~生徒会長の悩み事~
親善試合へ参加するため、生徒会室の前に設置されている、本へ名前とクラスを記入する方法を見つけた、アルベネロ、クレア、レイン、レオ。四人の内、三人は名前とクラスを本へ書き込み、残るはアルベネロだけとなったが、生徒会室からエンリエット会長が出て来ると、アルベネロとクレアが恋人同士であることを知り、二人を生徒会室へ連れ込んでしまうのであった。
「お二人とも、お好きな席にどうぞ」
「エリィ、教室に戻っていいかしら?」
「今、紅茶を淹れますね」
「「……」」
全く話を聞いてくれない、エンリエット会長に、クレアは口元を引き攣らせており、アルベネロも同様に口元を引き攣らせる。
「いらっしゃい……」
「あなたもいたのね。ねぇ、エリィを止めてくれないかしら?」
「それは無理……私は会長の奴隷。会長のしたいことが最優先」
「その立場、まだ、こだわってるのね……」
「私の自慢……」
部屋の中には白狼族の少女が丸テーブルで座っており、クレアはその少女へエンリエット会長を止めるようにお願いするが、エンリエット会長の奴隷であると、嬉しそうに宣言し、助けようとはしない。
「奴隷?」
「んっ……私はライムガルデ家に奴隷として、買われた。その後、会長が私のご主人さまになってくれた」
「そうだったのか。主従関係には見えないが……」
「うん……会長は私を奴隷扱いしないで、大切にしてくれる。だから、私はどんな時でも会長の味方。奴隷じゃなくなっても」
「はは……家族に見えるよ」
ミィの言葉に、アルベネロは二人の間に、深い絆があることを察する。
余談だが、生徒会室の中央には大きな丸テーブルと六つの椅子が置かれており、周囲にはホワイトボードや本棚、食器棚等、様々な物が置かれている。
「どうぞ。紅茶です」
「はぁ……ありがとう」
「アルベネロさんも、どうぞ」
「ありがとうございます……」
エンリエット会長は食器棚からティーカップを二つ取り出せば、既に丸テーブルに置かれていた、ティーポットから紅茶をカップに注ぐ。
未だに立っている、アルベネロとクレアも、流石に諦めたようで、近くの椅子へ座れば、二人の前にそれぞれ、ティーカップが置かれる。
「会長……私は外に居たほうがいい?」
「ミィも居てもらえますか?」
「んっ……わかった」
気を利かせて、白狼族の少女、ミィは外に出たほうが良いかをエンリエット会長へ確認すると、その場に居るように指示されると、反抗することなく従う。
「それで、何か用なのかしら? まさか、本当に馴れ初め話を聞きたかった訳ではないでしょ?」
「ご名答です。まあ、クレアの馴れ初め話は教えてもらえるなら、聞きたくはありますねね」
無駄話は不要と、クレアは部屋の中へ連れ込んだ本当の理由を話すようにエンリエット会長を促す。
「実は……」
「「「……」」」
くぅ〜〜
今まさに、エンリエット会長が本題を話そうとした瞬間、部屋の中に可愛らしいお腹が鳴る音が響き渡る。静かな状況であったのが災いし、アルベネロ、クレア、エンリエット会長は音の発生源へ顔を向ける。
「……お腹、空いた」
「サンドイッチ、食べますか?」
「……食べる」
「ふふ、たくさん食べてください。お二人も食べますか?」
「……そう言えば、お昼はまだね」
「ああ。このあと、食堂に行く予定だったからな」
「それでは、お二人の分も合わせて……」
空腹を示すようにお腹を摩る、ミィ。エンリエット会長はサンドイッチの用意を提案すれば、嬉しそうにミィは頷く。アルベネロとクレアの分も用意すると、指輪を付けている左手を前に差し出す。
「ストレージボックス」
「よく学院まで持ち出せたわね……」
「説得しました」
指輪へ魔力を流し込めば、左手の前に魔方陣が現れると、その中へエンリエット会長は躊躇なく、手を入れる。
一方、クレアは魔導具の貴重さにすぐ気づくと、呆れたような表情に変わる。
「確かこの辺りに……」
「色々、入ってるのね」
「はい。便利な魔法ですから……」
エンリエット会長が発動した魔法【収納空間】は特別な空間に物を保管する力があり、中に収納された物の時間は停止するため、食べ物の場合、鮮度が保たれる。また、収納量は能力者次第であり、他人が取り出すことは出来ない。
「見つけました。皆さん、サンドイッチですよ」
「美味しそう……」
「なんで、そんなにサンドイッチを入れてるのよ……」
「はは……確かにたくさん入ってるな」
何かを探すように魔方陣の中に入れた手を動かしてはサンドイッチが載った皿を四つ取り出し、丸テーブルに並べる。ミィは並べられたサンドイッチに目を輝かせており、クレアはサンドイッチがお皿で四つも出てきたことに呆れている様子であり、アルベネロも少し戸惑っていた。
「それにしても……会長がつけてる魔導具って、かなり珍しい物だよな?」
「ええ。貴族でも持ってない家の方が多いぐらいよ」
「お二人も、どうぞ?」
「い、いただきます」
「はぁ……いただくわ」
アルベネロとクレアは魔導具の珍しさに意識が向いていたが、サンドイッチを勧められると、既に食べ始めている、ミィと同じようにサンドイッチを食べていく。
「美味しいわね」
「ああ。それにいろんな味があって、楽しいな」
「それはなによりです。ミィも美味しいですか?」
「最高……」
「ふふ。ゆっくり食べてくださいね」
エンリエット会長を除いた、他の三人は想像以上に美味しいサンドイッチを堪能する。
そして、十分程が経過すると、三人はサンドイッチを食べる手を止めて、満足そうに紅茶を飲む。
「さて、皆さんが満足したところで、本題に入りますね」
「あまり気乗りはしないけど……私たちを部屋に連れ込んでまで、話したい用件。一体、何かしら?」
食事が終わったことを確認し、三人へ声を掛ける、エンリエット会長。クレアは諦めた様子で用件を確認し、他の二人は無言でエンリエット会長へ顔を向ける。
「コホン。それは……」
「「「……」」」
一つ、咳払いをすると、エンリエット会長の表情は深刻そうな表情へ変わり、他の三人は無言になる。
「遂に……お見合い話が来てしまったんです」
「「えっ?」」
予想どころか想像もしていなかった内容に、思わず、アルベネロとクレアは呆然としてしまう。
「遂に……この時が来た……」
呆然とする、二人を他所に、ミィもエンリエット会長と同じように深刻そうな表情へ変わっている。
「えーと、エリィ。質問、良いかしら?」
「どうぞ」
「私たちの立場なら、お見合いなんて、嫌になる程、来るのはわかってるわよね?」
「もちろんです」
「なら、別に気にする必要はないでしょ? 嫌なら、断れるんだから」
同じ大貴族の娘である、クレアはエンリエット会長が深刻に思う理由が分からず、困惑していた。
大貴族の令嬢となれば、数え切れないほどの貴族が繋がりを作ろうと、お見合い話を持ち掛けてくる。その事実は貴族であれば、常識であり、避けることができないことである。
「クレアは忘れましたか? 私がお見合い話を受ける条件……」
「条件?」
「はい。以前のお茶会で、クレアにも話しましたよ?」
「そう言えば……話したわね。詳しくは思い出せないけど」
エンリエット会長の言葉に、クレアはお茶会のことを思い出した様子であるが、お見合いの条件については思い出せていない。
「えーと……どんな条件なんですか?」
「思い出してくれないようなので、話します……」
二人の会話を聞いていた、アルベネロ。このまま二人のやり取りを見ているだけでも良いかと考える。
しかし、話を進めるためにエンリエット会長へ質問すれば、クレアが思い出してくれないことに不満そうにするも、エンリエット会長は諦めたように息を吐く。
「まず、前提として、私はお見合い話を受ける気がなかったんです。ですが、クレアの話した通り、お見合い話はどんどん来ますし、礼儀として、返答する必要があります。面倒ですが」
「クレアもそうなのか?」
「ええ。無視したと思われたら、外聞が悪くなるから、仕方なくね」
無数に届くお見合い話にも、一つ一つ、対応する必要があることに、アルベネロは大変だなと思う。一方、当の二人は義務と割り切っているようだが、面倒である認識は同じであった。
「最初は私も貴族の義務として、受け入れてました。ただ……パーティーでも、お見合い話を何度も持ちかけられて、思わず、私に勝てるぐらいに強い人ではないと、お見合い話は受けないと……言ってしまったんです」
「……パーティーで言っちゃったの?」
「はい……」
「何してるのよ……」
エンリエット会長の行動に、クレアは大きなため息を吐く。当の本人もクレアの反応に反論できないようで無言のまま俯いてしまう。
「そんなに、深刻なのか?」
「ええ。パーティーで公言したことを有耶無耶には出来ないし、お見合いの条件なんて言ったら、それをクリアした時点でお見合い話を断ることはかなり大変よ。そのまま断れずに結婚することになる可能性すらあるわ」
アルベネロはどれほど深刻な事態であるかを完全には理解できず、クレアへ確認し、パーティーで公言することの重大さを説明してもらう。
「そこまでか……それで、お見合い話が来たってことは……」
「はい。私は学生の身なので、家の者に選考を任せています。その家から手紙でお見合い話が届いたので、家が認めるほどの方が現れたということです……」
「まだ、戦ってないなら、お見合い話は成立自体はしてないのね?」
「はい。それはまだです」
「ちなみに、その相手って誰なのかしら?」
「ゴラス伯爵です」
クレアの説明によって、事の深刻さを理解した、アルベネロ。エンリエット会長もお見合い相手についてや、現状について、説明する。
「まさか鉄壁のゴラスが相手なんてね……国内でも指折りの実力者。エリィが絶対に勝てるとは言い切れないわ……」
お見合い相手がゴラス伯爵であることを知り、クレアは険しい表情へ変わる。
「安心して……私がそいつを倒せば、会長より弱いって証明できる」
「ダメです。ゴラス伯爵は、王国でもかなりの実力者です」
「でも、倒さないと、会長はお見合い話を受けないといけなくなる……私は会長の幸せで居られる方を目指す」
「ミィ……」
ミィはお見合いを申し込んできたゴラス伯爵を倒すと宣言するが、すぐにエンリエット会長に止められてしまう。
しかし、エンリエット会長の幸せを一番に考える、ミィの意志は硬く、諦めようしない。
「ひとまず落ち着きなさい。エリィ。会うのはいつ?」
「親善試合の選抜メンバーが決まったら、一度、会うことになってます」
「なら、時間はあるわね。その間に……何か打開策を考えるわよ」
「それしかないな」
エンリエット会長とミィを宥める、クレア。相手との対面まで時間があることがわかると、お見合い話を破棄する策を考えることを提案し、アルベネロが同意する。
「アルベネロさんも助けてくださるんですか?」
「大切な恋人の親友が困ってるからな。それに、そんな話を聞いて、見捨てるほど薄情じゃない」
「なるほど……」
アルベネロも助けてくれることに、エンリエット会長は意外そうに思うが、アルベネロの言葉を聞き、思わず、羨ましそうな表情に変わると、クレアへ顔を向ける。
「……良い人を見つけましたね、クレア」
「ふふ。最高の相手よ。羨ましいでしょ?」
「認めるのは悔しいですが、羨ましいです……」
幸せそうな表情で惚気る、クレア。その様子に、エンリエット会長は自分との差に嫉妬を感じてしまう。
「そう言えば、ゴラス伯爵とのお見合いはどうして嫌なの?」
「そ、それは……その……生理的に……」
「まあ、年齢差……二十歳ぐらいかしら。わからなくはないわね」
「できるなら、同年代の方が良いですから……」
貴族として、歳の離れた相手と結婚する可能性があることは、エンリエット会長も理解しているが、それでも異性の好みは存在するのは当然のことであるため、誰も責めることはない。
「確実に勝てないなら……あとは、恋人を作って、発表することかしら」
「それが出来たら、苦労しません……それに、私より強い人じゃないと周りが認めてくれません……」
「わざと負けても、すぐバレるわね……」
クレアとエンリエット会長が打開策を考える中、公言した条件が枷となっており、二人を悩ませる結果となる。
「この学院で確実に勝つ相手って……私かアルぐらいじゃないかしら。レインもレオも難しいでしょうね」
「会長はかなりの実力者なんだな」
「当然……学院でもトップクラス」
学院内でエンリエット会長に勝てる相手をクレアは考えるが、片手の指で数えられるほどしか思いつかず、アルベネロはエンリエット会長の実力に少し興味が湧き、ミィが自慢げにエンリエット会長の実力を自慢する。
「噂では聞いていましたが、アルベネロさんも強いんですね?」
「私に勝つぐらいよ。当然でしょ」
「なるほど……それなら、私もアルベネロさんの恋人にしてください」
「はっ?」
お見合い話打破のため、相談を続ける中、予想だにしなかった、エンリエット会長からの提案に、アルベネロは呆気にとられてしまうのであった。
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