~恋仲案とイチャイチャ訓練~
第九回ネット小説大賞は残念ながら、一次審査突破ならずでしたが、今後も頑張っていきます!!
強引に生徒会室へ連れ込まれた、アルベネロとクレアは、連れ込んだ張本人である、エンリエット会長から、お見合い話が来ており、パーティーでお見合い話を受ける条件を公言しているため、断れない状況である。そのため、力を貸して欲しいとお願いされる。
二人は見捨てるわけにもいかず、いくつか打開策を考えていく中、エンリエット会長は、自分も恋人に加えることをアルベネロへ提案するのであった。
「冗談だよな?」
「結構、本気です。それに、自分で言うのもなんですが、クレアと同じぐらい魅力はあると思ってます」
「それは否定しないが……」
思わぬ提案に冗談かと尋ねる、アルベネロだが、エンリエット会長は本気であると答え、魅力も持ち合わせていると自負する。本人の言う通り、美しい容姿に、凛とした雰囲気と、大変な魅力の持ち主であることは事実であるため、余計にアルベネロは返答に困ってしまう。
「会長……名案」
「そこは止めてくれ‼︎」
「会長が望むことなら……止める理由ない。それに、恋人が出来たら、お見合い話は無くなる。万事、解決」
「……クレア。助けてくれないか?」
ミィはエンリエット会長が望むことなら、全面的に賛同するようであり、アルベネロは最後の希望として、クレアに助けを求める。
「エリィ。流石にアルの意思を無視して、決めるのは許せないわ。方法自体は良いと思うけど」
「方法は良いんだな……」
「ええ。恋人が居たら、お見合い話がなくなるのは確かだから」
クレアは流石にエンリエット会長を止めるが、方法には賛同しており、アルベネロは複雑な気持ちになる。
「つまり、アルベネロさんを、その気にさせれば良いんですね」
「そうね。アルがエリィも恋人にしたいって言うなら、止める理由はないわ。その時は一緒にアルを支えていきましょう」
既にエンリエット会長はアルベネロの恋人になること前提で話を進めており、クレアも、アルベネロの意思を無視しなければ、恋人になっても問題ないと告げる。
「クレアは良いのか?」
「ふふ。私のことを気にしてくれてるなら、大丈夫よ。一夫多妻なんて、貴族の中だとよくあることだし」
「まあ、そうなんだが……」
複数人と恋人関係になることについて、肯定的なクレアに対して、アルベネロは否定まではしないものの、考え方が異なり、違和感を抱いていた。
「こんなこと言って、戸惑ったかしら?」
「まあ、少しな」
「こればっかりは考え方ね。たくさん恋人が出来るってことは、それだけ、たくさんの人に好かれる素敵な人って思うし、みんなでアルを支えてあげられるなら、願ってもないことよ」
「……なるほどな」
アルベネロが戸惑っていることに気づいた、クレア。自分の考え方を隠すようなことはせずに、しっかりと伝えれば、アルベネロも一つの価値観として、理解する。
「それでは、お見合い話の打開策として、私をアルベネロさんの恋人に加えていただくことを目指すということで決まりですね」
「んっ……異議なし」
「私も特に異議はないわね」
「はぁ……好きにしてくれ……」
遂にお見合い話の打開策について、アルベネロを除く、三人が同意し、残る一人である、アルベネロは反論する気力もなく、ため息を吐き、項垂れるのであった。
「おっと……そろそろお昼休みも終わりのようですね」
「あっという間だったわね」
「遅刻する前に戻らないとな」
「ええ。そうしましょう。またね。エリィ」
「はい。ありがとうございました」
「ありがとう」
エンリエット会長がお昼休みの残り時間が少ないことに気がつくと、解散となり、エンリエット会長とミィは生徒会室から出る、アルベネロとクレアに感謝を伝え、二人を見送り、扉を閉める。
「あの二人は教室に戻らないのか?」
「戸締まりを確認してるのかもしれないわね。それか、何かすることがあるのかも」
「……今から生徒会室で何かするとして、遅刻しないか?」
生徒会室から出てこない、エンリエット会長とミィのことが気になった、アルベネロ。その気掛かりに、クレアは思い当たる理由を教えてくれたが、新たな疑問が生まれる。
「そこは問題ないのよ。生徒会はお昼休みの後からなら、授業へ出ずに、生徒会室で作業することを認められてるから」
「特権だな」
「まあ、成績が落ちたら、即、生徒会から抜けることになるみたいだから、用事が無かったら、出ない人の方が少ないわね」
「それは……気軽に授業を抜けれないな」
生徒会に与えられている特権について、クレアから説明を受け、アルベネロは特権を与えられる代わりに、生徒会へ居続けるためには、成績を維持する必要があり、かなり重圧を感じるだろうと納得する。
「俺たちは教室に戻るか。時間は大丈夫だよな?」
「ええ。少しだけど余裕があるわよ」
「なら、ゆっくり戻るか」
「……そう言えば、エリィに連れ込まれたから、アルはまだ、書いてなかったんじゃないかしら?」
アルベネロは、クレアが懐中時計を取り出したので、時間を確認した後、お昼休みが終わる前に教室へ戻ろうとする。
しかし、エンリエット会長に生徒会室へ連れ込まれたため、アルベネロだけが親善試合に応募できていなかったことに、クレアは気づく。
「書いて……ないな。すぐ書く」
「まだ時間はあるから、大丈ーー」
「よし。書いた」
「……えっ?」
クレアの言葉に、アルベネロは応募していなかったことを思い出し、生徒会室の前に浮いている本へ顔を向ける。
クレアは時間にまだ余裕があることをアルベネロへ伝えるが、当の本人は書き終えたと告げ、本から顔を逸らす。
「まだ本も開けてないのに?」
「魔力で書くなら、開いてるかどうかは関係ないからな」
「で、でも、本を開けないと、どのページに書けるかまでは、わからないんじゃ?」
「それは……神眼で見れる」
「べ、便利ね……」
本すら開けずに名前を書き終える、アルベネロ。その事に対して、クレアは面食らっている様子であり、アルベネロは記入した方法を説明すると、クレアは口元を引き攣らせる結果となる。
「アルが規格外なのはわかってるつもりだけど……本当にすごい力よね」
「ああ。封印を一つ解いたから、神眼の力も、さらに強くなってるしな。そのせいで力を抑えるのが大変なんだが」
神眼を抑え込むことはアルベネロでも、容易なことではなく、封印を掛けて、ようやく制御していた。しかし、学院襲撃事件の際に封印を一つ、解いているため、抑え込むことがさらに容易ではなくなっている。
「っと……ここで話してる場合じゃなかったな。時間は大丈夫か?」
「まだ、大丈夫だけど……余裕はもうないわね」
「なら、後は歩きながらだな」
「ええ。それが一番だと思うわ」
お昼休みが終了する時間を気にして、アルベネロとクレアは教室に向かって、歩き始める。
少し歩けば、他の生徒たちともすれ違い始め、遅刻することなく、教室へたどり着くのであった。
[そして、お昼休みが終わり、午後の授業が始まる。午後の授業でも、目立った出来事はなく、平穏な時間が過ぎていき、そのまま、放課後を迎える……]
「今日の訓練はどんな感じかしら?」
「とりあえず、姉ちゃんが用意する飲み物には気をつけないとな」
「確かにそうね……」
放課後、アルベネロとクレアは自主練のため、教室を後にする。目的地はアルベネロの部屋であり、部屋の前まで辿り着くと、扉を開けて、中へ入る。
「やっぱり先に居るんだな」
「アー君も転移魔法を使えば、私と同じぐらいに帰れるわよ?」
「いや、目立つから……」
アルベネロとクレアが部屋の中へ入ると、ティーリア先生が、既にソファーへ座っており、三人分の紅茶まで用意されているため、二人もソファーへ向かう。
当然、隣同士でアルベネロとクレアはソファーへ座ると紅茶を味わう。
「揃ったところで、今日も、アー君とクレアちゃんのイチャイチャ訓練の時間ね」
「イチャイチャ訓練って……」
「すごい名前ですね……」
全員が揃ったため、楽しそうにティーリア先生が訓練名と共に開始の宣言をすると、その訓練名に、アルベネロとクレアは呆気にとられてしまう。
「あながち、間違ってないと思うわよ?」
「……確かにそうだな」
「そうね……」
昨日の自主練を思い出した二人は、ティーリア先生の言葉を否定することができなくなり、クレアは少し恥ずかしそうに頬を赤く染める。
「それじゃ、今日の訓練だけど……二人とも、参加は済ませた?」
「ああ。済んでる」
「大丈夫です」
「それなら……」
ティーリア先生はアルベネロとクレアが親善試合の応募を済ませたことを確認すると、少し考える素振りを見せる。
「今日からは、アー君の訓練も始めるわ」
「俺も?」
「ええ。今、神眼を抑えきれてないでしょ?」
「知ってたんだな……」
自分が訓練を受ける側になるとは思っておらず、アルベネロは驚くが、神眼について、指摘されると、図星を突かれてしまい、観念する。
「アー君のことなら、何でも知ってるんだから」
「何でもは怖いから……」
「あはは……ちなみに、どうやって、訓練をするんですか?」
自信満々に何でも知っていると答える、ティーリア先生。その言葉にアルベネロはため息を吐くと、クレアは苦笑いを浮かべる。
そして、話題を変えようと、訓練方法について、ティーリア先生へ質問する。
「簡単な方法よ。アー君がクレアちゃんを見つめ続けるの」
「「えっ?」」
「アー君とクレアちゃんがイチャイチャしながら、訓練する方法として、かなり良いと思うわ」
「「……」」
予想外の訓練方法に、アルベネロとクレアは唖然としてしまう。しかし、発案者のティーリア先生は至って、真剣な様子であり、否定し辛くなる。
「本気なのか?」
「ええ。この方法なら、クレアちゃんも強く出来るわ」
「見つめ合うだけで、私も強くなれるんですか?」
アルベネロが困惑した表情で、ティーリア先生へ本気なのかと確認するが、当の本人は真面目な様子である。一方、クレアは見つめ合うだけで強くなれることに疑問を抱いたようで、ティーリア先生へ質問する。
「まず、クレアちゃんがもっと強くなるためには、アー君の魔力をさらに受け取る必要があるわ。そのために、昨日の訓練で下地は作ったから、あとはたくさん触れ合うだけ」
「つまり……」
「どんどんイチャイチャすることが強くなる近道よ」
「えーと……流石に信じづらいですね……」
どうして強くなれるかについて、説明されるが、今まで真面目に訓練を行ってきた、クレアは、イチャイチャするだけで、強くなれると説明されても、鵜呑みにすることは出来ないようで、半信半疑といった様子である。
「今までの常識から考えたら、当然ね。とりあえず、時間が惜しいから始めていくわ。二人とも、向かい合って」
「……わかった」
「わかりました」
半信半疑ながらもティーリア先生の指示に、クレアはは従うようで、ソファーに座った状態でアルベネロと向き合うように座る。
「はい。それじゃ、相手の手をしっかり握って」
「見つめるだけじゃないのか?」
「触れ合ってた方が、お互い相手のことを意識できるでしょ?」
「まあ、確かに……クレア、手を握ってもいいか?」
「え、ええ。もちろんよ」
クレアは少し照れた様子ながらも頷くと、両手を少し前に突き出す。アルベネロは差し出された手に優しく触れると、ゆっくりと握っていく。
「……」
「……」
お互いの手に伝わってくる温もりが、どんどん相手を意識させていき、何か話すことなく、無言で見つめ合う。
「ふふ。本当、ラブラブね」
「うぉ⁉︎」
「ひゃっ⁉︎」
ティーリア先生の声に、アルベネロとクレアは驚くと視線を逸らす。先程よりも明らかに二人の顔は赤くなっており、相手のことをより意識していることが伝わってくる。
「はい。二人とも、見つめ合う」
「そう言われると……」
「恥ずかしさが……」
顔を逸らし合うため、ティーリア先生はアルベネロとクレアへ見つめ合うように指示を出すと、二人は先程とは違い、恥ずかしそうにしながらも見つめ合う。
「……」
「……あっ」
「アー君、出てきてるわ」
見つめ合っているため、アルベネロの瞳孔周りに虹色の波が現れていることをクレアが初めに気づき、後から、ティーリア先生が指摘する。
「うっ……」
「無意識に神眼を抑えられるようになるまで続けてもらうわ。もし、今日中に出来なかったら、実技訓練の時にも、してもらう予定よ」
アルベネロは悔しそうにしながら、神眼の力を抑え、目の色を元に戻す。
ティーリア先生はアルベネロへ目標を伝えると、達成できない場合は授業でも神眼の力を抑える訓練をすると宣告される。
「これを……レオ達の前で……」
「絶対、レインが揶揄ってくるわね……」
「だな……」
アルベネロはレインとレオに今の状況を見られた時のことを想像し、クレアも同じ想像に辿り着いたようで、二人とも苦笑いを浮かべる。
「あ、アル……頑張って」
「クレアのためにも、今日中に克服してみせる」
「やる気が出たみたいでよかったわ」
早急に目標を達成する必要ができたため、アルベネロは神眼の力を抑えることと、恋人を見つめることを同時に行っていくことに集中し始める。
一方、見つめられている、クレアの顔はかなり赤くなっており、訓練と言われても、ジッと見つめられることに恥ずかしさを感じているようで、時折、深呼吸をして、心を落ち着かせているのであった。
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