~スパルタな実技訓練~
やっと、仕事関係が落ち着いたので、また、投稿再開していきます!!なるべく日が開かないよう、1週間ほどの頻度で投稿できるように頑張ります!
初めての授業を終えたアルベネロは次の授業場所である訓練棟へ向かおうと席から立ち上がる。魔法を使用する場合、流通している素材で作られた壁では相当な強度が必要となってしまい、耐えたとしてもすぐに劣化してしまう。そのため、魔法によって、特別な強化を施した訓練棟で実技訓練は行われる。
『レーメ先生には悪いことしたな……』
吸魔石に魔力を注ぎ過ぎたことに気づいていたアルベネロはレーメ先生に心の中で謝れば、教室の扉から外に出る。そうすると、後を追うようにレオがついて来た。
「運がなかったな‼」
「……そうだな」
「それよりも、次は実技だ‼ ︎腕がなるぜ‼」
「実技訓練か……いつもはどんなことをしてるんだ?」
クレアとレインは教室でまだ談笑していたため、アルベネロとレオは二人で訓練棟へと向えば、廊下を歩きながら実技訓練について話す。
「多いのは魔法を標的に当てたり、か。あとは模擬戦もあるぜ。訓練棟の魔法で重傷にはならない、が‼︎ 代わりに痛さは割り増しになるから結構、つらいぜ‼︎」
「それはいやだな……」
「実戦に近い緊張感を持つために学院長が魔法を改良したとか言ってたぜ」
レオの言葉にアルベネロは軽く口元を引き攣らせる。レオはアルベネロの反応が楽しいのかニヤニヤとしながら、廊下を歩いていれば、少しして、訓練棟が見えて来る。
訓練棟は蒲鉾型の建物であり、中の空間は外見よりもはるかに広い空間になっている。階段のそばには訓練棟の地図が書かれており、いくつもの部屋が教室として、様々な用途に使われている。
「えーと、今日は……お、あそこみたいだ‼」
「同じ場所でしてないんだな」
「色んな状況に慣れるとかそんな理由で、同じ教室で続けて授業はしてないな‼︎」
レオが指を向けた方向をアルベネロは見ると、室名札に〖特科〗と記載されている扉があり、先に向かったのであろうクラスメイトの数名が扉を開けて、中に入っていく姿が見える。アルベネロとレオも後に続くように中へと入ると、扉の先は草原になっており、上を向けば青空が広がっていた。
「転移……したわけないよな。幻影か?」
「おお、冷静だな。おれは初め見たとき、かなりはしゃいだぜ‼」
「想像できるな……」
レオの言葉にアルベネロは苦笑してしまう。天井を見つめれば微かに青空が不自然であるも、よく観察しなければ分からない程、本物に近い出来栄えとなっている。
『まるで本物だな。実戦に限りなく近くしているのはマナらしい』
アルベネロはマナのことを考えると、軽く笑みを溢しながら、クラスメイトが集まっている場所へレオと一緒に向かう。少しするとクレア、レイン、レーメ先生も訓場室の中へ入ってくる。
「皆さん、揃ってますね。今回の授業では、まず、準備運動として、魔法の持続使用を行い、魔力の量を増やしていきます」
「「「はい」」」
「発動する魔法は今から渡す火魔法です。可能な限り発動し続けてください」
レーメ先生が魔方陣の書かれた紙を生徒たちに渡していく。アルベネロも紙を受け取り書かれている魔方陣を見る。初級の火魔法【火種】であり、日常生活でも使われる程度の魔法である。
『わざとか……まあ、時間短縮のためだろうな……』
アルベネロは渡された紙に書いた魔方陣を見た後、チラリとレーメ先生に視線を向ければ、レーメ先生もアルベネロを見ており、魔方陣を見た反応を観察していたようである。
「とりあえず、十分間、魔法を発動し続けてください。十分経過で声をかけますね」
「レーメ先生、初級魔法なら十分ぐらい負担にならないと思うのですが?」
「それはやってみないとわからないですよ」
生徒の一人がレーメ先生に質問するとレーメ先生は微笑みながら返答する。質問した生徒は納得していない様子であるが追及はしなかった。
「それでは十分間、始めてください」
「「「はい」」」
一斉に生徒全員の魔方陣から小さめの火が現れる。全員が発動している魔法は初級魔法であり、日常生活でも使われる【火種】の魔法である。主に物を熱する時や焼くなどの工程で利用されている。初級魔法であるため、特に魔力の消費も少ない。
しかし、魔法を発動させ続けて、五分ほどが経過した頃……
『結構、疲れだしてるな……』
アルベネロは周りの生徒に目を向けては数人の生徒が魔方陣から出す火の大きさが定まらなくなっており、魔方陣に流し込む魔力が少なくなっているのがわかる。まだまだ余裕があるアルベネロは周りの生徒に目を向けていれば、アルベネロの側にレーメ先生が近づいてくる。
「まだまだ余裕がありそうですね。アルベネロ君」
「まあ、このぐらいなら……」
「さすがですね。ちなみに渡した魔方陣について、何か聞きたいことはあります?」
「……わざとこんな魔方陣にしてるんですか?」
「もちろんです♪」
アルベネロとレーメ先生が軽く話をした後、レーメ先生は満足そうに何度か頷いては離れていく。離れていくレーメ先生の後ろ姿を眺めながらアルベネロは軽く口元を引き攣らせていた。
『スパルタなんだな……』
アルベネロがそんなことを思っていると十分を過ぎようとしており、かなりの人数が必死な表情で魔法を発動し続けていた。
「はい。十分経過です」
「「はぁぁぁ〜〜」」
「どうでしたか? かなり辛かった人が居ると思います。その人達はまだまだ魔力量が足りない証拠です」
レーメ先生の言葉に生徒の大多数が悔しそうな表情をしながら黙っていた。そして、少しの休憩を挟むことになれば魔方陣が描かれた紙は回収され、アルベネロは休憩時間の合間に空を眺めているとクレアとレオが近づいてくる。
「余裕そうだな‼」
「まあな。二人も余裕だったか?」
「あのぐらい、何時間でも発動し続けてやるぜ‼」
「初級魔法なら、あんな細工をされても十分ぐらいは余裕よ」
自信満々に答えるレオと冷静に答えるクレア、二人の全く違う反応にアルベネロは苦笑してしまう。
「細工とかあったのか⁉」
「魔方陣の一部が書き換えられていたんだが……違和感とかなかったのか?」
「無駄よ、アルベネロ君。このバカが気づく訳ないわ」
「も、もう一回、ちゃんと見れば気づけるぜ‼」
クレアの言葉にレオは驚けば、再度、魔方陣を確かめるためにレーメ先生の元へ走っていく。離れていくレオの後ろ姿に、アルベネロとクレアは思わず、笑いを溢してしまう。
「アルベネロ君は魔方陣の細工に気付いてたみたいね。何時、気づいたのかしら?」
「魔方陣を見た時にだな」
「すぐに気づいたのね」
「クレアも魔方陣を見て、気づいたのか?」
「ええ。そうよ」
「そうなのか……」
クレアの発言にアルベネロは心の中で感心する。レーメ先生が渡してきた【火種】の魔方陣は魔力消費量が通常の十倍になるように魔方陣が書き換えられていた。書き換えられた箇所は数ミリ程の差であり、一般的な魔法使いでは見ただけでは判断できない変化である。
「何か言いたいことがあるのかしら?」
「……クレアはすごいな」
「あら? 改めて、私の才能に驚いたのかしら?」
「いや……それよりも、もっと別のことに感心してな」
「別のこと?」
「クレアは才能だけじゃなくて、ど---」
「皆さん、休憩時間は終わりです」
アルベネロの言葉はレーメ先生の声に一部を掻き消されてしまう。
「もう時間みたいだな」
「さ、さっき何を言ったのかしら?」
「アルベネロ君にクレアさんも早く集まってください」
クレアは少し前屈みになりながらアルベネロの言葉を確認しようとするがレーメ先生に呼ばれて、アルベネロは駆け足で向かったため、再確認することはできなかった。
「皆さん、揃いましたね?」
「「「はい」」」
「それでは、授業を再開します。まず、アルべネロ君、レオ君、クレアさん、レインさん以外は吸魔石に現れた色と同じ人同士でペアを作ってください」
「「はい」」
レーメ先生の指示で、生徒同士が話し合いながらペアを作っており、余らずにペアを組み終える。
「ペアが出来ましたら、交互に得意な魔法を相手に向かって、発動してください。ペアの方はどのような魔法でも問題ないので発動された魔法を防御してください」
「どのぐらい行えばいいですか?」
レーメ先生の指示にエルフの女子生徒が手を挙げて、質問する。レーメ先生は少し考えると微笑を浮かべる。
「とりあえず、立てなくなるまでか授業時間が終わるまで続けてください」
「わ、わかりました……」
レーメ先生の言葉を聞いて、女子生徒は口元を引き攣らつらせながらも頷く。
『『『スパルタだ……』』』
生徒全員の思いが一致した瞬間である。ペアを組んだ生徒たちはそれぞれに魔方陣が描かれた紙や道具を取り出す。
「皆さんはこちらへ……」
「いつも通り、俺とクレアさんがペアですか?」
レーメ先生がアルべネロ、レオ、クレア、レインを他の生徒たちとは少し離れた場所へ連れていき、その道中にレオはレーメ先生に質問する。
「いえ、今回は、レオ君とレインさん。アルべネロ君とクレアさんでペアになっていただきます。レオ君とレインさんはそれぞれ固有魔法の練習になります」
アルべネロを除いた、レオ、クレア、レインはレーメ先生の指示に驚きを隠せない様子であった。
「まじか……まあ、レーメ先生が決めたんだから大丈夫なんだろうな‼」
「アルべネロさんなら……」
「……」
レオは楽観的だが納得しており、レインもアルべネロの力の一端を知っているので、止めるような発言はせず、納得する。
しかし、クレアは鋭い目でアルべネロを見ており、アルべネロは軽く肩を竦めていた。
「レーメ先生がそう仰るなら従います……それで、私たちの授業内容は何ですか?」
「はい。模擬戦です」
「「「「えぇ⁉︎」」」」
まだ、アルベネロの実力は分からない状況で、最初からレーメ先生が模擬戦を行うことに対して、アルべネロを含む、四人全員が|驚きの声をあげる。
「れ、レーメ先生‼ それは、本気で言ってるんですか?」
「もちろんです。そんな冗談を授業中に言いませんよ?」
「アルべネロ君は授業を今日から受け始めました。流石に早いと思います」
「……何か問題がありますか?」
「初めから模擬戦を行うのは訓練にならないと思います」
クレアの言葉にレオもレインも頷いており、同意している。ただ、レーメ先生はクレアの言葉を聞いて、少し考える様子を見せるが問題があると判断はせず、逆に何が問題があるのかと不思議そうに疑問符を浮かべている。その様子にクレア達は顔を引き攣らせてしまう。
「ちなみに手加減は……」
「訓練にならないので手加減をした時点で評価を最低値にします」
「レーメ先生のあの顔はまじだぜ……」
「鬼です……」
クレア、レオ、レインは諦めた表情をする。三人の反応にアルべネロはレーメ先生の元まで駆け寄る。
「マーリンから許可は貰ってるので……使いますよ?」
「もちろん♪ あ、クレアさんもかなりの魔法使いなので余り気を抜くと痛い目に遭うかもしれませんよ?」
「クレアがかなりの魔法使いなのはわかってます」
アルべネロとレーメ先生が他の三人には聞こえない程度の声量で少しの間、話す。その様子をクレア達は眺めていれば、話を終えたアルべネロがクレアの隣まで移動する。
「それでは、早速、模擬戦をしていきましょう。アルべネロ君のためにルールをお浚いします。使用できる魔法は汎用魔法のみ。この施設の魔法で重傷は負いませんが重傷を負うレベルの魔法を受けた時点で終了です。また、戦闘続行が不可能となる状態になった時点でも終了です」
「わかりました」
「いいのね? 手加減はしないわよ?」
「ああ、本気で来てくれ」
アルべネロの言葉にクレアはまた厳しい目を向けた後、二人は距離を開ける。レオとレインはどちらも模擬戦が気になるようであり、観戦していた。
「アルべネロ君とクレアさんの模擬戦を開始します。準備はいいですね?」
「「はい」」
「それでは……試合、開始‼」
「来い‼」
「後悔しても遅いわよ‼」
レーメ先生の合図と共に、〖アルベネロ〗対〖クレアーゼ〗の模擬戦が今、幕が切って落とされるのであった。
ここまでお読みしていただき、誠にありがとうございます。
次はアルべネロとクレアの熱い(物理的にも)もバトルを書いていこうと思います。
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