~自覚した想い~
お昼休み、アルベネロとクレアは、エンリエット会長を助けるための相談は一旦、終わりを迎えた後、お昼休み以降の授業を受ける。
そして、放課後を迎え、二人は自主練のため寮へと戻ると、ティーリア先生から神眼の力を抑えるため、アルベネロとクレアは互いに手を握り合い、見つめ合いながら、力を抑える訓練をすることになる。また、力を抑えられるようになるまで、実技訓練でも同じ訓練を行うとティーリア先生から告げられ、アルベネロは必死に神眼の制御を行うのであった。
「……」
「……」
訓練を始め、日もかなり落ちた頃、アルベネロとクレアは互いに顔を真っ赤にした状態でソファーへ倒れ込む。
「二人とも、お疲れさま。しっかり抑えられるようになったのは流石、アー君ね」
「かなり必死だったからな……」
レインやレオも居る、実技訓練の時間で、クレアと手を握りあい、見つめ合う、この訓練をしたくなかったため、アルベネロは必死であった。
「クレアちゃん、大丈夫?」
「は、はい。大丈夫です……」
アルベネロと同様に顔を赤くして、ソファーに倒れている、クレア。ティーリア先生に心配され、何とか体を起こすと、アルベネロの方をチラッと見ては、恥ずかしそうに顔を逸らしてしまう。
「ちなみに何か感想はある?」
「……精神的に疲れた」
ティーリア先生から感想を求められ、アルベネロは疲れた表情で答える。
理由としては、アルベネロは訓練の間、ずっとクレアの顔を見つめながら、神眼の力を抑えようとしていた。
しかし、少しでも気を抜けば、恥ずかしそうに顔を赤くしているクレアの可愛らしさに意識が向いてしまい、神眼を抑えられなくなってしまう。そのため、同じ失敗を何度も繰り返しながらの訓練で、アルベネロはかなり疲弊していたのである。
「私もそうですね……」
「クレアちゃんも疲れちゃった?」
一方、クレアも、アルベネロと同じ感想を抱いていたようで、実際、真剣な表情のアルベネロに見つめられ続け、照れと恥ずかしさでどんどん顔を赤くなっていき、さらには、キョロキョロと左右に顔を動かしたりと、挙動不審になっていた。
「それにしても驚いたわ。アー君でも、今日中は無理だと思ってたから」
「まあ、前から出来てたら、封印なんて、しなくて済んだからな」
アルベネロの成長には、ティーリア先生も驚いていたようで、本当に訓練が一日で終わったことに対して、意外そうな表情をしている。
「アー君が成長してる証ね。それに、愛のなせる技なのかも」
「はは……そうかもしれないな」
「もう……」
恋人の存在が強くするとはよく言ったもので、アルベネロもティーリア先生の言葉を否定せず、逆に肯定すれば、ようやく赤みが減ってきていた、クレアの顔がまた、赤くなっていき、恥ずかしそうに俯いてしまう。
しかし、よく見ると、口元は|緩んでおり、恥ずかしさと嬉しさが入り混じっているのがわかる。
「ふふ。それじゃ、あとは二人でイチャイチャしてほしいんだけど……アー君。学院長が呼んでるわよ」
「そうなのか?」
「自主練の後でいいから、来てほしいって、言ってたわ。ちなみに場所は学院長室よ」
ティーリア先生から、マナが呼んでいることを知った、アルベネロ。自主練の後でも問題ないのであれば、急用ではないと思うも、何かあったのかと、危機感を抱く。
「……」
「私のことなら心配しないで、行ってきて」
すぐにでも、学院長室へ向かおうと思う、アルベネロ。
しかし、クレアを部屋へ置いていくことに抵抗を感じ、後ろ髪を引かれる思いであったが、クレア本人から背中を押される。
「良いのか?」
「もちろんよ。ほら、早く行った方がいいんでしょ?」
「ああ。ありがとう。用が済んだら、すぐに戻るから」
「ええ。気をつけてね」
アルベネロはクレアに送り出されると、部屋を後にして、寮へと向かっていくと、必然、アルベネロの部屋には、クレアとティーリア先生の二人だけとなる。
「それじゃ、アー君が戻ってくるまで、アー君が小さい頃の話でも、聞く?」
「聞きたいです??」
「ふふ。それじゃ……私とアー君が一緒に暮らし始めて、少し経った頃から……」
「……」
アルベネロの昔話に興味津々な様子のクレア。ティーリア先生はその様子を楽しそうに眺めながら、アルベネロ本人の許可を得ることなく、昔話が語られ始めるのであった。
[場面は変わり、学院長室の前まで到着した、アルベネロ……]
「まだ居れば良いんだが……」
コンコンッ
放課後を迎えてから、かなりの時間が経過しているため、マナが学院長室へ居ない可能性も考えながら、扉を数回、ノックする。
「入って構わない」
「失礼します」
「アルか。すぐ終わらせるから、ソファーに座っていてくれ」
まだマナは学院長室に居たようで、声が聞こえてくると、アルベネロは安心すると、息を吐き、扉を開ける。
部屋の中、両袖デスクの椅子にマナは座っており、アルベネロが入ってきたことに気づけば、手元の書類に素早く何かを書き込んでいく。
「こんな時間まで仕事なのか?」
「いつもはここまで遅くないが……親善試合の調整で仕事が増えたんだ」
「なるほどな……」
既に時間は夕食時であり、その時間までマナは仕事をしていることを知った、アルベネロ。呼び出した理由を確認する必要はあるが、マナの仕事を邪魔しないよう、ソファーへ座り、待つことにする。
「ふぅ……これで終わりだ。待たせてしまったな」
「大丈夫だ。それより……今日、呼び出した理由を聞いて良いか?」
仕事を終えた様子のマナはその場で伸びをすれば、当然、豊かな胸が弾み、健全な青少年である、アルベネロは思わず、見てしまったため、自然と顔を逸らすと、マナへ呼び出した理由を確認する。
「ああ……それはだな……」
「……」
アルベネロの質問に、マナは俯くと表情は深刻そうなものに変わる。その様子にアルベネロは何か重大なことがあったのかと、身構える。
「最近……構ってくれないから……」
「……もう一回、言ってくれないか?」
「だから……最近、レッドローズとばかり一緒に居て、構ってくれないから……呼んだんだ」
「……」
明かされる理由に、呆然とする、アルベネロ。マナも流石に気が咎めているようで、俯いた状態から、顔を上げようとはしない。
「私も職権濫用とは自覚して……」
「はぁ……」
マナ自身、悪いことをしているという、自覚はあるのか、申し訳なさそうな表情が見てとれる。そんなマナの様子に、アルベネロは大きくため息を吐くと、ソファーから立ち上がり、両袖デスクに座る、マナの元まで移動する。
「寂しい思いをさせた」
「ふぇ……⁉︎」
アルベネロは躊躇うことなく、マナを横から抱きしめる。まさか、アルベネロに抱きしめられるとは予想していなかった様子のマナは、頭の中が真っ白になったのか、動かなくなると、顔がどんどん赤くなっていく。
「あ、あ、アル……これは⁉︎」
「ダメだったか?」
「いや、とても幸せだ。ただ……怒られるか、呆れられると思っていたから……」
「なるほどな」
「その……怒らないのか?」
怒られるどころか、アルベネロに抱きしめられている状況に、マナは混乱しながらも逃げるようなことはなく、嬉しそうに表情を緩めるものの、呆れられることも、怒られることもないことに対して、アルベネロへ疑問を投げかける。
「寂しがらせたのは本当だからな……それとも、怒って欲しかったのか?」
「いや⁉︎ そういうことじゃないからな⁉︎」
マナの疑問に、失笑してしまう、アルベネロ。怒られたかったのかと、冗談で確認すれば、慌てた様子でマナは否定する。
「ははは……」
「わ、笑うほどではないだろ……」
「いや、まさか、マナがそんな慌てるなんて、思ってなかったからな」
慌てて否定するマナの様子に、アルベネロは抑えることなく、笑ってしまうと、マナは顔を赤くして、恥ずかしそうにしながら抗議するのであった。
「どうだ?」
「あ、ああ……」
しばらくの間、アルベネロは抱きしめた後、ゆっくりと腕を広げ、マナを解放する。
一方、マナは抱きしめられていた幸福感で口元が緩んでしまっており、惚けた様子である。
「嬉しそうだな」
「……素晴らしい時間だった」
恍惚とした表情で余韻に浸る、マナ。アルベネロはその様子を見て、笑みを浮かべると、ソファーへ移動する。
「ふぅ……」
「落ち着いたか?」
「ああ。それにしても、本当にどうしたというんだ? 私としては嬉しい限りだが……」
ようやく、マナは正気を取り戻すと、いつもとは明らかに態度が違う理由をアルベネロへ訊ねる。
「ああ……まあ、なんというか……自分の心に従ったんだ」
「心に?」
マナから理由を訊ねられ、アルベネロは少し言いづらそうにしながら、心に従った結果だと答える。その答えに対して、マナは意味を理解が出来ていないようで、首を傾げる。
「ああ……つまり……」
「つまり?」
「……大切な相手を寂しがらせたんだから男として、何かするのは当然だろ?」
「なる、ほ、ど……?」
意を決したように、マナへ顔を向ける、アルベネロ。そして、はっきりと大切な相手という言葉も添えて、理由を答える。
その答えに、マナは納得したように頷こうとしたが、言葉の意味を理解したのか、驚いた表情に変わる。
「そ、それはその……家族として、ということか?」
「違う。一人の女性として、だ」
「ま、待ってくれ。あれだ。その……ダメだ。思考が纏まらない……」
今まで何度もアルベネロへ好意を伝え続けた、マナだが、ただの一度も受け入れてくれることはなかった。
だからこそ、突然、アルベネロからはっきりと好意を伝えられ、マナは混乱してしまっており、状況が理解できていないようで、目を回し始めている。
「あ、アル……」
「んっ?」
「もっと、はっきりと……教えてくれないか?」
「なっ⁉︎」
「わ、私の頭が理解しようとしてくれないんだ。た、頼む‼︎」
「さっきのでも、かなり頑張ったんだからな……」
混乱した頭でも意味を理解するため、さらにわかりやすい言葉で説明してほしいと、マナは必死に懇願する。その様子にアルベネロは口元を引き攣らせると、顔を手で押さえる。
『あれ以上にはっきり……』
マナの希望に応えようと思う、アルベネロ。わかりやすい言葉で、否が応でも理解できる方法を考えると、一つの答えにたどり着く。
『は、はっきり伝わるが、この方法は……いや、ここまで来たら……逃げるな、俺』
思いついた方法を実行することに、アルベネロは足踏みをするが、もう一度、覚悟を決めると、ソファーから立ち上がり、マナの隣へ移動する。
「……立ってくれないか?」
「立つのか?」
「ああ」
「わ、わかった」
アルベネロに立つように言われると、マナは戸惑った様子ながらも、言われた通りに椅子から立ち上がる。身長差はあまりない二人、少しだけアルベネロが高い程度であり、お互いの顔を正面に見ることが可能である。
「……」
「……」
無言のまま、互いに見つめ合う、数秒の時間。ほとんど時間は経過していないはずだが、とても長く感じる時間に、アルベネロとクレアの緊張は高まる。
「はっきり伝えるから……聞き逃したとか、なしだからな?」
「わ、わかった……」
最後にマナへ釘を刺す、アルベネロ。深呼吸を数回した後、ゆっくりと口を開ければ……
「マナ。好きだ」
「んんぅ……⁉︎」
アルベネロは好きであることをそのまま言葉で伝えたあと、アルベネロはマナの唇に自分の唇を重ね、好意を行動でも示す。
「んっ……これで通じたか?」
「ふぁ……ふぁ……」
アルベネロはすぐに顔を離すと、息を整えてから、マナへ自分の想いが伝わったのか、訊ねる。
しかし、当の本人はアルベネロの声がまるで聞こえていないようで、口をパクパクとさせており、誰が見ても正常な状態ではないのが見てとれる。
「だ、大丈夫か?」
「あ、アルに今、わた、わたし……」
「お、落ち着け……」
「き、き、きしゅ、され、て……きゅ〜〜」
「マナ⁉︎」
混乱が最高潮に達したのか、マナはそのまま気を失ってしまう。
そして、身体の力が抜けると、自然とアルベネロに向かって、倒れ込んでしまい、咄嗟にアルベネロが身体を受け止め、地面に倒れることは防ぐのであった。
『む、胸が……』
前から倒れ込んできたマナを受け止めたので、当然、豊かな大きさの膨らみがアルベネロの胸に押し付けられると、その感触に少し足元がふらつく。
「きゅ〜〜……」
「……しばらく目は覚めないな」
深呼吸を繰り返し、冷静さを取り戻した、アルベネロ。気を失った、マナを休ませるために、ソファーまで運ぶと、横に寝かせる。神眼の力で状態を確認し、しばらく目は覚まさないだろうと判断すれば、ため息を吐く。
「とりあえず……クレアと姉ちゃんには、先に話しておかないとな」
流石に、気を失っているマナをしばらく放置しておく訳にもいかないが、クレアとティーリア先生を待たせていることもあり、一旦、アルベネロは寮の自室へ戻ることにする。
そして、ソファーで横になっている、マナの頭を優しく撫でると、転移魔法で寮へ移動するのであった。
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作者:@canadeyuuki0718
絵師様:@Eroinstein7027




