~外伝 レインの始まり~ ※挿絵あり
この度、絵師様よりレインのイラストを描いていただきました!!
文章の最後に投稿してあるので、どうぞ、見てください!!
『この話はレインの物語である』
降りしきる雨の中、とある建物の一室、二人組の男女が、高級感のあるローブを纏っている男性とそれぞれ向かいあったソファーに座って話し合っていた。
「その子ですか……」
「はい。ライラン院長。この子を育てられるほど、私たちは裕福ではなく……」
「この子のためにも、ここに預けた方がいいのではと……」
ライラン院長と呼ばれた男性は低めのテーブルに載せられている、大きなカゴへ視線を向ける。そのカゴの中には赤ん坊が入っており、今は寝息を立てて、眠っている。
「この子に引き取り手が現れた場合、一生、会えなくなる可能性もあります。理解していますか?」
「はい。理解しています」
「……」
男性はライラン院長の言葉に力強く頷く反面、女性は少し震えながらも頷けば、ライラン院長は深く頷く。
「お二人の意志は固いようですね。わかりました。こちらの施設で預かりましょう。今から一枚、紙をお渡しします。そちらにサインをしてください」
「はい。わかりました」
「……」
ライラン院長はソファーから立ち上がると、棚から一枚の紙を取り出し、ペンと一緒に男性へ渡す。
男性は紙を受け取ると淀みなくサインを行い、紙をライラン院長へ渡す。
「確認しました。引き取り手がいつ見つかるかはわかりませんが、顔を見たくなった時はいつでも、お越しください」
「よろしくお願いします」
「お願いします……」
二人組はライラン院長へ頭を下げると、部屋から出ていく。男性は心残りがないようだが、女性は心残りがあるようで何度かカゴを見てから、部屋を出るのであった。
「さて……これでまた、収入源が増えましたね」
「失礼します。あの二人は帰られました」
ライラン先生は先程の優しい雰囲気が霧散し、妙齢の女性が部屋の中へ入ってくれば、二人組が帰ったことを報告する。
「そうですか。では、この子は任せます。いつも通り、買い手がつくまで生かしてください。費用はなるべく抑えることを忘れないように」
「はい。院長、この子の名前はどうしましょう?」
「名前……? そう言えば、あの二人は言っていませんね。そうですね……レインとでも名付けましょう」
「わかりました。それでは失礼します」
ライラン院長は赤ん坊の名前を決める際に、雨が降っていることを理由にレインと名付けると、妙齢の女性はカゴを持って、部屋を後にする。
「可哀想な子ですね……とりあえず、飢えさせない程度には頑張りましょう」
女性は赤ん坊の頭を数回、撫でてあげると、預けられた子ども達が生活している施設へ向かうのであった。
[そして、月日は流れ、五歳を迎えた、レイン……]
とある施設の一角、何人かの幼い子どもとメイド服を着た妙齢の女性がテーブルに並べられた食事を囲むように座っていた。
「それでは、皆さん、いただきましょう」
「「「いただきます‼︎」」」
メイド服の女性が合図をすると、子ども達は目の前に並べられているパンに手を伸ばす。食事はパンやスープ、サラダと質素なものだが、量は多く用意されており、子ども達も痩せ細っている様子はない。
「皆さん、美味しいですか?」
「うん‼︎」
「美味しい‼︎」
「メイはすごい‼︎」
「こら、呼び捨てにしない‼︎」
メイド服の女性、メイは子ども達が喜んでご飯を食べている様子に少し笑みを浮かべると、自身も子ども達と同じものを食べて行く。
「……」
「レイン……あまり、食べていないようですね」
「すみません……」
メイは子ども達の中で一人だけ、食事をほとんど取っていないことに気がつく。その女の子、レインは露草色の髪をしており、瞳は群青色と他の子供たちに比べてもかなり可愛い容姿をしていた。
「何だか頭が痛くて……」
「おや……風邪でしょうか。スープは飲めそうですか?」
「そのぐらいなら……」
「わかりました。後でスープを持って行くので、先に寝室へ戻って、休んでください」
メイはレインをベットがある寝室で休むように指示を出せば、スープを作るために台所へ向かうと、すぐに料理を作り始める。
『可笑しいですね。見た限り、熱はなさそうですし、この所、体調が悪い様子もなし……』
メイは身体に効く薬草をスープに混ぜると、お皿に盛り、お盆に乗せて、寝室へ向かう。
「レイン、中に入りーーー」
「あぁぁぁぁ‼︎」
「ッツ⁉︎ 大丈夫ですか⁉︎」
メイはレインが休んでいるはずの寝室へ入ろうとすれば、ベットの上でレインが頭を押さえている姿を目撃すると、スープが乗っているお盆を床に置いては駆け寄る。
「うぅぅぅ‼︎ 痛い‼︎ 痛い‼︎ 痛い‼︎」
「このままでは危険ですね……」
メイは頭痛に襲われている様子のレインを心配すれば、抱き起こすと頭に手を添える。
「レイン、私の声が聞こえてますか?」
「う、うぅ……頭、痛い……助けて……」
「……すぐに助けます」
泣きながらレインはメイへ助けを求めると、メイはレインを安心させるように笑顔を向けると……
シュッ‼︎
「んっーーー」
「起きた時に頭痛が治まっていれば良いのですが……」
風切り音と共にレインは意識を失ってしまうと、脱力してしまう。レインの意識を奪った張本人はレインをベットに寝かせるとスープが入ったお盆を持って、他の子ども達のお世話へ向かうのであった。
[場面は変わり、気を失った、レイン……]
「うぅぅ……ここは?」
レインは意識を失った後、気がつくと、辺り一面、お花畑の中で立っており、現実とは思えない景色に戸惑ってしまう。
「……本?」
辺り一面に広がるお花畑の中、一冊の古めかしい本が宙に浮いていた。レインは本へ恐る恐る近づくと、手に取り、本を開く。
「……いっぱい文字」
本の中はたくさんの文字が記載されており、幼いレインでは文字を読むことは困難であるため、顔を顰める。
「……早く帰りたい」
レインは本を閉じると、両手で抱えるように持てば、辺りを見渡す。しかし、一面、お花畑であるため、少しずつ不安が募って行く。
「うぅ……」
どんどん心細くなっていき、レインは涙を浮かべてはその場に座り込むと、抱えている本をまた開き、何か分かるようなものは無いかと探し始める。
「あっ……変わった絵……」
本を捲っていくと一枚のページに絵が描かれており、レインは不思議な絵と思えば、絵に触れる。
ピカァァァ‼︎
「ひゃっ⁉︎」
レインが絵に触れた瞬間、絵が徐々に輝き始め、遂には目も開けていられない程に輝きが強くなり、レインは我慢できないように目を瞑ってしまうと……
「レイン、目を覚ましましたか?」
「えっ……メイ……?」
「はい。メイですよ」
「私、お花畑に……」
「ここはベットの上ですよ」
レインの耳にメイの声が聞こえて来ると、レインは慌てて身体を起こし、辺りを見渡す。そこはお花畑ではなく、見慣れた寝室であり、手に持っていたはずの本も無くなっていた。
「頭痛は治りましたか?」
「は、はい……」
「それは何よりです。熱もないようですね」
「……」
メイはレインのおでこに手を当てながら、体調を確認していき、熱などは無いと確認する。一方、レインはお花畑での出来事を思い出しては無言になってしまう。
「何か気になることがありますか?」
「……えっと」
レインは意識を失った後に体験した出来事をメイへ伝える。メイはレインの話が終わるまで真剣に聴く。
「わかりました。ちなみに……こんな絵ですか?」
「ひゃっ……」
メイはレインが見た絵について、どんなものかを確認するために、魔導具無しで魔方陣を手の上に作り出す。その光景にレインは驚きながらも魔方陣を見つめる。
「形は違うけど、こんなの」
「わかりました。今日は休んでください。後でスープを持ってきます」
「は、はい……」
レインはメイに言われるがまま、頷くと、ベットにまた横になる。メイは優しくレインの頭を撫でてから寝室を後にすると、ため息を吐く。
『レインが選ばれるなんて……計画の変更が必要ですね』
メイはスープを作るために台所へ向かう道中に今後の立ち振る舞いを考えるのであった。
そして、レインが頭痛に悩まされた日から数日後……
ドタドタドタ……
子ども達を育てるための施設とは、別の建物内で何かが動き回る音が響き渡る。
「説明を求める‼︎ 突然、逮捕するなんて⁉︎」
「貴様には違法な人身売買の容疑が掛けられている。金があれば犯罪組織であっても、子どもを売っている証拠もある」
「そんな、バカな⁉︎」
ライラン院長は既に銃で武装した集団の何人かに取り押さえられており、身の潔白を叫ぶも、聞き入れる者は居らず、外へ連行されていく。
「隊長、子ども達の施設は向こうのようです」
「わかった。そちらは別働隊に任せよう。私たちでは怖がられるのが目に見えている」
「賢明な判断です」
「別働隊。子ども達の保護が最優先。それと、ゲストは丁重に扱うこと。以上」
『『『了解』』』
武装した集団の一人が隊長へ報告を行うと、隊長は子ども達の元へは向かわず、通信機を取り出すと、別働隊へ指示を出し、自分たちは更なる証拠を得るため、部屋の中を物色し始める。
[場面は変わって、子ども達の施設……]
「みなさん、準備は出来ましたか?」
「「「はい‼︎」」」
メイは子ども達へ事前に小さなカバンを用意しており、大切なものを入れるように伝えてはご飯を食べるテーブルに集めていた。
「昨日も言った通り、こことはまた違う場所へ移動することになると思います。今から入ってくる人たちの言うことをしっかり聞いてくださいね」
「「「はーい」」」
「……」
子ども達は元気に手を上げる中、レインだけはしきりに扉を見ており、少し怯えた様子である。
「レイン、大丈夫ですか?」
「そ、そこの扉の先に誰かが見えて……」
「……」
レインの言葉に、メイは少し考えた後に、優しくレインの手を握り、笑顔を向ける。
「安心してください。大丈夫です」
「はい……」
レインは握られた手から伝わる温もりに少し落ち着きを取り戻せば……
ガチャ……
ドアノブが動くと、扉が開き、そこから何人ものスーツ姿の女性が入ってくる。
「お待ちしておりました」
「……あなたは?」
「それよりも、子ども達の保護をお願いします」
「……報告。子ども達を発見。なお、メイド服の女性が居ます。どうしますか? 以上」
『メイド服の女性はゲストに任せて問題ない。子ども達を予定通り、保護しろ。以上』
「了解。予定通り、子ども達を保護します」
一人の女性が手に持っていた通信機で連絡を取り合うと、既にカバンを持っていた子ども達を他の女性達が連れて行く。
「ゲスト、この方はお任せします」
「ああ。任せてもらおう。あと、その子も私に任せてもらうことになっているから、他の子たちを頼む」
「わかりました」
スーツ姿の女性陣の中で一人だけ、服装が全く異なる女性がレインとメイの前に現れる。
その女性の服装は大きめの魔女帽子を被り、黒と紫が基調になったマント、太ももの大部分が見えるほどのミニスカート、そして、大きく胸元が開いた服装という、場違いと言って良いほどの派手な魔女のような格好であった。
「さて、堅苦しい話は抜きにして……その子が話にあった子で間違いないか?」
「はい。名前はレインと言います」
「……」
魔女服の女性はレインへ視線を向ければ、怖がるようにレインはメイの後ろへ隠れてしまう。
「保護の話はどうなりましたか?」
「問題ない。希望通り、例の養護施設で預かることになっている」
「わかりました。レイン、この人があなたの面倒を見てくれます」
「……メイは一緒じゃない?」
メイは魔女服の女性へついて行くようにレインへ伝えると、レインは悲しそうな表情で見つめる。
「ははっ、随分、懐いてるみたいだな。それにメイ、か。ここ数年、何をしてるかと思ったら……」
「マナ、無駄話は不要です。レイン、申し訳ございませんが、私はついて行くことは……」
魔女服の女性、マナはレインがメイに懐いていることに対して、少し笑ってしまう。
一方、メイはレインの悲しそうな表情に良心が痛みながらもついていけないと説得する。
「そう言えば、ちょうど、従業員が足りなくてな。フェルーーー……いや、メイ。雇われないか?」
「……わかりました」
「ふふ、これで二人とも離れずに済む」
「やった♪」
マナの計らいで、メイはレインのために雇われることを決めると、一緒に新たな施設で過ごすことになる。
「外に馬車を待たせている。ついてくるんだ。溜まる話は道中にしようではないか」
「はぁ……いいでしょう。それに、レインのことも話す必要はありますし」
「……ちなみに予想は出来ているのか?」
「つい先程、目星がつきました。知覚魔法ですね」
「ふむ……なるほど。なら、初めの内は慎重に教えて行く必要があるか」
「……?」
レインは何か難しいことを話している二人を交互に見ながら、これからもメイと一緒に過ごせることを嬉しく思えば、二人に連れらながら、馬車へと向かうのであった。
[そして、時は過ぎ、十五歳を迎えた、レイン……]
『懐かしいことを思い出しましたね……』
レインはふと、幼い頃に過ごした日々を思い出しては、笑みを浮かべると、大切に育ててくれた、メイのことを思い出す。
『良いですか? 異性に対しては、本当に信じられる相手にだけ、心を許すのですよ?』
『本当に信じられる相手?』
『……この人になら、騙されてもいいと思えるような特別な相手です。簡単に言えば、好きな相手です』
『メイさんは心配し過ぎですよ』
『当然です。私はあなたのことが大事ですから』
親しい友人である、クレアと恋話をした影響か、聖ソーサリ魔術学院へ入学し、寮で住むことになった際にメイから掛けられた言葉をレインは考える。
「恋に恋する……なんてことはしたくないですし、焦る必要はないですよね。メイさん……」
レインは席に座った状態で窓から空を眺めると、返答が無いと分かっていながらも、嬉しそうに呟くのであった。
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