~新たな関係~
学院長である、マナに呼び出され、アルベネロは学院長室へ向かった。そして、学院長室に到着すると、中で仕事をしていた、マナに呼び出した理由を確認すれば、寂しかったから呼び出したと答える。その理由に、アルベネロは怒ることなく、寂しさを埋めるため、抱きしめると、『好き』の言葉と、結果的にキスまでして、好意をマナヘ伝える。
想像もしていなかった事態にマナは気を失ってしまい、アルベネロはマナをソファーへ寝かせ、クレアとティーリア先生を待たせているため、一旦、自室へ戻るのであった。
「あら、おかえりなさい」
「おかえりなさい」
「ただいま。まあ、すぐ戻るんだが……」
寮へ転移すると、クレアとティーリア先生が出迎えてくれるが、すぐに戻る必要があるため、アルベネロは申し訳なく思っていると……
「流石に気を失ってる学院長を放っておく訳にはいかないものね」
「……何で知ってるんだ?」
「私が覗いて、クレアちゃんに伝えたからよ」
「……どこから?」
「初めからは見てないけど……熱い抱擁をしてる辺りからね」
「それ、ほぼ最初だろ‼︎」
学院長室へ戻る必要がある理由を、既にクレアは知っていることにアルベネロは驚けば、いつの間にかティーリア先生に学院長室でのやりとりを見られていたことを知り、顔を押さえる。
「ああ……クレア……」
「ふふ。別に怒ってないわよ? ただ、まさか二人目が学院長とは思ってなかったから、驚いたけど」
「はは……お見通しなんだな」
「そんなやましいことしましたって、顔を見たら、すぐにわかるわよ」
断りなく、マナへ告白したことに対して、アルベネロは後ろめたさを感じていた
しかし、クレアは怒っているどころか、どこか嬉しそうにしており、後ろめたさが顔に出ていると、アルベネロに伝える。
「お昼休みにも言った通り、アルが好きなら、止める理由はないわ」
「わ、わかった」
「でも、増えたからって、私のこと、蔑ろになんてしたら、泣いちゃうからね?」
「それは絶対にしないから、安心してくれ」
「んっ……嬉しい」
恋人を増やすことに肯定的なクレアに、アルベネロはホッとする。
そして、恋人が増えることで、クレアのことを軽んじたりはしないと約束し、お互いに見つめ合えば、自然と顔が近づいて……
「ラブラブね〜〜」
「「⁉︎」」
ティーリア先生が揶揄うようにアルベネロとクレアへ声をかける。今、まさに唇が触れ合いそうになっていた二人は、慌てて、顔を離し、顔を背ける。
「別に止めなくてもよかったのに」
「流石にしないから」
「恥ずかしいです……」
「ふふ。二人とも、初々しくて、可愛い」
危うく、ティーリア先生にキスをしている場面を見られるところであったため、アルベネロとクレアは恥ずかしそうにしている。
一方、ティーリア先生は二人を眺めながら、満足した様子で微笑んでおり、とても嬉しそうであった。
「……っと、そろそろ、学院長のところに戻るよ。目を覚ましてるかもしれないしな」
アルベネロは予定よりも時間が経過していることに気づき、クレアとティーリア先生に学院長室へ戻ると伝える。
「確かに、目が覚めた時にひとりぼっちだと、寂しいから、早く戻ってあげて」
「ああ。そうする」
「行ってらっしゃい。気をつけてね?」
「ありがとう。行ってきます」
「ちょっと待って」
クレアに見送られ、アルベネロは学院長室へ転移しようと思った矢先、ティーリア先生に静止されてしまう。
「姉ちゃん?」
「アー君。これ、持っていって」
「これって……?」
ティーリア先生に呼び止められ、そちらに視線を向ける、アルベネロ。視線の先には木製の籠が宙に浮いている状況が目に入り、ティーリア先生が指を振ると、自然と籠は前へと移動する。
「お弁当よ。二人分、入ってるから」
「いつの間に……」
「元々、アー君のために用意してた分よ。学院長と一緒に食べたらいいわ」
「はは……ありがとう」
「どういたしまして。それじゃ、行ってらっしゃい」
バスケットの中身はお弁当であると伝えられ、アルベネロは驚いてしまいながら、籠を受け取り、ティーリア先生へ感謝を伝える。
ティーリア先生は何でもないことのように答えれば、クレアと同様にアルベネロを見送る。
「行ってきます」
アルベネロは二人へ背中を向ければ、転移魔法を発動させると、部屋の中から姿が消え、学院長室へと移動する。
「それじゃ、私たちもご飯にしましょう。アー君の昔話は、また、あとで、ね?」
「はい‼︎」
アルベネロを見送った、クレアとティーリア先生は夕食の準備を始めるのであった。
余談だが、ティーリア先生がクレアへ、アルベネロの昔話を話していたことを本人が知るのは、かなり後である。
[場面は変わり、学院長室内。部屋の中にはアルベネロと、未だに気を失ったままのマナが居た……]
「そろそろ……目を覚ましてもおかしくないんだが……」
「んっ……」
学院長室へ戻った後も、マナは気を失ったままであったため、アルベネロは向かいのソファーに座っており、目を覚ますのを待っていた。
「はっ……‼︎」
「大丈夫か?」
「あ、アル……?」
それなりの時間が過ぎた頃、遂に目を覚ました、マナ。アルベネロはその様子に安心すると、声を掛ければ、マナは呆然としており、今の状況があまりわかっていない様子である。
「覚えてないのか?」
「いや、確か……アルが来て……抱きしめられて……」
アルベネロに訊ねられ、マナはソファーに横たわっている体勢から起き上がり、座り直すて、最近の記憶を思い出そうとしていく。
そして、意識がはっきりしてきたのか、だんだんと気を失う直前の出来事が頭の中に浮かび上がっていく。
「そのあと……そのあ、と……その、あ、と……」
「思い出したか?」
「……夢ではないんだな?」
「ああ……夢じゃない」
完全に気を失う直前までの記憶を思い出したのか、どんどん顔が赤くなっていく、マナ。
その様子にアルベネロも今更、気恥ずかしさを感じてしまう。
「そ、そうか……ふふ。まだ、あまり信じられない。アルから好きと言ってもらえたなんて」
アルベネロからの告白が、夢ではなく、現実であることを改め、マナは笑みを浮かべて、幸せそうにする。
「本当はあそこまでストレートに伝えるつもりはなかったんだが……まさか、もっとわかりやすく伝えてほしい、なんて、言われるとは思ってなかったからな」
「あ、あれは……すまなかった」
幸せそうなマナの表情を見て、嬉しく思う、アルベネロ。しかし、言葉を換えて、二度も告白することになったことはかなり恥ずかしかったことには違いないため、眉をひそめる。
当の本人も、申し訳なくは思っているようで、顔を逸らしながらも、謝罪する。
「まあ、それについて、とやかく言うこともないか……」
「そ、そうだ。それに、お陰ではっきりと伝わった」
「なら……恥ずかしい思いをした甲斐があった」
好意を伝えること自体は成功したため、アルベネロは抗議する気も起きず、マナは安堵しながら何度か頷く。
「それにしても……突然、告白なんて、何かあったのか? 私としては嬉しい限りだが」
「まあ、色々、あったが……クレアのことが好きって気持ちがどんなものかわかって、その気持ちをマナにも向けてたのに気づいたんだ」
「つまり……レッドローズのことを好きになったから、私のことも好きであると気づけた、ということか?」
「まあ、そう言うことだな」
クレアを好きになったからこそ、マナへ向ける気持ちが家族愛ではないことに気づいた、アルベネロ。そのことをマナへ隠さずに答えれば、マナの表情は悔しそうなものへと変わる。
「くっ、まさか、レッドローズに先を越されたことが有意に働くとは……嬉しいが、なんだか複雑な気持ちだ」
「ああ……その……すまない」
先に恋人の座を獲った、クレアのおかげで、恋人になるきっかけができたことに対して、マナは少し不服そうにしているため、アルベネロは思わず、謝る。
「アルが悪いわけじゃない。それに、恋人同士になれたことには違いない」
「確かに、それは違いない」
理由はどうあれ、アルベネロと恋人同士になれたので、悔しそうな表情ながらもマナの口元は少し緩んでおり、幸せそうなのがわかる。
「……今、気づいたんだが、好きと伝えて、その後はまだだったな」
「そ、その後?」
アルベネロは何かに気づいたのか、姿勢を正すと、ソファへ座る、マナを真剣な表情で見つめる。
突然、アルベネロから真剣な表情で見つめられ、マナも緊張した様子で姿勢を正す。
「知っての通り、俺は普通じゃない。それに、他にも大切な恋人がいる。不誠実とは自覚してるが、それでも、マナを恋人にしたい。付き合ってくれないか?」
「……ふふ。私の返答はわかっているだろう?」
何度もアルベネロへ告白してきた、マナであったが、アルベネロから初めて告白され、マナは自身鼓動が高くなっていることを自覚しながら、笑みを浮かべる。
「喜んで。これからは恋人同士とし、よろしく頼む」
「ありがとう」
十中八九、受け入れてもらえると、確信していた、アルベネロ。しかし、それでも断られる可能性もあると心配もあったため、マナに受け入れてもらえると心底、安心した表情に変わり、感謝を伝える。
「遂に、私とアルが恋人同士に……何年もそうなろうと努力してきたが、こんなに突然とは、思ってなかった」
「はは……学院長室で告白するとは、俺も思ってなかった」
告白を終え、アルべネロとマナは隣同士でソファーに座り、幸せに浸る。
ソファーに座る、二人の距離は肩が触れ合わんばかりであり、自然とお互いの手が触れ合うと、恋人繋ぎをする。
「これがアルの手か……中々、大きいな」
「逆にマナの手は小さくて綺麗だな」
アルベネロとクレアは相手の手について、感想を言い、互いに照れているのか、二人とも顔を赤くしている。
「……」
「……」
アルべネロとマナは手を繋いだ後、無言になり、繋がる相手の感触を堪能すれば、二人とも、顔を赤くしていく。
「……ふふ」
「どうかしたか?」
「何……こうやってアルと手を繋いでいるだけで、こんなに幸せになれるのかと、な」
アルベネロの質問に対して、嬉しそうに答える、マナ。その表情にアルベネロは胸が高鳴る感覚を抱く。
「なら、男としては、もっと、幸せにしないとな」
「ああ。もっと幸せを感じさせて欲しい……アル」
他の誰も居ない部屋の中、自然とアルベネロとマナは顔を向け合う。
「」
そして、マナは誰に言われた訳でもなく、自然と目を瞑り、期待するように唇をほんの少し前に突き出す。
「マナ……」
「アル……」
互いに名前を呼び合うと、二人の唇が重なり、しばらくの間、部屋の中には二人の息遣いが響く。
「はぁ……はぁ……とても情熱的だ」
「……当たり前だろ? 恋人が目の前に居るんだからな」
「ふふ……そうか」
長く重なっていた唇が離れると、マナは息を荒くしながらもアルベネロから目を離そうとはせず、アルベネロもマナから目を離さず、見つめ合い続ける。
「その……ここから先のことは、私も知識だけだが……するのか?」
「……生々しいこと聞くな」
「あふぅ⁉︎」
マナはこの後に起きる可能性を考えると、恥ずかしそうにしながら、アルベネロへ確認する。アルベネロは少しだけ考えてしまいながら、マナのおでこへデコピンを当てる。
「ま、真面目に聞いたのに、なんだこの仕打ち⁉︎」
「思わず……すまない」
「むぅ……照れ隠しと思っておこう」
抗議するようにアルベネロへ顔を向ける、マナ。一方、アルベネロはマナのおでこへデコピンしたあと、すぐに復活したマナに呆れた表情を向ける。
「それに、私としても、もう少し覚悟を決めたいところだ」
「なら……互いに覚悟が決まったら、だな」
「そうしよう」
キスの後については、保留となり、アルベネロとマナは内心、ホッとしたのか緊張が解ける。
「代わりと言ってはなんだが……もう一度、キスをしたくないか?」
「ああ……そうだな。俺もマナとキスしたい」
「そ、そうか。ふふ……」
マナからキスを提案され、アルベネロは一瞬、考える素振りを見せるが、すぐに同意すると、マナを抱きしめ、鼻先が触れ合わんばかりの至近距離で見つめ合う。
「アル、好きだ。これからもよろしく頼む」
「俺も好きだ。マナ。こっちこそ、よろしく頼む」
互いに気持ちを伝え合う、アルベネロとマナ。自然と唇を重ねては、先ほどよりも唇を深く押しつけ、先ほどよりも長く重ね合わせ、幸せを噛み締めるのであった。
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