 MP:0/0

 SP:0/0


 スキル:『気配感知Lv6』『魔力感知Lv4』『魔力操作Lv3』『死霊魔法Lv1』『精神攻撃無効LvMAX』『痛覚無効LvMAX』『自己再生Lv4』


 称号:『アンデット』


 体質:不死


 ________________


 あれ、意外とステータス低いな……。ん?死霊魔法があるじゃん!よし、これで世界神から清川と宮沢の魂を預かれるな。

 早く鑑定してコピーしないと。


『死霊魔法』

 死者を司る魔法。アンデット作成や魂を操ることができる。レベルによって使える魔法が異なる。


『精神攻撃無効』

 精神攻撃を無効化する。効果を弱めることが可能。


『アンデット』

 死霊魔法によって発生した者。生者への強い憎しみを抱いている個体が多い。火属性に弱いが、痛みを感じず生者に対する攻撃力が高くなる。


 ちょっと不安なアンデットの称号に文面があったが、コピーするか。ある程度使ってから清川達の魂は預かろうかな。


《スキル『複製』の能力により、スキル『死霊魔法』『精神攻撃無効』、体質『不死』を獲得しました》


《条件を満たしました。称号『不死者』を獲得します》


《スキル『精神攻撃耐性』が『精神攻撃無効』へと統合されます》


 成功したな。後はこいつらを片付けるだけだ。さっさと練習したいし、普通に神聖魔法で浄化するか。


 俺は大量にいるゾンビ達に神聖魔法を当てるため魔法陣を構築し始めた。思考加速と並列演算のスキルも発動させ、素早く大量に狩ることにした。


「……【救済の鎮魂曲(リリーフレクイエム)】」


 魔法を構築し終わり、発動させた。すると、周りのアンデット達の体がボロボロと崩れ始めた。

 全てのアンデットの体が崩れ去り、再生しないことを確認し終わった俺は一度移動してから死霊魔法の練習をし始めることにした。

 移動する前に《経験値が一定に達しました。レベルが8上がります。……条件を満たしました。進化が可能になります》と聞こえた。


 ……意外と何も感じなかったな。人型の魔物だから浄化した時に後悔か罪悪感が発生すると思ってたけどしなかったな。人間とかけ離れていた姿だったからかな?……まぁ、良いか。

 とりあえず最初は練習用に適当な魔力でアンデットを作るか。どんなのができるかな?あまり臭くないやつがいいな。


『……主殿、何をする気だ?』


「ん?あぁ、まだフェンリルには説明してなかったな。俺は複製というスキルや能力をコピーできるスキルを持ってるんだ。それで今ゾンビから死霊魔法をコピーしたからその練習のために一旦場所を変えたんだよ」


『……かなり聞きたいことがあるが、今からやることは理解した。それで死霊魔法の練習をするのならば死体がないのにどうやって練習するのだ?』


「え?もしかしてだけど死霊魔法の発動には死体が必須なの?」


『うむ、死体があるのが最低条件だ』


 そうなのか……。あれ、じゃあなんでこの階層にゾンビがいたんだ?


 俺がゾンビがいた理由を考察していると今まで黙っていたヴェノムが話し始めた。


『あれ、もしかして気付いてなかった?もうこの階層は中層で、たまに人間の冒険者の来ることができる領域だよ』


 ここは中層なのか。いつの間にそんなに上がって来たんだ?


「というか冒険者……?じゃあ生きてる人間がいるのか?」


『たまにだけどな。何度かこの上の階層にいる時に見たことがある。そいつらはこの階層に入っていって数人減らして戻ってくることが多い。つまり、さっきのゾンビは冒険者の成れの果てだ』


「……そうか。なぁ、フェンリル。死体って魔物でもいいのか?」


『大丈夫だ。まぁ、この階層にいるのかは不明だぞ主殿』


 うーん、じゃあ冒険者が来るのを待つか?……それじゃあ時間がかかりすぎるな。

 ……ゾンビ達のせいであやふやになっていたが、まずはケイローンに会いに行くか。

 その間に死霊魔法に使えるのがあれば死霊魔法を試せばいいか。

 ……もう1回気配を探すか。ゾンビに見つからないようにゆっくりとケイローンと死霊魔法の素材を探していこ。


 俺は時間を無駄にしないようにケイローンを探し始めた。漏れのないように少しずつ進んでいくとゾンビとは違うアマルテイアやスカアハに似ている気配を感知した。


「多分これだな、見つけたぞ2人とも。ヴェノムは抱き抱えているから、フェンリルは影の中に全身入れろ」


『了解だ、主殿』


 俺の影から頭だけ出していたフェンリルは俺の指示に従い頭を影に引っ込めた。それを確認した俺はケイローンと思われる気配へと素早く近づいた。

 そこにはケイローンがおり、その前方には腕や胸を矢で貫かれて木に括り付けられているゾンビ達が大量にいた。


 え……、何これ。これもしかしてケイローンがやったのか?あの優しそうなケイローンがいたぶる方法でやるか?


「おや、来ましたか。普段は来ない階層なので探索していたらアンデットに見つかってしまいました。このゾンビ達は気にしないでください」


 まじか、本人が自白しちゃったよ。優しい人なのかと思ったけど、実は敵を甚振って殺す残虐な人なのか?

 ………別にどうでもいいか。どちらにしろ殺すんだし、その過程は気にすることではないだろ。


「ん?その腕に抱えているのはなんですか?」


「あ、俺の眷属です。勝手に危害を加えたりしないので安心してください。……それでこれからなんの修行をしていくんですか?」


「そんなに急かさないでください。私からは弓を教えます。最初は基礎を教えていきますが、終わったらゾンビを使った実践形式でやっていきます」


 へぇ、ゾンビを使って修行するのか。……え?ゾンビを使うの?さっき心の中でどうでもいいとか言ったけど、死なないからってそんな扱いしていいのか?


「あぁ、安心してください。人間だったならそんな扱いはしませんがアンデットになった以上、害を与える存在でしかありません。私が神だからという理由もありますけどね」


 良かった……。俺がこれから師事してもらう人がそんな人だったらどうしようかと思ったが、違って安心だな。

 神だからという理由はよく分からないが、きっと重要なんだろう。


『……主殿、神は魔の者を嫌うのだ。過去にどのようなことがあっても魔に堕ちたらそれはもう破壊対象としか思わないほどにな。

 特に死体を弄ぶアンデットや死霊魔法は特に嫌っているな』


『そうか、ありがとう』


 マジかよ。じゃあ死霊魔法を持ってる俺ってかなり危ないんじゃないか?クラスメイトを復活するという理由があるが、納得してくれるかな……?


「……それで弓の修行って何をするんですか?」


「弓はとにかく集中することが必用です。既にあなたはアマルテイア殿との修行で終わっているので省きます。弓は基礎の練度で同じ弓でも命中率が変わります。そのため基礎厳しくやっていきます」


 厳しい……。神の厳しいって死ぬほど辛いからなぁ。コピーがある俺ですらそう思うんだし本来はもっと辛いんだろ。……頑張っていかないとな。


「分かりました。それではやっていきましょう」


「準備は出来ているようですね。ではそのスライムは影の中に入れるか離れた所に置いておいてください。弓は両手を使いますからね」


 そうだよな。離れた所で自由にさせてもいいけど最近フェンリルのことで問題が起きたばかりだからな。今回は影に入ってもらお。


「おい、ヴェノム。今回は影に入って大人しく待っていてくれ」


『……分かった。待ってるからなるべく早くしてくれ』


「……善処するよ」


 俺が曖昧な解答をするとヴェノムは若干呆れたような雰囲気を出しながら影の中へ入っていった。修行する準備が整った俺はケイローンと目を合わせて準備が出来たことを知らせた。


「はい、それでは始めて行きましょうか。それでまずあなたには弓を作ってもらいます。物質創造のスキルで作ってみてください」


「……分かりました」


 またか。確かに修行するためには必用なんだろうけど、あれ結構魔力を使うから疲れるんだよな。魔力回復速度ははやいけど、あまり頻繁に使える訳ではないからな。……まぁ、やるけどね。


 俺は火尖槍を作った時と同じ感じで物質創造を発動させた。すると、目の前に白を基調とした弦のない弓が現れた。

 しかし次の瞬間には俺の魔力が一気に消費され、意識がなくなった。





 目覚めたら木に寄りかかっており、隣には物質創造で作った弓があり、俺の膝にはヴェノムがいた。


『おい、大丈夫か?急に倒れたから心配したぞ。』


『……ん、あぁ大丈夫だ。心配かけて悪かったな。俺は大丈夫だからヴェノムは影の中に入っておいてくれ』


『分かった。無理はするなよ?』




 ヴェノムとの念話を終えた俺は周りを見渡してみると目の前の切り株に腰掛けているケイローンを発見した。ケイローンは安心したような表情をして腰掛けていた。


「目覚めましたか。あなたが物質創造を発動させたら全ての魔力を使い切り、気絶したのであせりました。神聖魔法を獲得していないので魔力を譲渡することも出来ませんからね」


 ……そうだったのか。制御したつもりだったけど、全ての魔力を使い切ったのかよ。意外と制御難しいんだな。

 ……というかケイローン、神聖魔法持ってないのか。鑑定してなかったし、確認のためにステータス見とこ。


 __________________


 種族:男神


 名前:ケイローン


 年齢:292


 レベル:56


 HP:4700/4700

 MP:3900/3900

 SP:4600/4600


 スキル:『スタミナ回復速度LvMAX』『魔力感知LvMAX』『魔力操作LvMAX』『風魔法LvMAX』『身体強化魔法LvMAX』『猛毒耐性Lv7』『痛覚耐性LvMAX』『未来予測LvMAX』


 称号:『神霊』『不老不死』『賢者』『調合者』『育成者』


 体質:不老不死

 __________________


 おぉ、スカアハよりも少し強いくらいだな。神ってステータスが似てるよな。必用最低限のスキルしかない気がする。見たことがないやつは鑑定するか。


『風魔法』

 風属性の魔法を使うことができる。レベルによって使える魔法が異なる。


『猛毒耐性』

 猛毒毒への抵抗力が上がる。レベルによって抵抗力が異なる。


『不老不死』

 衰えず、死なない。自らの意思に関係なく効果は続く。


『賢者』

 賢き者。魔法への理解が深まり、魔法陣の構築速度、魔法の威力が上がる。


 なんか1つ意味深な鑑定結果があったな。……少し怖いけどコピー出来るやつはするか。


《スキル『複製』の能力により、スキル『風魔法』『猛毒耐性』、称号『賢者』、体質『不老不死』を獲得しました》


《条件を満たしました。称号『不死者』が『不老不死』へと変化します》


 ふぅ、できた。……物質創造で作った弓も見てみるか。魔力を全て使ったし気になるな。


『ガーンデーヴァ』

 魔力を込めると弦が現れる。この弓から放たれる矢は軌道上の全ての物を破壊し、燃やし尽くす。


 これはやばいだろ。軌道上の全てを破壊するとか普通出来ないぞ。これを使う時には注意して放たないとな。

 魔力を込めないと弦が出来ないのか。試しに軽く込めてみよ……。


 俺はガーンデーヴァを握り軽く魔力を込めた。すると本来弦がある場所に赤色の雷のようなものが現れた。


 なんだこれ。……触ってもダメージを受けたりはしないな。本当にこれで弓を撃てるのかよ。


「教えなくとも起動出来ましたか。その弓はガーンデーヴァと言って全てを破壊する弓ですので扱いには注意してください」


「あ、はい」


 おっと、びっくりして気の抜けた返事をしてしまったな。いくら起きたばかりでも気を引き締めていかないとな。


「ふむ、その弓では修行どころではありませんね。仕方ないのでこの木の弓を使ってください。冒険者の遺品ですが、使って上げた方が弓も喜ぶでしょう」


 冒険者の遺品……。こんなことを言うのも失礼だが、なんか呪われてそうだな。ケイローンにバレないように後で神聖魔法をかけとこ。


「これで修行をしていくのですか?」


「はい。先程も言ったように弓は基礎が大事です。基礎ならばこの弓でも耐えられますので、この弓で基礎はやってください。」


「……分かりました」


 いつも弓を使ってるらしいケイローンが言うのならば大丈夫なのだろう。アマルテイアの時もスカアハの時も基礎ならば普通の修行だったからきっと耐えるだろうしな。


「それではこれから弓の修行を始めていきましょうか」

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