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~初めての授業と異端の片鱗~

背後事情で少し遅くなりました!

 聖ソーサリ魔術学院に転校生がやってきた日の翌日、転校生のアルベネロは朝の身支度(みじたく)を終え、制服に着替えていた。


 

「防刃に防水……高性能だな。魔法使いのローブ代わりってところか」

『____♪』

「ありがとう。姉ちゃん」

 

 

 始業まで時間は十分に有るが、アルベネロは鞄を持つと部屋から出て、鍵を閉める。

 そして、周りに誰も居ないことを確認して、手元から鍵を消してしまっては何事もなかったようにアルベネロは教室へと向かう。

 

 

「確か、座学の後、実技だったか……実技はどうにかしないとな」

「おはよう‼」

「レオ、おはよう。朝から元気だな」

「毎朝、この学院周りを走ってるからな‼」

「……すごいな」

 


 魔術学院の周りを毎朝走っている元気にアルベネロは感心しながら、レオと一緒に教室へ入るとすでに何人かは登校していた。その中には制服姿のクレアとレインも居る。

 

 

「おはよう。二人とも早いな」

「あら、アルベネロ君。ごきげんよう」

「おはようございます」

 


 アルベネロはクレアの隣に座ると時間を確認する。寮を出た時間に余裕があったため、まだしばらく時間があるので、授業のスケジュール表を取り出す。

 

 

「まずは、魔法学で、そのあとは訓練か」

「そう言えば、アルベネロ君は転校生なのよね? 前の学院で、どこまで勉強したのかしら?」

「あぁ……基礎だけだな。ここみたいに魔法重視じゃなかったから」

「あら、このクラスに入ってくるぐらいだから魔術学院で勉強していると思っていたわ」

 

 

 アルベネロが魔術学院に通っていなかったことについて、クレアは少し驚く。魔術学院の他にも、一般的な学院は存在しており、アルベネロは元々、一般的な学院で在学だけはしていた。




「それなら、最初はわからないことも多いと思うわ。頼ってくれて構わないわよ? レオと違って、私は座学も得意だから」

「聞こえてるからな⁉︎」

「真実を隠さず言っただけよ。安心して」

「何に⁉︎ クレアさん、俺の扱い、酷く(ひどく)ないか⁉︎」

「あはは……」

 



 クレアとレオのやり取りに思わず苦笑いを(こぼ)してしまいながら、時間はどんどんと過ぎていき、クラスメイトも続々と教室内へ入っては自身の席へ座る。アルベネロもそろそろ座ろうかと思っていれば、レインが側まで歩いてくる。

 



「どうかしたか?」

「昨日のことは、他のみんなには話してないですからね」

「ぁぁ……ありがとう」

「いえいえ♪」

「あら、何かあったのかしら?」

「二人だけの秘密です♪」




 レインの言葉にクレアは少しの間、不思議そうな表情をしていたが追及はしない。

 そして、レーメ先生が教室に入ってくると、まだ、立っていたレインや他の生徒も席へ座る。

 

 

「皆さん、おはようございます。全員、出席してますね。アルベネロ君も、遅れずに来れたみたいですね」

「はい。大丈夫です」

「それでは、朝礼をしましょう。今日は、レインさん。お願いします」

「起立。礼。着席」

 


 生徒が着席したのを確認したレーメ先生は連絡事項を伝え、朝礼が終わると、そのまま授業が始まり、レーメ先生は生徒が持っている教科書と同じものを手に持つ。

 

 

「早速、授業を始めていきます。アルベネロ君のためにも、最初はお(さら)いをしていきます。まず、魔法は汎用魔法(はんようまほう)特異魔法(とくいまほう)、固有魔法の三つに大きく分類されます」

 

 

 基礎的な部分の解説が始まり、何度かアルベネロに対して、レーメ先生から質問が出されていく。


 


汎用魔法(はんようまほう)は日常生活などにも転用できる魔法が一般的です。では、特異魔法(とくいまほう)は基本的にどのような場面で利用することが多い魔法でしょう。アルベネロ君、わかりますか?」

「はい。主に戦闘や大掛かりな作業に使われます」

「正解です。特異魔法(とくいまほう)は固有魔法のように一人しか使用できない制限はないですが、分類される魔法はどれも強力です。ただ、それに見合った魔力と知識が求められます」


 

 

 レーメ先生は特異魔法に分類される魔法の例を出す。その中には〖ユグドラシル〗の名称もあり、何食わぬ顔でアルベネロは聞き流す。

 

 

「基礎知識については問題ありませんね。では、合成魔法についてはどうでしょうか?」

汎用魔法(はんようまほう)に分類される魔法同士を掛け合わせ、効果や威力を変化させる魔法です」

「正解です。合成魔法は複数の魔法を合わせることで通常の魔法よりも強力な魔法にすることができます」


  

 授業は(とどこお)りなく進んでいき、お(さら)いを終えると本格的な授業へと突入していく。高度な魔法についてもレーメ先生はわかりやすく説明していき、実演までしながら授業を行っており、魔法使いとして、能力の高さがよくわかる。

 


 

「少し時間はありますが、ここまでにしましょう」

「レーメ先生。何かするんですか?」

「はい。魔力の強さと保有量を計測しようと思います。そろそろ授業で個別に練習することが増えるので事前に、現時点の皆さんがどのぐらいの能力があるのか、確認を行おうと思います」

 

 

 

 レーメ先生の言葉にレオを含めた何人かがやる気は十分といった風に声をあげる。他の生徒たちも笑みを浮かべていたがアルベネロだけは少し顔を(しか)めていた。

 

 

『今の全力でも……叩き込んだら、やばいよな……』


 

 本当の全力とは程遠い状態であっても、秀才より能力が高いのは自覚しているため、アルベネロは魔力をどれだけ注ぐのか悩む。



「ここのクラスに入れたんだから、悪い結果なんてでないわ」

「あぁ……そうだな……」

 

 

 クレアの気遣いにアルベネロは軽く申し訳なく思う。アルベネロは周りに居る全員が意気込んでいる内で、手加減の度合いを考えていることに罪悪感(ざいあくかん)を抱いていた。 

 レーメ先生は教壇(きょうだん)から虹色の五角柱を取り出す。大きさは片手で持てるほどであり、キラキラと輝いている。



 

「皆さん、知っていると思いますが、この吸魔石(きゅうませき)に魔力を流し込むことで変化する色によって、大凡(おおよそ)の魔力の強さと量を確かめることができます」

「今日こそ、赤色にしてやるぜ‼」

「レオはやる気十分だな……」

「目に見えて、周りに強さを示せるのが嬉しいみたいよ」

「クレアは落ち着いてるんだな?」

「あら、こう見えても自分の成長を知れると思ってワクワクしてるわよ? まあ、今回の計測でも私がこのクラスで一番なのは変わらないわ」



 

 やる気十分のレオと自信満々のクレアを眺めていれば、順に生徒が名前を呼ばれて、魔力を流していく。その結果をレーメ先生は記録していた。クラス内では、緑色や黄緑色が多く、時折、黄色に吸魔石(きゅうませき)を変色させる生徒もいた。

 吸魔石(きゅうませき)の変色は紫、藍、青、緑、黄緑、黄、橙、赤と魔力の質が高く、量が多いほど順に色は変化していく。なお、一般的な魔法使いが黄、黄緑色である。



 

「次はレオ君。お願いします」

「よし‼ ︎今回こそ、赤くしてやるぜ‼」



 レオが吸魔石(きゅうませき)に触れて、魔力を流し込めば、色が変化していき、最終的には橙色で止まる。その様子に、レオは慌てた表情になると、手が力み始め、魔力をさらに込めようとするが色が変わることはなかった。

 



「くそぉぉ‼ ︎」

「その色なら十分、すごいだろ」

「そうかもしれないが、男なら一番を目指したいだろ⁉︎」

「その色なら一番、取れるんじゃないか?」

「この色じゃ無理なんだよ‼」

 



 レオが手を離しては、レインの名前が呼ばれる。レインは笑顔で魔力を流し込めば黄色に変色し、一般的な魔法使いと遜色(そんしょく)がないことがわかる。

 

 

「次はクレアさん。お願いします」

「アルベネロ君。あのバカが悔しがってる理由を見せてあげるわ」

「んん? わかった」 

 


 クレアの言葉にアルベネロは不思議そうな表情をする。クレアは吸魔石(きゅうませき)に触れ、魔力を流し込めば赤へ変色する。その様子にほとんどの生徒は羨望(せんぼう)の眼差しを向けており、レオは悔しそうに顔を(しか)めていた。


 

「すごいな……」

「ふふ、当然よ」


 

 嬉しそうに笑みを浮かべているクレアに、周りの生徒たちは「すごい才能……」と声を漏らしている。


 

「最後に、アルベネロ君。お願いします」

「はい。わかりました」

「気負わなくていいわよ」


 

 クレアの言葉に苦笑いを溢しながら、吸魔石(きゅうませき)に触れては、三分の二程の魔力を流し込む。吸魔石(きゅうませき)は一瞬、輝いたかと思うと、その後、何色にも変色することはなかった。

 


「おかしいですね……連続で使ったので魔力が貯まっているのかもしれません。アルベネロ君はまた今度、計測しましょう」

「……わかりました」

 

  

 変色しない吸魔石(きゅうませき)を見て、アルベネロは軽くため息を吐いてからレーメ先生に渡す。他の生徒たちも転校生の実力が知れると期待していた様子であり、残念そうにしていた。

 

 

「すみません……」

「いえ、アルベネロ君が悪いわけじゃないですよ?」

「あぁ……はい……」

 

 

 アルベネロは吸魔石(きゅうませき)を一瞥した後に自分の席へと戻る。計測を終えたため、休み時間となる。

 

 

「次は実技訓練です。遅れずに訓練棟に集まってくださいね」

「「「はい」」」

 

 

 レーメ先生は吸魔石(きゅうませき)を持って、教室を後にする。その後、吸魔石(きゅうませき)に貯まった魔力量を確認するために魔力をほんの少しだけ流し込めば、吸魔石(きゅうませき)は砕け散り、砂のようになってしまった。

 


「こ、これは……⁉︎」

 

 

 レーメ先生が驚きながら砂になった吸魔石(きゅうませき)を魔法で集める。砂からは魔力を感じることもなく、吸魔石(きゅうませき)としての役割は果たせないのがわかり、レーメ先生は学院長に報告するために転移の扉を利用して、学院長室へ移動すると扉をノックする。

 

 

「入って構わない」

「失礼します」

「レーメか。何かあったか?」

「実は……」

 

 

 レーメ先生は状況を説明した後、マーリンに小袋に仕舞った砂状の吸魔石(きゅうませき)を見せる。マーリンは砂を少し眺めた後に小袋をレーメ先生に返す。

 



「他の教師陣に、このことは言っていないな?」

「はい。生徒たちも砂になった様子は見ていないはずです」

「わかった。アルにはもう少し力を抑えるように言っておこう……」

「学院長……どうして吸魔石(きゅうませき)が砂に?」

「過剰な魔力を注がれたのが問題だ。その大きさの吸魔石(きゅうませき)ではアルの魔力を受け止めきれなかったんだ」


 


 その言葉にレーメ先生は驚きの表情となる。次の授業があるためレーメ先生は学院長室を後にする。

 


「アルベネロ君の計測は……出来ないかもしれませんね……」


 

 レーメ先生は苦笑いを(こぼ)しながら、転移の扉から移動する。入学手続き時に言った学院長の言葉を思い出しながら訓練棟へと向かうのであった。


ここまでお読みしていただき、誠にありがとうございます。

次はついにキャラ達それぞれの魔法を使っているシーンを書いていこうと思います。

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