~著名な魔法使い達~
親善試合の参加募集が開始された日の翌日、特科クラスの教室内には応募に失敗したため、意気消沈している生徒たちが見受けられる。
そんな中、猫獣人のサキは応募に成功し、アルベネロ、クレア、レイン、レオへ問題ないとだけ伝えると、何が待ち受けているかは一切、話さないのであった。
「特科クラスで参加出来たのはサキ以外に居るのかしら?」
「どうでしょうか。落ち込んでる人たちは無理だったとしても、私たちみたいな人もいると思います」
クラスメイトであっても、親善試合の選考会が終わるまでは敵同士。そのため、クレアは突出した能力を持つ生徒が多い特科クラス内の出場者を確認しようと思う。
しかし、募集期間が終わっていないため、応募に成功した生徒を見分けることは困難な状況である。
「やっぱり、本に書かれてる名前を見るしかないな‼︎」
「あんまり褒められたことじゃないと思うんだが……」
レオは名前が書かれる確認しようと提案するが、アルベネロはあまり乗り気ではなく、協力には後ろ向きである。
しかし、止めるほどのことでもないとも思っており、レオの意見を否定まではしない。
「そんなことしてたら、エリーに怒られるわよ?」
「ま、マジか?」
「まあ、行儀の悪いことですし、生徒会の人に見られたら、注意ぐらいはされそうですね」
「うへぇ……」
「生徒会から目をつけられたくないなら、諦めるのが良さそうだな」
「だな……」
クレアとレインから忠告を受け、流石にレオも参加者の名前を本から確認することを諦めれば、落胆したように俯く。その様子にアルベネロも安心した様子で、何度か頷いていれば……
「皆さん、出席を確認するので、自分の席へ座ってください」
「っと、もうそんな時間か」
「早く座りましょう」
ガラッと開かれる扉。開かれた扉から担任のレーメ先生と副担任のティーリア先生が教室内へ入ってくる。立っていた生徒たちは教室内に入ってきた二人に気付き、急いで自分の席へ移動していく。
「改めて、おはようございます」
「「「おはようございます」」」
「皆さん、ちゃんと出席していますね。何人かは落ち込んでいるようですが……」
レーメ先生は教壇に立つと、朝の挨拶を行い、出席者を確認すれば、欠席者は居らず、全員、出席している。
しかし、全員が元気で出席しているわけではなく、何人かの生徒は親善試合の応募に失敗したため、表情は暗く、元気がない。
「親善試合だけがチャンスではないので、応募できなかった人は、これから、練習を頑張っていきましょう♪」
「「「は、はい‼︎」」」
暗い表情の生徒たちへティーリア先生はエールを送る。そうすると、今の今まで意気消沈していたとは思えないほど、応募に失敗した生徒たちは元気になり、力強く頷く。
「嘘みたいに元気になったわね……」
「ああ。流石は姉ちゃん」
あっという間に元気になった生徒たちを見て、クレアは驚き、他の生徒たちもクレアと同様に驚く。そんな中、アルベネロだけはティーリア先生が何をしたのか気づいていた。
「ティーリア先生、ありがとうございます。次に生かすためにも、皆さん、しっかりと授業に集中してくださいね♪」
「「「はい‼︎」」」
「いい返事です。それでは特に連絡事項もないので、十分後、魔法学の授業を始めていきたいと思います」
朝礼を終え、レーメ先生は教室に残り、ティーリア先生は教室を後にする。席に座っている生徒たちは授業の準備を行っており、すぐに十分が経過する。
キーン、コーン、カーン、コーン
「それでは、魔法学の授業を始めていきたいと思います。号令はサキさん。お願いします」
「はい。起立。気をつけ。礼」
「「「お願いします」」」
「着席」
チャイムと共にサキが号令を行い、授業が開始される。
「まずは前回の授業から時間が空いていますので、おさらいをしましょう」
「「「はい」」」
前回の授業は事件が発生する日の前日であったため、今日まで数週間、空いてしまっていた。
「前回、世界で最も著名な三人の魔法使い、その一人、不破の魔術師、メトロン・ライムガルデについて、説明しました」
「確か、会長のお兄さんなんですよね?」
「その通りです。また、【能動地雷】という魔法を作り出したことで著名です。詳しいことは教科書を確認してください」
レーメ先生はメトロン・ライムガルデについて、簡潔に説明すると、黒板へ名前、二つ名を書く。
「ここまでで何か質問はありますか?」
「勇者パーティーが解散したあとは何をされてるんですか?」
「今は貴族として領地の管理を行っています。また、ロムルス王国の軍事顧問として、指導も行っているようです」
生徒からの質問にレーメ先生は淀みなく答える。貴族は基本、国から任されている領地を管理する義務があり、大貴族ともなれば、管理する領地は広大となる。
「他に質問はありますか?」
「勇者パーティーがまた結成される予定はありますか?」
勇者パーティー。それは魔王討伐のため、各国から選ばれた実力者で構成された集団。
強さもさることながら、人気も凄まじく、勇者パーティーが街や村に立ち寄るだけでお祭り騒ぎになるほどである。
「今は特にそういった情報はありません」
「そうですか……」
レーメ先生の言葉に、質問した生徒は落胆する。勇者パーティーは何度も魔王に負けており、その度に勇者パーティーには犠牲者や脱退者が出てしまっている。そのため、不定期で勇者パーティーの募集が行われる。
しかし、近年では突出した技術だけでは、魔王を倒すことができないと、世界に選ばれた存在を勇者パーティーに加えるべきだと、募集は行われていない。
「他に質問はないですか?」
「「「……」」」
「無いようですね。それでは続いて、メトロン公と同様に教科書にも載っていますが、閃光の魔法剣士こと、冒険者ギルドに所属するサクハ副ギルドマスターについてです」
質問が途切れたため、レーメ先生は教科書に載っている、サクハ副ギルドマスターの名前、二つ名を書く。
「既にお気づきかと思いますが、魔法だけではなく、剣術にも精通しており、ギルド内でも屈指の実力者と言われています」
「魔法はどのぐらい使えるんですか?」
「上級魔法を使用した記録が残っています。しかし、彼女の実力なら、特異魔法を使えたとしても、不思議はありません」
攻撃魔法と剣術の両方を駆使して戦う、魔法剣士。戦いの中で攻撃魔法と剣術、両方を高水準で使用できる魔法使いはかなり少ない。
なぜなら、身体強化や牽制目的の魔法を使用しながら、武器で攻撃する魔法使いに比べ、至近距離での攻撃魔法の使用は少しでも威力を誤れば、自分自身も巻き込まれてしまうためである。
「また閃光の魔法剣士と呼ばれる由来として、魔法を発動させるまでの速さと、素早い動きから放たれる、高速の一振りから、名付けられたとされています」
「サクハ副ギルドマスターも有名な話があるんですか?」
「はい。教科書にも載っていますが、数年前、とある国が魔物の集団に襲われた際、単独で半数以上を討伐したと記録されています」
「かっこいい……」
教科書にもサクハ副ギルドマスターの功績についても記載されており、魔物討伐やギルドの改革を行ったと書かれている。
「今はギルドで何をしてるんですか?」
「現在、いくつもあるギルド支部全ての視察を行っている真っ最中と言われています。ただ、どの支部にいるかまではわかっていません」
「ここにもギルドが置かれますか?」
生徒の一人がギルドが聖ソーサリ魔術学院に設立されるのかをレーメ先生に質問する。
ギルドは国の許可があれば、他国にも支部を設立することが可能であり、国としても、民の不満が減るため、様々な特権が与えられる。
「それについては、学院長より、今のところ、置く必要はないと伺っています」
「どうしてですか? ギルドは便利って、よく聞くんですが?」
「そうですね……簡単に言えば、ギルドの発言力が障害になる可能性があるためです」
「発言力?」
「皆さんが知っての通り、ギルドは巨大な組織です。ギルドの意向を無視することは外交にも影響が出てしまう可能性があるほどです。そのため、ギルド設立はよく考える必要があるということです」
「なるほど……わかりました」
大国に劣らない規模の組織、ギルド。良い面だけを見れば、ギルド支部の設置は喜ばれることだが、国としては悪い面にも目を向ける必要があり、レーメ先生の説明で生徒たちの何人かは深く頷く。
「ここまでで質問はありますか?」
「「「……」」」
「では、最後に、殲滅の魔女こと、マーリン学院長についてです。どなたか、殲滅の魔女と呼ばれている由来がわかる人はいますか?」
「「「はい‼︎」」」
レーメ先生は学院長については、すぐに説明はせず、生徒たちに質問すると、ほとんどの生徒が手を挙げる。手を挙げていないのは答える気のないアルベネロだけであった。
「……こう見てると、アルベネロ君を当てたくなりますね」
「手を挙げてる人を当ててください」
「ふふ。それじゃ、クレアさん。アルベネロ君の代わりにお願いできますか?」
「はい」
一人だけ手を挙げていないため、逆に目立ってしまった、アルベネロ。レーメ先生がそれを見逃す訳もなく、指名しようと思うが、アルベネロに止められたため、代わりにクレアを指名する。
「広範囲の攻撃魔法を得意として、魔物の大軍だけではなく、他国の軍隊も単独で撃破したことから、殲滅の魔女と呼ばれています」
「その通りです。その実力から、勇者パーティーにも参加され、多くの功績を残しています。当然、今でも指折りの実力者ですが、知っての通り、この学院を設立し、後進育成に力を注がれています」
自分たちが通う学院の学院長については、すでに生徒たちも知っており、レーメ先生の説明に質問を挟む生徒は居なかった。
なお、当然、アルベネロも他の生徒同様に知っており、本当に答えるのが面倒で手を挙げなかっただけである。
「以上が、現在、最も著名と言われる、三名の魔法使いです。もちろん、他にも功績を残した魔法使いはたくさん居ますが、とりあえず、この三名は知っておきましょう。次のテストで出すかもしれませんからね♪」
「「「はい‼︎」」」
次のテストで出すという言葉に、生徒たちはしっかりと覚えようと印を付けたり、ノートに纏めたりしていくのであった。
キーン、コーン、カーン、コーン
「時間のようですね。次回は魔導具や聖具、呪具についてです。皆さん、予習を忘れないようにしてくださいね♪」
「「「はい」」」
一限目、魔法学の授業が終わり、レーメ先生は教室を後にする。次の授業が始まるまでの十五分間、生徒たちは次の授業を受ける準備をし始める。
「次は……数学か」
「確か、数列だったかしら」
「レオとか苦労しそうだな」
「ふふ、その通りよ。アルは大丈夫かしら?」
「どうだろうな。最低限は教えてもらってるんだが……」
「わからなかったら、遠慮なく私に聞くのよ?」
「ああ。その時はそうする」
学院長である、マナの推薦でアルベネロは聖ソーサリ魔術学院に転校してきた都合上、一切の試験を受けていない。そのため、学力については本人も問題が無いのかわかっていない。
「今のところ、授業にはついていけてるが……」
「アルが転校してくる前の授業から、テスト範囲になると思うから、範囲が発表されたら、教えるわ」
「ああ。助かる。ありがとう」
「ふふ♪ どういたしまして♪」
試験勉強をアルベネロと一緒に出来ることに対して、クレアは上機嫌になれば、優等生であっても、あまり好きではない学力テストが楽しく感じていく。
そして、時間は過ぎ、数学教師が教室内に入ってくると授業が始まるのであった。
[時間は過ぎ、お昼休み。アルベネロ、クレア、レイン、レオは四人で生徒会室へ向かっていた……]
「誰が最初に書く?」
「私は何番目でも良いですよ?」
「誰も行かないなら、最初で良いわよ?」
「俺が行くぜ‼︎」
「……なら、任せる」
一番を主張する、レオ。参加には何か条件があると予想しているため、最初にレオを行かせることにアルベネロは若干の不安を感じながらも任せることにする。
「よし‼︎ 任せとけ‼︎」
「これで私たちは事前にわかりますね」
「ああ……そうだな」
「サキの話だと、あのバカでも突破できるみたいだし、大丈夫よ。きっと」
やる気十分なレオのことを心配する、アルベネロ。一方、レインは事前に参加条件を確認できると喜び、クレアはアルベネロを安心させる言葉を掛ける。
そして、四人は遂に、生徒会室前に到着すると、そこには一冊の本が浮いており、本には鉛筆のような物がついているが、それは虹色であり、普通ではないことは明白であった。
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