初戦闘
ゴブリンがいた。RPGゲームやラノベなどに出てくるゴブリンにそっくりな奴だ。
だが、ここで油断するな俺……。
もしかしたら、2次元みたいに雑魚キャラじゃなく、ラスボス並の強さかもしれない。
相手のことをよく観察してから戦うなり、逃げるなりの判断をするんだ。
まずは、武器から確認していこう。
手に持っているのは、木の棍棒のようなものと何かの肉か?
服はボロボロで腰に巻いているだけだがそれももう、いつとれるか分からない状態だな。
はっきり言って貧相だ。
まだ、ステータスを確認していないから断言出来ないが、とても強そうには見えない。
(鑑定!)
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種族:ゴブリン
レベル:5
スキル:『スタミナ回復速度Lv2』『気配感知Lv2』
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やはり、ゴブリンだった。
ふむ、レベルは俺より上だな。ただ、能力は分かったが具体的な力が分からないな。
だけど、危険な感じはしない。俺の持ってないスキルもあるし、『模倣』も試してみたいし使って見るか。
「ガウッ(模倣)!」
《スキル『模倣』の能力により、スキル『スタミナ回復速度』『気配感知』を獲得しました。》
俺の声を威嚇と勘違いしたのか、一番前のゴブリンが一歩後ろにさがった。
よしっ、成功したみたいだな。一応確認しておくか。
(鑑定!)
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種族:ベビードラゴン
レベル:1
スキル:『鑑定Lv1』『模倣Lv1』『スタミナ回復速度Lv1』『気配感知Lv1』
称号:『勇者』
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コピーしたスキルのレベルは1になるのか。コピーして即実戦投入とはいかないな。……ふむ。ぼんやりとだが、ゴブリンの存在感が少し増した感じがする。
よし、やれることもやったし戦うか。逃げるのも手だが……大丈夫だろう。俺はドラゴンで相手はゴブリン。負ける訳がない……筈だ。多分。
俺は足を強く踏み込む。すると、次の瞬間にはゴブリンが背後にいた。
あれ?さっきまでも走ってたけど、こんなに速くなかった気がするが……。
「グガッ?」
背後のゴブリンは首を振ってキョロキョロと周りを見ている。どうやら俺のことを見失ったようだ。
俺はそのまま、ゴブリンの頭目掛けて爪を思い切り振り降ろす。爪は難なく頭にくいこみ、そのまま切り裂くように思われたが――中身を散らしながら弾け飛んだ。
うわぁ、グロ。これはモザイクがないと見せられないわ……。
―――――
―――
―
あの後、周りに他のゴブリンはいなかった。探す過程で新たにいくつかの事が分かった。第一に、どうやら俺は「戦闘」と思ったら身体能力上がるらしい。
近くにいた鹿で試したことなので、確かだ。「狩り」と思っても特に変化はなかったが、鹿を敵として認識した瞬間に身体に力がみなぎってきた。そしてもう一つ。人間だった頃よりも倫理観が大分緩い。具体的には生物――特に哺乳類なんかを簡単に殺すようになった。
最初の相手がゴブリン一体でよかった。前世との違いを知れたのは大分デカい。……よし。想定外のことが起こったけど、探索を始めるか。……ふむ、こっちから調べていこう。
俺はゴブリンの来た方角の反対に進むことにした。しばらく歩いて見たが、変わらず景色は木ばかりだ。
……ん、前方に複数の気配を感じる。正確な数は分からないが、少なくとも40以上はあるな。
しばらく気配を観察していると、こちらに5つ他より大きな気配が近づいてきた。
(やばい、バレたか?)
うーん、どうしよう。ひとまず、こいつらの種族だけでも把握しておきたい。だけどこの気配、さっきのゴブリンと似てるんだよなぁ。恐らくはゴブリン系統の魔物だと思う。
既に5つの気配は近くまで迫って来ていた。5m……4m……3m……気配の正体が完全に姿を現す。予想通り、ゴブリンだったが、さっきのよりも体格が良いし、着ているものも服っぽくなっている。
(鑑定!)
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種族:ホブゴブリン
レベル:4
スキル:『スタミナ回復速度Lv5』『気配感知Lv4』
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種族:ホブゴブリン
レベル:5
スキル:『スタミナ回復速度Lv5』『気配感知Lv5』
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種族:ホブゴブリン
レベル:4
スキル:『スタミナ回復速度Lv5』『気配感知Lv4』
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種族:ゴブリンシャーマン
レベル:3
スキル:『スタミナ回復速度Lv5』『気配感知Lv5』『魔力感知Lv2』『魔力操作Lv1』『火魔法Lv2』
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種族:ゴブリンリーダー
レベル:8
スキル:『スタミナ回復速度Lv6』『気配感知Lv5』『魔力感知Lv3』『魔力操作Lv2』『身体強化魔法Lv1』
称号:『村を率いる者』
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《スキル『鑑定』の熟練度が一定に達しました。スキル『鑑定』のレベルが上がります》
わっ、びっくりした。また聞こえてきたなあの声。……ん?ていうか今なんて言ってた?鑑定のレベルが上がったって言ってなかったか?
(鑑定!)
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種族:ベビードラゴン
Lv:1
スキル:『鑑定Lv2』『模倣Lv1』『スタミナ回復速度Lv1』『気配感知Lv1』
HP:青〇
MP:黄△
SP:青〇
称号:『勇者』
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HP、MP、SPが追加されてるな。前者2つはゲームと同じだと思うが……SPてのは何なんだ?
『SP』
スタミナポイント。肉体的な体力を表している。
へぇー、としか言えないな。青〇てなんやねん。丸を青く塗っただけじゃん。まぁ、HPやMPの残りがある程度分かるようになっただけでも良いか。
まだ相手のスキルで見たことないやつがあるな。『魔力感知』と『魔力操作』、『火魔法』と『身体強化魔法』だ。能力はなんなんだ?
『魔力感知』
空気中の魔力を感じることができる。レベルによって精度が異なる。魔法を使うのに必要。
『魔力操作』
魔力を動かすことができる。レベルによって精度が異なる。魔法を使うのに必要。
『火魔法』
火属性の魔法を使うことができる。レベルによって使える魔法が異なる。
『身体強化魔法』
身体能力を強化することができる。レベルによって最大強化が異なる。
うん、全部実用的だな。コピーしておくか。
(模倣!)
《スキル『模倣』の能力により、スキル『魔力感知』『魔力操作』『火魔法』『身体強化魔法』を獲得しました。》
よしっ、成功したな。後で実験してみるか。ん……?あ〜、確かに周りから何か感じるな。ん〜、例えるなら温い水の中にいる感じかな?……違和感がすごいな。もうコイツらでできることは残ってないだろうし――殺るか。