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眷属

『いつか僕と同じ神格を獲得している本当の神になってしまうんだよ』


 世界神はいつもと同じ声音で爆弾を落とした。


『は?神になる?誰が』


『君が』


『……そうか』


『あれ、案外簡単に受け入れるんだね』


 別にありえないことではないだろう。だって俺が今まで師事してきた人達は神話の神なのだからなること自体は不思議ではない。


『ん?勘違いしているようだけど、僕の言っている神は神格を持ってる神だからね?あんな中途半端な実力による神ではないよ』


『何が違うんだよ』


『ん〜、難しいな。……その事も含めて今から眷属のことや神格について説明していこうか』


 あぁ、そう言えば元々はそんな話だったな。一つ一つの単語のインパクトが強すぎて話が逸れていた。


『まずは君の眷属化について。君は眷属に力が流れていってるのは理解しているね?』


『なんとなくだけどな』


『うん、今はそれでいいよ。それで君が眷属になってしまった影響で力が流れていくんだよ。

 まだ魂の器が小さいからそこまで大きな力は受け止められない。だけど今回名前を獲得して魂の格を上げたから今までよりも魂の成長が格段に早くなってしまったんだ』


『大体でどれくらい早くなった?』


『30倍くらい。それも今後魂の格を上げれば比例して早くなるよ』


 上がりすぎだろ。なんで名前を付けただけでそんな事になるんだよ。本来なら喜ぶんだろうけど、なんか素直に喜べねぇ。名前怖っ。


『名前は大事なんだよ?名前があれば(おこな)ったことがそのまま魂に霊格となって残る。だけど名前がないと霊格として残らないこともあるんだ。つまり名前の有無だけで成長速度が変化するんだよ』


『あれ、じゃあ鑑定しても名前がふたつある俺たち転生者はどうなるんだよ』


『もちろん早いよ。だから残してあるんだしね。それに『勇者』という人の記憶に残りやすいように細工している称号があるから普通よりも霊格が高まりやすい』


 そんな効果もあったのかよこの称号。単純に成長速度を上がるだけだと思ってた。


『それじゃあ話を戻すよ。君はこのままレベルを上げなくても生きているだけでいつかは神格を獲得するんだ。

 神格というものはまだ知らなくていいよ。で、神になったら邪神すらも超えることが出来てしまう。何が言いたいかって言うと君には本当の神の使者となり邪神を討って欲しい』


『は?なんでだよ。別に邪神は討たなくてもいいだろ』


『前まではそうだったんだけど君がヴェノム君を眷属にしてから邪神が再び地上に干渉し始めた……。許すことが出来ないほどね』


 ……?今の最後の世界神の声か?今まで聞いてきた声からは考えられないほど冷たかったな。それほど酷いのか邪神ってのは?


『酷いなんてもんじゃないよ。あいつは大体100年くらい前にーーー』




 その後はひたすら世界神から愚痴られた。途中に重要な単語を言っていたりし、様々な情報を集めることができた。

 世界神の言っていたことを愚痴の部分を省略し、要約すると俺が世界神の眷属になったから本当の神になって邪神を倒す。その後は世界神の下で好きなように暮らせるように保証するから頑張って〜、ということだ。

 なんとも身勝手なことだが、こちらも強くなれる逃すことの出来ないチャンスなので文句も言ってられない。


 ……別に強くなる必要はないだろ。何を考えているんだ俺は。


『ふぅ〜、スッキリした。ありがとう龍輝く……こほん。ニールちゃん。邪神のことについては惜しみなく協力するからね』


『ちゃんを付けるな』


『そんな訳にもいかないんだよ。自分の眷属の名前を間違えると色んな悪影響が出てしまうんだ。あまり君のことは呼び捨て出来ないしね。それじゃあバイバイ、邪神とその眷属のことは頼んだよ』


『任せとけ。満足できるほどの成果を出してやるよ』


 俺が返事をすると周りの動きが正常に動き出した。フェンリルとの話の途中で世界神と話し始めたのでずっと見つめあっている。


《熟練度が一定に達しました。スキル『思考加速』を獲得します》


《条件を満たしました。称号『勇者』が『世界神の眷属』へと変化します》


 おお、急にきたな。いや、いつも急だが今回は世界神と話していたのでかなりの時間が合ったのに今更聞こえてきたのかよ。

 鑑定して能力の確認をしておくか。スキルの方は実際に使用しておこうかな。


『思考加速』

 思考速度を早めることができる。レベルによって加速できる速さが異なる。


『世界神の眷属』

 世界神の眷属。経験値と熟練度の獲得量が増加する。魂の格によって獲得する量が異なる。


 うん、神の眷属は勇者から変化したこともあって普通に上位互換の効果だな。だけど成長すれば効果が増すのがとても良い。

 思考加速はどれくらい思考速度が早くなるんだろうな。……確かめてみるか。


 俺は思考加速のスキルを発動させた。すると世界神と話しているほどではないが、周りの動きが遅くなり、自分の動きも遅くなった。


 本当に思考を加速させるだけなんだな。あれ、もしかしてだけどこれ魔法の構築する速度は上がるんじゃね?……試してみよっかな。手のひらに小さな火を出すくらいなら大丈夫だろ。


 俺は手を上に向けて火魔法を発動させた。すると手のひらにロウソクのような火が発生した。


 おぉ、思考加速している今でも早く感じるな。これかなり構築速度が早くなったんじゃないの?


《熟練度が一定に達しました。スキル『思考加速』のレベルが上がります》


 早っ。まだ使ってから2分も経ってないぞ。……『世界神の眷属』の効果か。やはり、30倍は伊達じゃないな。

 ふぅ。確かめれることも終わったし、フェンリルとの話を再開するか。


「えーと、俺の名前だよな。俺の名前はニールだ。別に最低限の礼儀さえ弁えてくれれば主従の関係とかは気にしないから普通にしててくれ」


『うむ、分かった』


 思考加速のお陰でそこまで時間がかからなかったな。多少時間がかかったかもしれないが誤差の範囲ないだろう。……そうだと信じたい。


『あれ、お前の名前違うだろ。というか、ニールとかいう女っぽい名前でいいのかよ』


 む、別にいいだろ。確かに女みたいな名前だか、自分で付けたのもあって結構気に入ってるんだぞ。


『はぁ、まずは俺のステータスを見ろ。それと、女っぽくても良いだろ少し可愛くて気に入ってるんだよ』


 ……ん?待て、今違和感がなかったか?可愛くて気に入ってる?先程考えていたことと違うことを言ってるな。……あ、そういえば世界神に性格について聞いてねぇ。くそ、次は絶対に聞く。


『……おい、前見た時よりもレベルもスキルの量もレベルも称号まで変わってるじゃねえか。どんだけチートなんだよ』


『いや、そうでもないぞ。確かに獲得する経験値と熟練度は多いけどそのためには殺さなきゃいけないから大変だぞ。スキルもレベルだけ上げても意味ないから気休め程度だな』


『贅沢言うなよ。こっちなんか獲得量もステータスも低いからその悪循環が起きてるんだよ。最近お前……ニールの眷属になった影響で新しいスキルを獲得したけど、ニールは結構チートだからな?』


 そ、そうだったのか。俺って贅沢だったのかよ。確かに周りの人物達には修行してもらって成長速度も早くて、簡単にスキルと技術をコピーしてるな。

 あれ、見返してみると俺ってかなり待遇いいな。俺だけモンスターで悲観してたけど、その分メリットもあるな。うん、ちょっと傲慢だったな。


「確かに十分チートだったな。……それじゃあ話も終わったし、移動するか。普通には影の中にいてくれ」


『うむ、分かった。何かあれば念話で伝えてくれ』


「うん。あ、ヴェノムは入らなくていい。俺が抱えて運ぶからな」


 ヴェノムは可愛いし、ぷにぷにしてるし、ひんやりしてて気持ちいいからな。それにヴェノムの新しく獲得したスキルも見たいし影に入られると困る。


『……分かった。あまり強く握るなよ?』


「大丈夫だ。安心して抱えられてろ」


『うん、信じたいけどちょっとその顔だと無理だ。可愛い犬や猫を乱暴に愛でる女のような顔をしてるからな』


 え?そんな顔してるのかよ今。ちょっと確認するか。


「ミラー」


 俺は神聖魔法のリフレクションの物理版を発動させた。これはリフレクションと同じように受けた衝撃を相手に返す魔法だ。

 その鏡のような見た目とは違い、物理に強い耐性を持つ。しかし、魔法には弱く魔法を打たれたら鏡のように割れてしまう。むしろ鏡より脆い耐性しかない。

 現在は魔力消費がリフレクションよりも低いため鏡代わりにしか使っていない。俺はミラーから見える俺の顔を観察した。


 うわ、本当に俺の顔かよこれ。口元が緩んで今にも涎がたれてきそうだ。目は確かに小動物系に向けるような目だな。……興奮してるせいなのか分からないが頬が紅潮しているため若干妖艶な雰囲気が有るけど。


「……大丈夫だ。安心して抱えられてろ」


『2回言った!?今自分の顔を見て引いたけどなかったことにしたよね!?安心出来ねえ』


 くそ、どうしよう……。一旦顔を直してからもう1回頼んでみるか。というか本当の中身と体がちぐはぐだな。自覚なくあんな顔をするとか重症だろ。


「なぁ、頼むよ。俺に抱えられるのが嫌なのか?」


『う、そんな悲しそうな顔をするなよ。なんかお前この短いあいだに前よりも女みたいな言動が増えてるぞ。大丈夫か?』


 またかよ。俺は別に悲しいわけではないのに悲しい顔をしてるのか。このことに悩みすぎたらいつか、二重人格とかになるんじゃないか?


「……それはお前が気にすることじゃない。そのことは俺だけで対処するから大丈夫だ」


『……そうか。それで別に抱えられるのはいいんだが、変なことはするなよ?振りじゃないからな?』


「分かった。気をつける」


 ヴェノムの頼みを了承した俺は優しく抱え上げた。俺たちは痛覚無効を持っているが普段はある程度痛覚を残しているので痛いことをしたら痛いと感じる。

 だからヴェノムは何度も痛くするなと言っているが普通に痛覚無効を発動させれば解決するのだ。


『やっと移動するのか。いつまで我を忘れて話し合ってるのかと思ったぞ。出発するのならば早くするぞ主殿』


 影に入っていたフェンリルから念話が届いた。ずっとヴェノムと話していたため退屈していたようだ。


「あぁ、ごめん。今から出発するよ。ゆっくり行くけどそれでいいか?」


『我は構わない。主殿の思う通りに移動し、最終的にこの外に出てくれるのならばどのように動いても何も言わぬ』


 優しいな。なんでこの性格の奴がこんなに禍々しい魔力と気配を持つことになるのかが全く理解出来ん。

 ステータスも物騒だし、この性格なのがとても不思議だ。


「じゃあゆっくり移動する。移動中に魔法やスキルの実験をするからな。魔法が発動しても無効化するなよ」


『……分かった。善処しよう』


 善処かよ。確かに本能的に対応してしまったらしょうがないがなんとか頑張って欲しいな。まぁ、殺意がなければ大丈夫だろ。


 俺たちはケイローンのいる階層へと移動し始めた。ヴェノムを探す際に少し下の階層に来たために、移動時間が長くなったので実験やスキルの熟練度稼ぎをしていた。

 ヴェノムのことも改めて鑑定し、新しく増えたというスキルを確認してみると『捕食』と『身体変化』が増えていた。


『捕食』

 有機物、無機物の両方を体内で溶かし捕食する。捕食した対象のスキルを確率で獲得し、捕食した物質は魔力に変換し蓄えることができる。レベルによってスキルを獲得する確率が異なる。


『身体変化』

 体を構築している物質を変化することができる。レベルによって変化することのできる物質が異なる。


 能力はこんな感じだった。どうやって獲得したのかヴェノムに聞いてみると、捕食は俺の眷属になった影響で、身体変化はヴェノムを騙した魔物を食ったら獲得したそうだ。

 勿論コピーした。捕食だけは若干能力が変わり、物質を魔力に変換する能力だけになってしまった。


 そのあとはずっとスキルの熟練度を稼いでいた。いくつか発見があり、並列演算を発動させれば魔法の同時発動の数が増えた。

 灼熱の息吹の威力は凄かった。近くにあった木に使うと燃やした部分が一瞬で灰になったため、他の木に燃え広がる暇もなく木が燃え尽きてしまっていた。ヴェノムを抱えたまま発動させたので怒られてしまったが……。


 身体変形も使ってみた。ヴェノムのように液体ではないためとても気持ち悪かった。しかし他のスキル、例えば龍鱗などと使うと鱗を動かすことができた。使い勝手もよく鱗を鎧のような形にし、身体変化で強度を増すことができた。

 この実験の間にスキルのレベルが大幅に上がった。世界神の眷属になった影響は影響は凄く基本的なスキルは数回使えばレベルが上がってしまうのだ。ステータスにも影響し、レベルが上がっていないのに魔力が増していた。


 実験やスキルの熟練度稼ぎに夢中になりながら移動しているといつの間にかケイローンのいるという階層へ繋がる階段状の洞窟へと着いていた。


「もう着いたのか。意外と早かったな」


『なぁ、お前ちょっとチートになりすぎじゃない?この移動だけでどんだけスキルが上がったんだよ』


『うむ、ちょっと主殿は自重した方がいいぞ。これから他人に師事するのならばそれを勧める。神々の技術を簡単に習得して神々が傷つくのはいい気味だが、それで主殿が嫌われる可能性があるならば従者として止めねばならぬからな』


 え、そんなに遠慮なかったかな?楽しくて夢中になってたけど常識の範囲内だと思うけど……。


『もしかして気付いてない?俺らの通った道が所々悲惨なことになってたけど……。というか、なんか最近どこか抜けてないか?前はもっと冷徹な雰囲気だったけど最近はのほほんとしてるぞ。口調も緩くなったし……』


 う〜ん、そうかな……?……うん、確かに緩くなってるな。考えも適当だったし楽観しているところがある。知らない階層なのにあれは気を抜きすぎたな。……ヴェノムには感謝しておかないとな。


「すまなかった。ちょっと気を抜きすぎていたようだ。もう大丈夫だ」


『……うむ、確かに大丈夫そうだな。しっかりと考えられているので心配なさそうだが、我の先程の助言を頭に入れて置いてくれ』


「……分かった。意識しておこう」


 ヴェノムとフェンリルに説得された俺は少し自重することを考えながら階層を繋げる階段を登っていった。

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